第10話 結界
地下二階になると、ゴブリンの他に豚と人間を掛け合わせたような魔物、オークが出現するようになった。だが、オークは問題にならないほどにタウロは強かった。腰に下げていた小さな斧。これで近くの奥の頭をかち割り、遠くのオークには斧をブーメランのように投げ、倒すことができた。タウロがいてくれて戦闘がだいぶ楽になった。
バーンもタウロに負けないように剣とファイヤーショットで戦った。
地下三階へ降りる階段が見えてきた頃、バーンとタウロに疲れが出始めていた。
「今日は一旦、宿屋に戻ろうか」
バーンがそう提案し、二人は来た道を引き返し始めた。どこから湧いてくるのか分からないが、帰りもモンスターは現れ続けた。二人はなんとかそれらを倒して、地下一階へと戻って来た。
地下一階から地上へと戻ろうとした時だった。突然、見えない何かに弾かれてタウロは吹き飛んだ。バーンがよく目を凝らして見ると、淡い光の中に魔法陣が見えた。
そうか、それは結界か。地下からモンスターを出れないようにしているのだ。この結界が無ければ、地上の街はモンスターで溢れかえってしまうだろう。
タウロも記憶を失って、悪いモンスターではないとはいえ、モンスターはモンスターだ。結界を通り抜けることはできないのだろう。……それに、街をミノタウロスが歩いていたら、いくら子どものミノタウロスでも街はパニックになりかねない。
バーンは吹き飛んだタウロを起き上がらせると、真剣な顔つきで言った。
「タウロ、すぐに戻ってくるから、誰にも見つからないように隠れているんだ。いいね?」
タウロが頷くと、バーンは地上へと走り出した。そのまま、塔を出て宿屋へと向かう。
バーンは宿屋に駆け込むと
「女将さん、地下迷宮の中で宿屋ってできないかな?」
と開口一番にそう言った。
当然、女将さんは怪訝な顔を作る。
「俺に初めて仲間ができたんだけど、モンスターなんだ。だから地下から出れなくて……」
「それじゃ、モンスターだけじゃなく、
「そうなんだよ」
「すぐにその子のところへ連れて行って!」
バーンと女将さんは天魔の塔へと向かって駆け出した。
しばらく走ると、天魔の塔の入り口に着いた。
「私が地下迷宮に足を踏み入れる日が来るとはねぇ……」
女将さんは愚痴りながら入り口をくぐり、バーンの後に続いて地下一階の階段を降りる。
「タウロー!タウロー!どこだー!」
少し歩くと、物陰からタウロが顔を出した。
「よかったー!誰にも襲われなかったか?」
「うん、大丈夫」
女将さんはタウロを見て目を丸くした。
「本当にモン……仲間ができたんだね。よーし、ちょっと待ってておくれ」
女将さんはそう言って、地上へと上がって行った。
バーンとタウロがしばらく待っていると、他の
女将さんが戻って来ると、人を二人引き連れていた。それも屈強な男二人を。
女将さんたちはパンにスープ、それと布団を持って来てくれた。バーンとタウロが食事をしている間に、男たちは地下迷宮でも少し広くなっている所に杭を打ち込み、ロープを張る。そして、布を被せると、簡単なテントが出来上がった。テントの前には焚き火もある。
「とりあえず、これで我慢してくれるかい?一日二日で宿屋は立たないからねぇ。でも、
「ありがとう、女将さん」
「さぁ、もう寝なさい。また朝食を持って来るからね」
女将さんと男たちが帰っていくと、二人は地下迷宮で眠りについた。
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