第11話 カミトがこたつをゲッツした件について 3
こたつは暖かい。どんな争いも沈めてくれる。
しばらくぬくぬくとぬくもってから、クレアが話を切り出してきた。
「ここからはあたしのターンね!」
「さっきもお前のターンだった気がするんだが」
「あなたの手札を見ましょうか」
「フフン、こんなこともあろうかとあたしはこれを用意してきておいたのよ!」
そう言ってクレアが自慢げに出してきたのはよく見覚えのあるカードの束だった。
リンスレットもそれを知っていた。
「ほう、トランプですか。あなたにしては高尚な趣味ですわね」
「お前でもトランプぐらいは理解出来るんだな」
「あたしを舐めちゃいけないわよ。今日はこれで勝負よ!」
「受けてたちますわ!」
「望むところだ!」
勝負を受けて二人は燃える。
そして、トランプで勝負することになった。
ババ抜き、大富豪、七並べ、神経衰弱、タワー立て。
勝負は白熱し、いつの間にやら朝が訪れた。
「うーん、朝か」
目覚めると、カミトはこたつの中にいた。
頭を振って昨日のことを思い出す。
「そう言えば昨日はトランプをして盛り上がって……それから記憶がねえや」
こたつのテーブルの上には散らかったままのトランプがある。
カミトの両隣ではクレアとリンスレットがそれぞれにだらしなく寝転んで寝息を立てていた。
「おい、起きろよ、二人とも。こたつで寝るなよ。っていうか、男の部屋で寝るなよ。また何か言われるだろ。俺が」
また変な噂を立てられたくないカミトは静かに二人の肩を揺さぶった。
「うーん」
「まだ朝ですわよ」
「朝だから起きるんだよ。遅刻すんぞ。起きろー!」
大声を出して二人はやっと目を覚ました。
「ハッ、なぜあたしがカミトの部屋に!」
「お前が自分で来たんだよ! 昨日のことを思い出せ!」
「まさか昨日のココアに睡眠薬を混ぜて? わたくし達にあんなことやこんなことを」
「してねーよ! ココアを持ってきたのも入れたのもお前だよ! いつまでも寝ぼけてんじゃねー!」
朝から大声を出してカミトは疲れてしまう。二人はやっと気が付いたようだった。
「そう言えばそうでしたわね」
「ふわああ」
「お前ら、男の部屋でよく呑気に寝てられるよな」
「下僕が何か言っていますわ」
「あんたはあたしの奴隷精霊でしょ」
二人はまだ寝ぼけているようだ。カミトは手のひらを叩いて二人を追い立てた。
「ほらほら、早く自分の部屋に戻って準備してきなさい! 学校に遅刻すんぞー!」
その時、ドアが開いた。
騎士団に見られたらまずいとカミトの顔は引きつったが、現れたのはメイドのキャロルだった。
彼女は機嫌が良さそうににこにこしていた。
「カミト様! 昨日はお楽しみでしたね!」
「楽しんでたけど、お前の思ってるようなことは何も無かったからな!」
「ええ!? カミト様は本当に男の子なのですか? お嬢様のような魅力的な方がいて手を出さないなんて!」
「男の子だよ! 男がみんなさかりのついた犬みたいな目で見るなよ! 変な噂が立つのはまじで困るんだからな!」
おかげで肩身の狭い思いもしてきたのだ。女子ばかりのこの学院では話せる味方もいなくなってしまう。キャロルは言葉を飲み込んでくれたようだった。
「そうですか。まあいいか。それよりも外をご覧ください。積もってますよ」
「何が積もってるんだ?」
カミトは気になって外に出る。見ると雪が積もっていた。
「どおりで寒いと思ったら」
「これが雪」
「わたくしの故郷では珍しくもありませんが、この学院にも降るものなのですわね」
外は一面、雪景色が広がっていた。
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