第93話 今助けなくていつ助ける

「ジルさん。

 作戦成功ですね」


 いずみが、そう言って俺の方を見る。


「はい!」


「4対3なら、話にならないわね……」


 いずみが、優しく笑う。

 どうして、こんな時にそんな顔ができるんだ?


「俺は、負けにない!」


 俺が、そう言っていずみの方を睨んだ。

 するといずみは、指先から光を放つ。

 俺は、眩しくて思わず目を閉じてしまった。


「貴方では、私に勝てない……」


 いずみが、俺の後ろに立っている。

 もう移動したのか……?

 いずみは、俺の首に一撃与える。


 俺の見る景色がぐにゃりと歪む。

 そして、俺はそのまま意識が遠くなる。

 亜金君、カイ……ごめん。

 俺は、ここまでのようだ。

 俺はそのまま意識を失った。





 俺が目を開けた時、俺は白い部屋の白いベッドの上で横になっていた。


「気づいたか……」


 バルドさんが、そこにいた。

 近くには、ミズキさんもいる。


「カイや亜金君やプレゲトンは?」


「わからない。

 遺体が見つかっていないってことは、連れさらわれたと思うが……」


「何処に……?」


「恐らくテオスの拠点ね……」


 俺は、体を起こす。

 しかし、俺の体はベッドにたたきつけられるようにどすんと音を立てて落ちる。


「無理はしないで。

 常人なら首が跳ねるくらいのダメージを与えられているの。

 貴方の絶対防御の能力があったからこそこの程度で済んでいるのよ?」


 ミズキさんが、つらそうな表情でそういった。


「体が……動かない」


 俺が小さく呟くとバルドさんが、小さく言った。


「恐らく2~3日は、そのままだろうさ」


「今すぐ、助けに行かなくちゃ……!」


 俺は、もう一度体を起こす。


「だから無理はするな」


「でも、今助けなくちゃいつ助けるんだ!

 今救えなくて何が覚醒者だ!

 こうしている間にもカイは、亜金君は……

 酷い目にあっているかもしれない。

 プレゲトンだって、助けてあげなくちゃ……!」


 俺は、何度も何度も体を起こそうとする。

 だけど、体がいうことを聞かない。


「……あの子たちの捜索は、私たちに任せて」


 一花さんが、現れる。


「一花さん……?」

「今、ルシファーから連絡が来たわ。

 テオスに誘拐されたルシファーの子、十五君と連絡がとれたって……」


「わかった。

 なら、俺もそこに向かう」


 俺が、そう言うとバルドさんが、ため息混じりに言った。


「どうやって行く気だ……?

 その体で」


「這ってでも行く

 カイの……カイの傷つく姿はもう見たくない!」


 俺は、そう言って気合で立ち上がった。


「お?

 気力で立ち上がるか?」


 バルドさんが、ニヤリと笑う。


「カイが……苦しんでいるのに寝てなんていられない!」


「わかった。

 お前も連れていってやろう」


 バルドさんが、俺の頭を撫でる。


「ありがとうございます!」


 俺は、元気よくお礼を言った。


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