第86話 メイプルスライムは、俺を襲ったスライムの100倍強い

 それから数日が過ぎた。

 いつものように朝食を食べていると俺の携帯が鳴った。

 バルドさんからだ。


「はい、昴です」


 俺は、電話に出た。


「おう、昴!おはよう」


「おはようございます」


「お前に仕事を頼みたい」


「俺にできることですか?」


「亜金たちを迎えに行って欲しい」


「もう。

 なの日なのか……」


「ああ。

 アンゲロスの偉いさんが今日、こちらに来る。

 それを迎えに行って欲しい。

 向こうはいらないと言っているが……

 それは、少し失礼だからな。

 顔見知りであるお前とかみさまに迎えに行って欲しいんだ。

 かみさまには、すでに連絡してある。

 あれだったらカイにもついてきてもらえ」


「はい、わかりました」


「あと道中、メイプルスライムの目撃情報もある。

 気をつけてくれよ」


「メイプルスライム?」


「たぶん、お前を襲ったスライムの100倍は強いスライム。

 まぁ、今のお前でも倒せなくはないが生物を窒息させてからゆっくり食べるという習性を持っている。

 どんなに防御力があってもこれには勝てない。

 出逢ったのなら、かみさまやカイに任せるんだな」


「わかりました」


「まぁ、気楽に頑張ってくれや」


「はい」


 バルドさんは、俺がうなずくのを確認すると「じゃぁな」と言って電話を切った。


「カイ、仕事が入った」


「どんな仕事だ?」


「亜金君たちをアンゲロスに迎えに行く仕事だ。

 そして、亜金君たちを預かったあとにここに戻ってきてバルドさんと合流させるまでが仕事だ」


「そうか……

 昴、がんばれ」


「何を言っている?

 カイも一緒にいくんだぞ?」


「いいのか?」


 カイが、心配そうに俺の方をみる。


「ああ。

 お前は俺の相棒だからな」


「ありがとう」


 カイが、小さく笑った。






「来たようだな」


 待ち合わせの場所にかみさまが、先に来ていた。


「ああ。

 すまない、またせたな」


「気にするな。

 余は待つのは平気だが、待たせるのが嫌いなんだ。

 だから、余は常に30分前行動を心がけている」


「そうか。

 かみさまは、立派なんだな」


 カイが、そう言うとかみさまがカイの方を見る。


「む。

 お主は、ソラの……」


「ああ。姉だ」


「うむ!よろしくな」


 かみさまは、右手を出す。


「ああ。よろしく」


 かみさまとカイは、握手をかわした。


「では、行くぞ。

 メイプルスライムの群れに遭えば余たちでは手に負えぬ」


「群れなの?」


「たまにな、ヤツらは群れる」


「合体とかしない?」


「む?知っているのか?」


 俺は、少し怖いものを想像した。

 前世の世界のゲームであったスライムも合体していた。

 スライムにもよるけれど。そこそこ強くなった気がする。

 この世界に来たときに戦ったスライムより100倍強いメイプルスライム。

 それが、合体して強くなる……

 考えるだけでもぞっとする。


「昴どうかしたのか?」


 カイが、心配そうに俺の方を見る。


「大丈夫だ」


 俺がそう言うとかみさまがうなずく。


「主がこっちの世界に来たときスライムに襲われたんだったな。

 さぞかし怖かっただろう。

 だが、大丈夫だ。

 今の主は一人じゃない。余たちがいる。

 大船に乗った気持ちで来い」


 かみさまが、そう言って微笑む。

 俺の目にはかみさまが、少しかっこよく見えた。

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