第7話 埋葬
ヴィラージュの村がフラム・ヴォルカンに襲撃されてから、数日間。バーンは村に留まった。
何の罪もなく、突然消し炭にされた村の人間を丁重に葬るためだ。そのままにして村を離れる気にはなれなかった。
バーンは自分の家の地下で運よく燃え残った食料を口にするとき以外は、不休で動き続けた。穴を掘り、村人の遺体を入れて、土をかけて墓を作った。疲れ果て、その場に倒れこむようにして眠った。
遺体は、ほとんどが誰だか判別できない状態であった。それでもバーンは、同じ家にいた人間は近くの墓へと葬った。
作業を続ける中で、なぜ村長が背中に攻撃を受けたのかも、推測ではあるが分かった。
村長は一人で暮らしていたはずだった。しかし、焼けた村長の家には小さい——おそらく子どもの——遺体が二つあった。どうやら村長は、村を襲撃された際に近くにいた子どもたちを助けるために、自分の家に避難させたのだ。そこをフラム・ヴォルカンに攻撃されたのだろう。そして、自分を盾に子どもを守ろうとしたのだと思う。もし、背後から攻撃を受けたのでなければ、村長ほどの力があるなら対処できたかもしれない。
バーンはフラム・ヴォルカンに対する怒りで気が変になりそうだった。だからこそ、遺体を埋葬することに没頭した。埋葬することに没頭することで、フラム・ヴォルカンのことを頭から追い出すことができたからだ。
数日間、ほぼ飲まず食わずで遺体を埋葬することに没頭したバーンは、遺体の埋葬が一通りすむと、ピルゴスの街に戻ることにした。
馬はよく調教されているのか、村の入り口近くでバーンを待っていてくれた。おかげでバーンはピルゴスまでの道のりを歩かなくて済んだ。
ピルゴスまで戻ると、貸し馬屋の親父さんに散々謝って、馬を返した。親父さんは事情があったんだろうと、快くバーンの謝罪を受け入れてくれた。そして、また困ったことがあったら声をかけてくれとまで言ってくれた。
宿屋に戻ると、女将さんにも突然数日行方不明だったことを謝った。今日は謝罪の一日だ。
三日間も寝続けた後でフラッといなくなったので当たり前かもしれないが、バーンがいなかった間、女将さんは相当心配してくれたようで、バーンの顔を見るなり抱きつき、涙を流してくれた。そして、二度と無茶なことはしないようにと固く約束させられた。
この街の人々は、いい人ばかりだ。冒険者が多く立ち寄る街なのだから、もっと荒んでいるものだと思っていたが、それは杞憂だったらしい。
散々心配をかけた分、故郷で何があったのかをバーンは女将さんに詳しく説明した。フラム・ヴォルカンへの復讐にこそ賛成しなかったものの、村が襲われ顔見知りが全て亡くなったことに関しては悲痛な顔つきで話を聞いていた。
「そう簡単に割り切れないだろうけど、ここをあんたの故郷、自分の家だと思ってくれていいんだからね」
と、女将さんは涙ながらに言ってくれた。
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