第10話/13


 /後日談



「あ、おかえり、スズ」


 久しぶりに帰って来た我が家のリビングには、この日も少年しかいなかった。カカシはその姿に似合わず、朝刊を読んでいる。


「ただいま、だ。カカシも戻ったのか、だ」


「うん。昨日ね。ドロシーもレオもまだ寝てるんじゃないかな」


「そうか。おかえり、だ」


「うん、ただいま」


「朝食は?」


「まだだけど、今朝はいいかなって。紅茶だけ飲もうと思ってお湯沸かしてたところ」


「なら、おれが作ろう、だ」


「そう? じゃあ僕もコーヒーにするよ」




 そうして始まる静かな朝食。彼らの余暇の始まりを再放送したかのような光景の中、それでも差異はちらほらと。


「埋まったんだね、【一番】」


 角砂糖をひとつ、ふたつと自分のカップに投入しながら、カカシは独り言のように言い。


「あぁ」


 それを拾っては、短い相槌を打つスズ。少年と同じように、カップにひとつ、ふたつと角砂糖を入れていく。


 それを、眠たげな瞳をぱしぱしと瞬かせてカカシが見ている。


「ブラック派じゃないっけか、スズ」


 そう言っている間に、もうひとつを投入。


 怪訝な顔を隠そうともしない少年に、表情を崩さず、


「……別に。たまにはこうやって飲みたい時もある、だ」


「ふぅん……うん。ありがとう」


「……?」


 その礼には、言われる筋合いをまったく見出せなかったのだが。



「…………甘いな」


 と、少しだけ眉を寄せて、一口飲んだソレに、故郷の言葉で呟いた。



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