第128話 死ぬということ

「ベルゼブブ……

 テオスに……我に敵対するのか?」


 そう言って若い男が現れる。


「誰だ……?」


 俺の言葉にベルゼブブが、答える。


「モトフミ=クライヌシノオオミカミ。

 通称モトフミ。テオスのギルドマスターだ」


 ベルゼブブが、そう言って黒き刃をモトフミに向けて振りかざす。

 黒き刃はモトフミに命中するが、モトフミには効かない。


「効かぬ!」


 モトフミが笑う。


「効かないのか?」


 俺は、思わず声を出す。


「フォフォフォフォ。

 お主のところに、かみさまというやつがいるじゃろう?」


 フィサフィーが、声を出す。


「うん」


「モトフミ様のバリアは、そのかみさまのバリアの数千倍はある。

 その名も超神壁!

 このバリアの前に勝てぬものはいぬ!」


 フィサフィーが、そう言って楽しそうに笑い一花さんを召喚した。


「一姉!」


 亜金君が、声を出す。


「亜金君!これどうなっているの?」


 一花さんは、目を丸くさせ驚いている様子だ。

 するとモトフミが、無言で指先から光の閃光を放つ。

 光の閃光は、一花さんの腕にあたった。


「きゃ……」


 一花さんの腕に穴が開く。


「まだまだだ」


 モトフミは、そう言って何度も何度も光の閃光を一花さんに向けて放つ。

 しかも、急所を外して……


「やめろ!」


 亜金君が、モトフミの指先をプレゲトンにぶつける。

 しかし、プレゲトンは弾かれ亜金君と一緒に吹き飛ばされる。


「……効かぬよ!」


 モトフミが、笑いながら一花さんに向けて閃光を放ち続ける。


「やめろ!」


 亜金君が、何度も何度もモトフミの指先にプレゲトンを当てる。

 一花さんは、そのたびに悲鳴を上げる。


「そろそろとどめを刺そうではないか」


「やめろ!

 一姉のお腹の中には……!」


「あっくん!

 もういいよ……

 私のことは放って逃げて……」


 一花さんは、涙を流しながら亜金君の方を見る。


「そんなことできない!」


 亜金君は、何度も何度も何度も何度もモトフミの指先を斬る。

 そして、効かない。


「そうだ!俺が一姉の不幸を食べれば!」


 亜金君が、思いついたようにそう言うと一花さんが怒鳴る。


「ダメ!そんなことしちゃ!あっくんが死んじゃう!」


「でも、一姉が死ぬより……」


「あっくん。

 自分の命を大事にして!」


「でも、一姉のお腹の中には赤ちゃんが……」


 赤ちゃん……?


「ジョーカーに言っておいて、愛しているって……」


「戯言を……」


 モトフミが、舌打ちを打って最後の閃光を放った。

 一花さんの頭に命中し動かなくなった。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 亜金君が、何度も何度もモトフミを斬る。

 だけど、効かない。


「亜金、愛を忘れるのだ。

 主は強くなれる素質がある。

 何故なら誰からも愛されないからだ!」


 モトフミが、そう言うと亜金君が答える。


「そんな言葉聞き飽きた!」


「なにをそんなに怒っているのだ?

 一花もお前を利用していたのじゃないのか?」


「違う!」


「認めたくないのなら認めなくてもいい。


 仮に一花が、主を気に入っていたとして……

 お前がここで死ねば一花は悲しむんじゃないのか?

 ここは、我と手を組みこの世界を支配するのだ!」


「死ぬってことは!

 死ぬってことは!

 泣いたり!笑ったり!怒ったり!

 そういうことができないことを言うんだ!

 そんなこともわかんないのか!」


 亜金君が、懇親の一撃でモトフミのバリアを壊しモトフミの頭に一撃を浴びせることが出来た。

 モトフミの頭から血が流れる。

 でも、致命傷には至っていない。

 モトフミが小さく笑う。


「愚かな……」


 モトフミが、そう言って玉藻さんの方を見る。


「もう誰も殺させない!」


 亜金君は、玉藻さんの前に立つ。


 

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