第2話
安部首相に似た紳士と可愛らしい奥様がまたいらした。
ご注文は、とお尋ねしたところ、お薦めは、と即切り返され、脇汗が走った。
父に今日のお薦めを聞くのをすっかり忘れていた。
政治家に対して、えーーっととか言うものならば容赦なく突っ込まれるとの心配性が、余計に自分を固くした。
首相似と私のやり取りなど全く無視の奥さまが、いつもの前菜盛り合わせとボロネーゼねっと頼まれた。ネーゼじゃない、ニェーゼだけど。
ちなみにピッツァはピッツァであって、ピザはアメリカ物である。それから、スパゲッティーを食べるとき、スプーンを使って食べるのが正式だと思っている日本人は少なくないが、これは幼少のイタリア人がまだ幼くて、片手でフォークを使えないため、補助として仕様したのを、アメリカがバカのように確認もせずモノマネしたのが、面倒にも輸入され日本に到着した習慣がどこかでついてしまったためである。
お箸を使えない幼児のための補助付き箸を使うのに等しい。
安部氏(めんどうなので、そう呼ばせていただく)お気に入りのポモドーロのスパゲッティーと、ボロニェーゼを運ぶ。
一本食べたい衝動を抑えつつ、お待たせいたしました、とテーブルに置くとら、お二方とも子供のような表情でフォークをもつ。
以前、安部氏はイタリアで、スプーンを用いて食べようとしたところ、ものひどい剣幕でシェフが出て来て、スプーンをつかうなかれと、怒鳴られたそうだ。そう、イタリアという国はそんな国である。
自分の文化に、我らが一番、の精神で、以外にも他に対して寛容さがなかったりなのだ。
だから、安部氏をしかったシェフも自分の作ったものがスプーンで食べられることに、自分のプライドに塩をまかれた気分だったのだろう。
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