第70話 私はお前と旅に出る。

「そうなのか……?」


 俺は、カイに尋ねた。


「アイツは、よく笑いよく喋る。

 昔からそうだった。

 私は、ソラのそういう部分に憧れていて嫉妬していた。

 喋り方も真似てみたが、しっくりこなかった」


「真似したのか?」


「ああ。

 お前とはじめて出会った時もそうだった」


 言われなくてもわかっていたけどあの時と喋り方とキャラが違うもんな。


「どっちが、本当のお前なんだ?」


 俺の問いにカイは首を横に振る。


「わからない。

 本当の私は、誰なんだろうか?」


「そんなこと聞かれてもわからないわよ」


 万桜さんが、すぐに答える。


「そう……だな……

 自分が誰なのか?自分が何者なのか……

 何が出来るのか知りたい」


「お前は、何がしたいのだ?」


 俺は、カイに尋ねる。


「私は、お前に興味がある」


「どうして俺に?」


「ソラが気に入った男……

 どんな男なのか気になるのだ。

 私たちは、今まで性の道具。

 私に関しては、モンスターに孕まされる道具にもされていた。

 そんな扱いしか受けていない。

 なのにお前は、ソラに手を出していないのだろう?」


「どうしてわかったのだ?」


「お前からは、童貞臭がする」


 だから、どんな匂いだ?


「そんなの匂いでわかるのか?」


「匂いというか雰囲気だな」


「わかるのか?」


 俺は、万桜さんに訪ねてみた。


「うん。

 女慣れしてないしね。

 でも、まぁ。

 お金で買ったりソラちゃんを無理やりやったりしなかっただけ偉いと思うわよ」


「うむむ。

 そうか……」


 なんか、惨めな気分になった気がする。


「私は、お前と旅に出る」


「え?」


 カイの突然の言葉に俺は耳を疑う。


「私は、お前と一緒に時を過ごす。

 そして、ソラがお前に出来なかったことをやってやりたい。

 だから、私はお前と旅に出る」


「……俺は、旅に出ないぞ?」


「旅行は嫌いか?」


「いや、嫌いじゃないけど」


「なら、問題ない」


「待て」


 カイが、頷こうとしているとそれをかみさまが止める。


「昴と行動を共にするというのならば、お前は昴とのペット契約をしろ」


 かみさまが、そう言ってカイを見た。

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