第71話 キスをとるかセックスをとるか

「わかった」


 カイが、うなずく。


「待て。

 俺はペット契約とかしないぞ?」


 俺がそう言うとかみさまが答える。


「昴。

 お前は、なにか勘違いしているようだな。

 ペット契約は、カイを護るためでもあるのだぞ?」


「どういう意味だ?

 人を縛り付けペットということのどこが護りになるんだ?」


「強制再契約を防ぐためだ」


「強制再契約?」


 俺は、首を傾げると万桜さんが言葉を付け足す。


「そう。

 ペットは、1人の人間としかペット契約できないのよ。

 今のカイの持ち主はジル。

 契約を強制解除してても、カイの意思とか関係なくジルの気持ち一つで契約を結べるの」


「つまりどういうことだ?」


「いつでも、ジルのペットに戻される可能性があるってことよ」


 万桜さんが、ため息混じりにそう言った。


「お前も腹をくくれ。


 カイをペットにしても、お前がカイに命令をしなければいいんだ」


「それ、難しいぞ……」


 かみさまの言葉に俺は答えた。

 俺は、人をペットとして扱うことは出来ない。

 でも、カイはサキュバスでモンスター。

 人の姿形をしているけれどモンスターなんだ……

 俺は、どうすればいい?

 正解は何だ?


「昴さん」


 マスターが、俺の名前を呼ぶ。


「な、なんだ?」


「迷っている間にも時間は過ぎますよ」


「え?」


「そして、迷っている間にもカイさんが敵の手に渡る可能性もあります」


「……どうすればいい?

 カイの主になるにはどうすればいい?」


 俺は、ペットという言葉を使いたくなかった。

 俺は、ソラの時と同じようにカイに接したい。

 そう思ったから……


「契約の儀式の立会人には、私がなりましょう」


 マスターが、そう言って静かに頷いた。


「……マスターってそういうことも出来るのですか?」


「はい。

 なにせ私は、マスターですから……」


 マスターは、静かに笑った。

 本当に謎が多い人だ。


「あと、カイさんの面倒は私が見ます」


「え?」


 面倒?


「あ、就職面でですよ。

 ソラさんのファンだった人たちもそのお姉さんがくるとなると癒やされるでしょう」


「そういうものなのか?」


「はい、そういうものですよ」


「で、儀式はどういうことをすればいいのだ?」


「このペンダントをお互いが付けて体液の交換をするのです」


 マスターが、そう言って俺とカイの首にペンダントを着けた。


「体液?」


「そうです。

 方法は貴方たちに任せます」


 マスターは、そう言って笑った。

 体液の交換って、キスとかなのかな?

 俺は、静かにカイの目を見る。


「セックスするのか?」


 カイの言葉に俺は驚く。


「セックス?

 え?体液ってキスとかじゃダメなのか?」


 俺の問いにマスターが、答える。


「それが昴さんなんですよ。

 基本的に、主従関係を結ぶのに一般的に行われるのは、性の交わりですね。

 強姦したりする人も多いですね。

 なので、方法は貴方に任せます」


 マスターは、そう言って俺の方を見る。

 キスをとるかセックスをとるか、問題なのはそこに何があるかだ。

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