第62話 自分をゴミだと思えば自分さえも武器になる

 俺が、地面に足をつくと同時に敵の弓兵が俺に向けて矢を放つ。

 大丈夫。

 俺には、これくらいの弓には効かない。

 俺は、呟く。


「俺はゴミ」


 まだ来ない。

 だから、もう一度呟く。


「俺はゴミ」


 まだまだ来ない。

 俺は、自分に暗示をかけるように呟いた。


「俺はゴミ、俺はゴミ、俺はゴミ……」


 何度も何度も呟く。

 なんか力が湧いてきた気がする。

 俺に近づいてくる歩兵を試しに殴ってみた。

 歩兵は、後ろに大きく吹き飛んだ。

 よし、まだ実感はわかないけれど……

 俺でもダメージを与えれるな。

 俺は、走る。

 そして、殴る。殴る。殴る。

 うっし。

 無双っていうのか?こういうの……

 俺って、強くなれる?

 そう思って歩兵を殴る。

 その歩兵はダメージ受けていない。

 ダメだな。

 自分が少しでも有能だと思えばダメージが与えれなくなる。

 俺は、再び思い込む。

 自分はゴミだと。

 そう俺は、ゴミを武器にしゴミを有効活用できる。

 つまり、自分をゴミだと思えば自分さえも武器になる。

 弱ければ弱いほど俺は強くなれるんだ。

 意味わかんないけど……

 そうしていくうちに俺は俺を見つめるひとりの男に気づく。

 ジルだ。

 ジル・ジルベルト。

 俺には、わかる。

 コイツは敵だと。

 俺は、コイツが嫌いなんだと。


「よう。ゴミ人間。

 雑魚イジメは楽しいか?」


「お前に言われたくないぞ?

 無抵抗な村人を沢山殺して……

 俺は、お前みたいな人間が嫌いだ」


 俺が、そう言うとカイが言う。


「私も貴方が嫌いよ」


 カイは、そう言って地面に着地したソラの方を見る。


「ソラ。

 貴女のことも……」


 カイのその言葉が、少し切なそうだった。

 本心では嫌ってない。

 むしろ逆なんだろう。


「ジル。

 お前にとってカイはなんだ?」


 俺が、そう尋ねるとジルがニヤリと笑う。


「そんなもん決まってるじゃないか?

 ペットだよ」


 カイは、少しつらそうな顔をした。


「やっぱり、絶対服従の関係で結ばれているのね……」


 ソラのカイに向けられたその言葉は切なそうだった。

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