Avenge THA “Blue”
第5話/1
「船長。船長に直接の入電です」
と、声をかけられた時、その人物はしかめっ面をしながらペットボトルの中身を飲み終えたところだった。
「なに。どこのどいつ?」
「【翼】のリーダーです」
「よし替われ。……よぉ、グッドタイミング。聞いてくれよエル。今、すうっげええええ機嫌悪ィんだ。カロリーオールカットのコーラなんざコーラじゃないね、この世から消えてなくなれば良い。だからエル、オマエも買って飲め。んじゃーなー」
「船長。入電です」
「なに、どこのどいつ?」
「【翼】のリーダーです」
「よし切っていいよスニー。……はいはい、そんな睨まない。用件はなんだって?」
「……“目標を取り逃した。
「よし替われリスニー。……エェェェル。マァァイプレシャァァァス。そんな道理が、そんな言い方で通じると思ってる?」
『別に汝らを相手にしても、私達は構わんが?』
「くふっ! くふふふふ!! あはははははは!! まだ七面鳥にゃあなりたくないだろう? ……晩餐の皿に一品付け加えて良いってんなら、歓迎さ。大歓迎さ」
「判ったらオマエんとこのお姫様によぉぉく言っておきな。
――相手が誰であれ、そいつが
【船長】がリクライニングチェアーから身を起こす。上等な絨毯の敷かれた事務所内を、迷いのない足取りで出入り口のドアへ向かって歩き、帽子掛けに乗っかっていた帽子を手に取ると、申し合わせたかのように、電話を受けていた部下であり侍女であり、仲間である少女が“戦闘用”のコートをその肩にかける。
「スニー。準備は?」
「できています、船長」
「リリィは?」
「ドアの向こうに」
「デイルは?」
「ドアの向こうに」
「じゃあ始めよう」
その言葉にスニーと呼ばれた少女がドアを開く。
二人の少女が左右に立って、主を出迎えた。
歩きながら、彼女たちの主は確認を取る。
「錨は上げたか」
「はい、船長」
「帆は広げたか」
「はい、船長」
「首輪は用意したか」
「はい、船長」
「私の“鉤爪”は?」
「ぴっかぴか」
「葉巻は?」
「はい、船長」
「ラム酒」
「飲酒運転、捕まる、せんちょ」
「チッ! シケてんぜ」
「その代わり、祝杯には良いお酒を使いましょう」
「それで手を打つか……さあ、行くぞ野郎共。戦争だ」
肩にかけた海賊調のコートの袖が
「目標、セントラルアデクトビル直上を通過」
「スニー、経路の割り出し急げよ」
「はい、船長」
「デイルとリリィは私と来い」
その命令には、言葉ではなく、全幅の信頼を持った笑顔で二人は応え。
「出るぞ。ガキどもの夢を、一つ残らず叩き落とす!」
――二十一世紀。この世に名だたる八組の賞金首を【ミリオンダラー】と言い。
――それを討ち取らんと剣を掲げる、有象無象の賞金稼ぎから選び抜かれた最高の五組を【色】つきの【カラーズ】と言った。
これはその【五色】の内、空を飛ぶ相手ならばステルスでさえ墜落せしめると詠われる【青】の賞金稼ぎ、
通称【海賊】――カーミン=J=フックと仲間たちの、短い物語である。
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