第92話 テオスの再生医療

 俺たちは、散らばった。

 大きな力は、3つだけど小さな勢力はいっぱいある。

 その小さな勢力の中には、ジルたちもいるらしい。

 俺とカイ、そして亜金君とプレゲトンは、その小さな勢力と戦うことになった。

 ドラゴンの群れが、俺たちの前に現れる。


「ジルか……」


 俺は、そのドラゴンの真ん中に視線を向けた。

 そこにはジルとベル、そしてジャキの3人の姿があった。


「昴、勝負だ。

 お前は、ここで仕留める」


 ジルが、そう言って俺の方を見る。


「目は、見えるのか?」


 俺が、ジルに尋ねるとジルが小さく笑う。


「テオスの再生医療を舐めるなよ?」


 ジルは、そう言って紅い目を俺の方に向ける。


「じゃ、俺が亜金を殺るな!」


 ジャキが、そう言ってドラゴンから飛び降り亜金君の方に向かって走る。


「亜金、やれる?」


 プレゲトンが、そう言って亜金君の手を握りしめる。


「うん。

 やれなくてもやる!」


 亜金君が、そう言うとプレゲトンは体を炎の剣に変えた。


「じゃ、私はカイを殺るわ。

 それとも犯されるのが好きなアンタは、オークの生産機にでもなる?」

 ベルが、そう言ってカイの方を見る。


「別に好きじゃない。

 貴方と一緒にしないで……」


「あたしは、ジル以外に抱かれないし抱かれないよ!」


 ベルが、カイの方に向かって鞭を伸ばすとカイは、それを避ける。

 だけど、ベルは伸ばした鞭を縮め一瞬でカイの傍に移動する。


「カイ!」


 俺は、カイの名前を呼んだ。

 すると俺の頭に一撃重い物が当たる。


「痛い……」


 ジルが、握る重そうな剣が音を立てて壊れる。


「『痛い』だと?

 痛いですむのかよ!

 この剣、またパチもんかよ!」


 ジルが、そう言って壊れた剣を投げ捨てる。


「ちなみにその剣の名前は?」


「ああん?

 斬馬刀だよ!

 馬も斬れるんだよ!」


「俺の防御力は、馬以上はあるぞ?」


 俺が、そう言うとジルが舌打ちを打つ。


「そうだったな。

 だが、俺はお前に勝つ!

 勝って俺はテオスの幹部になるんだ!」


「俺程度の人間に勝って幹部なんかになれるのかよ?」


 俺が、そう言うとジルが小さく笑う。


「なれるさ……


 パンドラ、アンゲロス、ルシファー、ファルシオン……

 俺らテオスに歯向かうギルドは沢山あるが……

 お前を倒せば確実にパンドラの防御力は落ちる!」


「そんなにパンドラは脆くないぞ!」


「さぁ?どうだろうな……

 ただ、お前は確実にここで仕留める。

 だから、ここにある方を召喚する!」


「ある方?誰のことだ?」


「いずみさんだ」


 赤い目のモルテ……?

 そう言えば、前に会ったことがあるような。

 そして、3つのうちの大きな勢力のひとつだったはず。


「そいつは、他の人と戦っているはずじゃ……」


「俺は、召喚術が得意な竜剣士だ!」


 ジルは、そう言って空に手を上げ、赤い目のモルテを召喚した。

 光狩 いずみ。

 テオスでも指折りの実力を持つと言われている女だ。

 恐らく今の俺には到底勝てない相手だ。

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