第87話 もう人を奴隷商人に売ったりとかの悪さは止めてくれ

 暫く歩くと女性の悲鳴が聞こえた。

 俺たちは、その場所に駆け寄った。

 するとそこには見知った顔があった。

 綺麗な女勇者……

 俺が、この世界に来てすぐ接触し僕を奴隷商人に売りつけようとした女。

 ビリーブだ。


「アンタは……

 あの時の……」


 俺は、思わず声を出した。


「た、助けてくれないか?」


 ビリーブの近くにいたモチコが、僕たちに助けを求める。


「お前らなんでこんなところにいるんだよ……!」


 俺は、思わず怒鳴ってしまった。


「君は、誰……?」


 モチコが、俺の顔を見て目を丸くさせている。


「シズカとピトスは?」


 俺は、声を低くして尋ねた。


「ピトスは、そこでメイプルスライムに襲われている……」


 モチコが、そう言ってゆっくりと指を向ける。

 するとそこには、服を体液で溶かされほぼ裸の状態のピトスの姿があった。


「シズカは……?」


「MPが、切れてそこで倒れている……

 あ、やめろ!シズカにまで手を出すな!」


 モチコが、怒鳴る。

 するとスライムはシズカを襲うのをやめモチコの方に猛スピードで近寄ってくる。


「うむ……

 どうやら、こいつらに卵を植え付けようとしているんだな」


 かみさまが、冷静に答える。


「卵を……?」


「まぁ、モンスターだからなそんなもんだ。

 で、どうする?

 こいつらは、お前を奴隷商人に売りつけようとしたヤツらなんだろう?」


「うん」


「見捨てるか?」


 かみさまの声にビリーブとモチコが反応する。


「助けて!助けてくれたらなんでもするから!」


 ビリーブが、そう言って俺とかみさま、そしてカイの方を見る。


「どうする?昴?

 なんでも、するといっているぞ?

 筆下ろしでもしてもらうか?」


 かみさまが、そんなジョークを言った。


「そんなことでいいのなら、何度でもする……

 だから……!」


 モチコが涙目で俺の方を見ている。


「……助ける」


「いいのか?」


「ああ。

 だけど、筆下ろしは頼まない。

 惚れてない女を抱いたところでなんの価値もない。

 ただ、これだけは約束してくれ……

 もう人を奴隷商人に売ったりとかの悪さはしないって誓ってくれ」


 ビリーブは、静かに頷いた。


「わかった……

 約束する」


「かみさまは、ここをお願い」


「カイは、あそこでMP切れをおこしている魔法使いのシズカを助けてあげてくれ。

 俺は、シズカを助ける」


 俺は、そう言って石ころを拾い上げる。


「これは、ゴミ……」


 俺は、そう言ってスライムに石をぶつけた。

 するとメイプルスライムの体は、飛び散った。


「ああ。

 わかった。

 存分に暴れるぞ!」


 かみさまは、そう言ってメイプルスライムに炎の魔法をぶつけた。

 カイも、得意の水属性の氷の魔法で戦いを始める。

 俺は、シズカを襲っているスライムを素手で倒していった。

 この俺の能力。

 使いこなすとかなり使える。

 俺は、そう思いながら戦った。

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