第107話 恋愛フラグは気づかない間に立つもの

「次の戦にてそれぞれ力をつけてもらわないとな」


 バルドさんが、そう言うと優心さんが元気よく返事をする。


「私、新しい力をつけたよー」


「む?どんな力だ?」


 バルドさんがニッコリと笑う。


「テレパシーだよ。

 今まではシンパシーと言って人の心を読むだけだけだったけど、その心を複数の人に届けることが出来る力。

 それが、テレパシーなの」


 俺の知っているテレパシーとは少し違うが、まぁその辺は気にしないようにしよう。


「ほう、それは便利だな」


 バルドさんがうなずく。


「えへへへ。

 でしょー!

 オーブの破壊力も少し上がったし、私もレベルアップ!」


 優心さんが嬉しそうに笑う。


「とことで、亜金。

 プレゲトンは死んだんじゃなかったのか?

 さっきお前が持っていたモノは……」


「うん、あれはプレゲトンだよ。

 これはプレゲトンの亡骸。

 今は、喋らないただの炎の剣だよ」


 かみさまの問いに亜金君はすぐに答えた。


「そうか……

 やはり死んだんだな……」


「うん」


「暗い顔は止め!」


 優心さんがそう言って亜金君の鼻に指をちょんとつけた。


「え?」


 亜金君の顔が一瞬赤くなる。


「って私にときめいてどうするの?

 亜金君を一番心配していたのはだーれだ?」


「んー

 昴君?」


「なんで、俺なんだ?」


 俺は思わず笑いかけた。


「誰?」


 亜金君が、そう言うと亜金君の背中の服を引っ張る女の子がいた。

 玉藻さんだ。


「玉藻?」


「亜金、心配したんだからな……」


「うん」


「亜金、眠れなかったんだからな……」


「そっか」


「ご飯も喉を通らなかった」


「ごめん」


「ホント、無事でよかった」


 玉藻さんは、そう言って亜金君を背中から抱きしめた。

 亜金君は動かない。


「さて、昴君。

 ここを離れるわよ」


 万桜さんが、そう言って俺の手を引っ張る。


「え?このままキスをするところを見たりしないの?」


「見たいのか?」


 俺の大ボケにカイが、真面目な顔でそう尋ねた。


「えっと……」


「早く行くぞ。

 あそこはふたりっきりの世界にしてやれ」


 かみさまが、そう言って背を向ける。

 あれ……

 この話は俺がハーレムを築く話だよね?

 なのに俺にはそんなにフラグが立たない気がする。

 もしかして、恋愛フラグというものは気づかない間にたつものなのかな?

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