第84話 ドラゴンの肉には毒がある

「機会があれば会ってみたいな」


「ああ。

 それから――」


 カイは、楽しそうに話をする。

 カイは、こういう話をするのが好きなのか……

 旅行ネタを振ってみると意外とずっと話してくれていそうだ。


「昴。

 聞いているのか?」


 カイが、俺の方を睨む。


「ああ。

 聞いているよ。

 ドラゴンのステーキ食べてみたいな」


「ドラゴンは、食べ物じゃない……」


 カイが、ため息混じりに答える。


「まぁ、気にするな!

 食えばみんな肉だ。

 牛も豚も食うだろう?」


「そうだけど、ドラゴンの肉には毒がある。

 食べれば死ぬぞ。

 それ故、モンスター界では強い分類に入る」


「毒があるのか?」


「ああ、ドラゴンの肉の毒は強力で、1グラムで致死量だ。

 サスペンスドラマでもかなりメジャーで――」


 カイは、また楽しそうに話をする。


「カイは、ドラゴンが好きなんだな」


 俺が、そう言うとカイは笑う。


「ああ。

 大好きだ。

 将来はドラゴン牧場を作るのが夢だった」


「だったとは?」


「私もモンスターだ。

 展示される側の存在だったんだ」


「えー。

 でも、バルドさんが言ってたぞ?

 モンスターと人間の間でも子供が出来るって」


「子供は出来る。

 結婚して幸せにしているものもいる。

 だけど、それは叶わない。

 私は、もう傷物なのだから……」


 カイのその目は淋しげでつらそうだった。

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