『首輪物語』上海後進曲

シャンハイ・マルシェ

第12話/1



【pxyz】さんからの1:1チャットが開かれました。この会話は外部に表示されません。


 pxyz>>ハローハロー。ヒマなら狩り行かない?


 Luvless>>えー。なにソレ。オレ今日は露店巡りデーなんスけど。


 pxyz>>いーじゃんいーじゃん行こうよー。71層の強MOB狩ろうよー。バッファー足りてないんだよー。


 Luvless>>自前のPT組んで行けば良いじゃんそんなの。フルレイド(全部俺)とかアンタならヨユーっしょ。


 pxyz>>だーからアンタしかウチのフルレイドにバフかけて回れるヤツいないんだって。そもそも自作フルレイドとか意味ないじゃん! つまんないじゃん! MMOは誰かとPT組んで数々の障害を突破したり報酬の分配で一触即発になったりするのが醍醐味なんだからさ!


 Luvless>>だーからそういうのやりたいならオレみたいなソロの野良バッファーじゃなくてきちんと和気藹々わきあいあいな気の合う仲間と隙あらばさあ無理な身体に鞭打ち向かう海・山・川ぁーってやればいいじゃん。オレを巻き込まないでよ!


 pxyz>> :)hit


 Luvless>>なに


 pxyz>>ちょとボイス繋ぐよー。




『ハローハロー。全然別件。尻尾掴んだ!』


『Wait、待って。脈絡なさすぎ。何の尻尾? レアアイテム?』


『価値は暴落したかな、もう換金済みだし。玄人くろうと向けのエンドコンテンツ? 違うか。尻拭い? そうソレ。明るみに出たらキミ達の株が下がるんじゃないかなー』


『残念ながらオレの株価は一部上場してなくて暴落もクソもなーいの。で、要領良くいこうよ。何の話かサッパリだっつの!』









『チャイルド=リカー』


『あーん?』


『それからブラック=セブンスター』


『ああーん?』



『……要領、良く、いこう。特定名詞だけでキナ臭いこと言ってくれるじゃん』


『ログアウトは?』


『もうしたよ』


『ボクの依頼に関わってる。でもボクじゃあデータは集まっても人を募れない。キミを超一流の情報屋だって見込んで頼みがあるんだ、バド=ワイザー』


『買ってくれるじゃないスか【人魚姫】。でも終わった案件の尻拭いとか超やる気失せるんですけどマジ』


『お尻拭いたかの確認はした? キミだってリカーの報告になんかおかしいって思ってなかった? じゃないか!』


『……そっちの要求は? 場合によっちゃ今からオレは引き篭もるね』


『ユミ=コウノミヤの行方を知りたい』


『や、死んだっしょ』


『でもには確認されてない。そうだろ?』


『じゃあソレの真偽を探せって? そんなんアンタひとりで充分じゃねえ?』


『ボクだけじゃ届かないから頼んでるんだ。適材適所ってやつ。悔しいけど、キミの情報屋としての腕は世界一だ。ボクじゃあ情報量で競り合えても、情報の質と深さで勝負できない。ねえ、なんかおかしいことなかった? その場にいなくてもキミなら紐解けるはずだ。たぶん、今を逃したらもう辿り着けない』


『ンなこと言ったって、その通りオレは最終報告聞いただけだよ? 初見殺しのミリオンダラー。扱っているモノは人間。人体換装可能なSF技能に洗脳扇動なんでもござれのファンタジー異能持ち。演出はCDレトロにドライアイスと電飾。使った車は時代に優しくないガソリンエンジン。リカーとブラックの話だと、それに加えて認識障害。あの時間、あの場所で「確かに出口を見つけられなくなった」。まあ逃げるつもりがないから問題にならなかったっていう脳筋オチがついたんだけど、オチって言えば最後に――――待った。シルフサン、ハイネちゃんの書いた手紙ってどんなだった?』


『“メイちゃんの無くした手足は見付かりましたか?”だよ。テキスト残ってる』


『だよねー! あーもうクッソ! ほんとに大暴落じゃねえかなんだソレ!』



 少女の見た悪夢。その舞台にはあの夜、確かに幕が下ろされた。


 ただし、下ろしたのはそこで踊っていた役者の手で、だ。




『……。そうだろ?』


『Yes。そして、それこそがチェスの最後のピースへの、唯一の足がかりなんだ』






【首輪物語】シンデレラ=エンゲージ

 /13.999999999 『月孔』-MoonHide-


          “あれれ? ??”


 先頭車両のコンテナの上。幼女が無垢な疑問を鈴のような声で唄う。


 ――瞬間。ふたりの賞金稼ぎの意識から、ソレは綺麗サッパリと消失した。











『場所は?』


『――上海シャンハイ。自然の明かりを排除し、人光じんこうだけで昼夜を駆逐した摩天楼。どう、バド。乗りたい?』


『…………正直めっちゃ逸れたいね!』

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