第127話 愛は人を弱くする

「クレイジーを倒せたのか?」


 俺が、亜金君に尋ねる。


「倒してないよ。

 地中深くのマグマに封印した」


「マグマって……」


「文字通り地獄の業火だよ」


「そっか……」


「うん。

 で、玉藻、怪我はしてない?」


「ああ……

 大丈夫だ。

 一応な……」


 玉藻さんが、元気なさげにうなずいた。


「……元気ない?」


 亜金君が、玉藻さんに尋ねる。


「ちょっと怖かった……

 死ぬかと思った。ただそれだけだ」


「そっか」


 亜金君は、玉藻さんの頭をポンポンと叩き言葉を続けた。


「でも、大丈夫だよ。

 これからは、俺が玉藻を護るから……」


「……ああ」


 玉藻さんが、ニッコリと笑う。


「……で、そろそろ出てこないの?

 お爺さん」


 亜金君が、そう言って玉藻さんを俺の方に突き飛ばす。


「ほうほう。

 バレておったか……」


 そう言って、老人と黒き鎧を着たモノが現れた。

 フィサフィーとベルゼブブだ。


「俺も強くなったんだ。

 お爺さんと黒大将の魔力くらい隠していてもわかるよ」


「なら、話は早いな。

 主は、ここで死ぬ!」


 ベルゼブブが、そう言って黒い刃を亜金君に向ける。


「当たらないよ」


 亜金君は、その刃を軽く避けた。


「む……

 主、なかなかやるな。

 なら、これならどうだ?」


 ベルゼブブが、そう言って黒き刃を数発放つ。

 亜金君は、それも綺麗に避ける。


「この技。知っているんだ。

 だから、避けれる」


「どういうことだ?」


 ベルゼブブが亜金君に尋ねると亜金君が呟く。


「俺も星の巡礼者だから……」


「星の巡礼者?」


 聞きなれない言葉に俺は首を傾げる。


「時を巡る者……それは、異世界に行き力を得た人のこと。

 時の巡礼者……それは、異世界を旅する人……」


「どう違うのだ?」


「時の巡礼者は、時を巡る者と違い記憶や経験実力を積んでいる人のことなんだ。

 死ねば別の次元へ移動する。

 そうやって色んな力を手に入れ強くなる。

 ベルゼブブ、お前のようにね!」


「我が、時の巡礼者だと?」


 ベルゼブブの動きが一瞬止まる。


「そして、フィサフィー。

 お前も……!」


 亜金君がフィサフィーの方に向けてプレゲトンを構えた。


「ベルゼブブ!

 思い出せないのか?また失ったのか?

 記憶を……!また、フィサフィーに奪われたか!」


 亜金君が、そう言ってフィサフィーを斬った。

 しかし、フィサフィーはその斬撃は効かなかった、


「ワシには、物理攻撃も魔法も効かぬよ。

 故に最強!」


「フィサフィー、どういうことだ?

 我の失った記憶とは、なんだ?」


「思い出さなくてもいいことです」


「フィサフィー!」


 ベルゼブブが、フィサフィーに黒き刃を向ける。


「ベルゼブブ様、なんのつもりですか?」


「フィサフィー答えろ、我になにをした?

 我の記憶を奪ったというのは、本当か?」


「黒き者よ!忌み嫌われし者よ!

 主らは孤独であらなければいけない。

 特に亜金、主はいい。

 愛は人を弱くする!

 じゃが、亜金、主は誰にも愛されぬ!

 故に主は強くなる。

 強くなりて我が手駒になるのじゃ!」


 フィサフィーが、そう言って杖を召喚した。


「わかった……

 フィサフィーよ、主は我の敵なのだな?」


 ベルゼブブが、フィサフィーの方に刃を向けた。

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