第9話 ミノタウロスの子ども
バーンは困惑していた。
どうして、こんなところにミノタウロスの子どもが倒れているのだろう?ミノタウロスといえば、強い方の部類に入るモンスターだ。地下二階にいるとは思えない。それともこの天魔の塔ではすでに地下二階がミノタウロスの巣なのだろうか。
バーンは周りを見回すが、ミノタウロスの親の姿は見えない。……見えていたら、すでに地下一階へと駆け上がっているところだ。
バーンは恐る恐る倒れているミノタウロスの子どもに声を掛けてみた。
「おーい、そんなところに倒れていると他の
反応がない。バーンは子どものミノタウロスの体を揺すってみた。
「うーん」
子どものミノタウロスはやっと目を擦りながら起き上がった。
「あれっ?ここはどこだ?……うわぁ、人間!」
子どものミノタウロスは、バーンを見るなり身構える。が、バーンに襲いかかってくることはなかった。それどころか、頭を抱えてうずくまってしまった。
「どうしたんだ?どこか痛いのか?」
バーンが声を掛けると、子どものミノタウロスは目に涙をいっぱい溜めて顔を上げた。
「僕は、誰?どうして、ここにいるの?何も思い出せない……」
「まさか、
人間が記憶喪失になるという話はバーンも聞いたことがあるが、モンスターでも記憶喪失になるのだろうか。しかし、バーンの目の前にいる子どものミノタウロスの動揺ぶりを見ると、とても嘘を吐いているようには見えなかった。さっき倒れていたのは、頭を強く打ったからだろうか?
「僕はこれからどうしたらいいんだろう……」
子どものミノタウロスの目から涙が溢れて、地面へ染み込んでいった。
近くに親のミノタウロスは居なそうだ。このまま放っておいたら、本当に他の
「よし!記憶が戻るまで、俺と一緒に冒険しよう!」
「僕を連れて行ってくれるの?」
子どものミノタウロスの顔がパァッと明るくなった。
「あぁ、俺の名前はバーン・イーグニス。よろしくな、えーっと……」
バーンは少し考えると、
「タウロ!今からお前はタウロだ!」
「うん!よろしく、バーン!」
バーンとタウロは新しい目的と共に立ち上がった。
そうして、地下二階の奥へと進んで行く。
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