第61話 人は自分が自分に失望したとき立ち直れない

「では、私は空からの攻撃です!

 フレイムアロー!」


 ソラが、そう言って炎の矢を振り落とす。

 炎の矢は魂無き弓兵たちの体を貫く。


「すごいな……

 ソラってもしかして強い?」


「え?いまさらですか?」


 ソラが、驚いた表情で俺を見る。


「ソラは強いぞ?

 余が認める程度にはな」


 かみさまが、そう言ってフフフと笑った。


「俺は、何をすればいい?」


 俺は、何をすればいいかわからない。


「自分で考えるんだな」


 かみさまは、そう言うと俺の方を見る。


「なにをすればいいのかが、わからない……」


 情けない話だが何をすればいいのか本気でわからない。

 敵を倒す?

 敵を殺す?

 出来るのか?俺に……


「お前は何だ?」


 かみさまが、何を言っているかわからない。


「俺は、ただの雑魚」


「違う。

 お前は昴だ。

 お前はお前以外のものにはなれない」


「え?」


「お前は、お前を演じろ。

 自分を失うな。

 自分を信じろ。

 人は自分が自分に失望したとき立ち直れなくなる」


「そんなことを言われても……」


 かみさまの言いたいことはわかる。

 だけど、俺にはわからない。

 俺は俺を認めてはいない。

 一番認めていないのは俺だ……

 他の誰でもない。

 俺は、俺を認めれない。

 弱さから惨めさから。

 俺は、世界の誰よりも弱い。

 矢が、俺の方に飛んでくる。

 それを俺は、右手で掴む。


「でも、俺は誰よりも固い!」


 その矢を握りつぶす。


「ああ。

 そうだ。

 お前の防御力は、かみさまバリアに匹敵するくらい強い。

 自身を持て」


「うん。

 やってみたいことがある。

 それまで、ちょっと空に浮いてて。

 んで、俺を地面に降ろしてくれ」


「わかった。

 だが、空からの援護射撃程度ならさせてもらうぞ?

 お前に死なれると兵長に余が殺される」


「うん。

 大丈夫。

 たぶん、俺はこの勝負勝てる気がするから」


「やるならさっさとやってくれない?

 やつらは、弓兵じゃなく魔法兵も来たわよ」


 万桜さんがそう言うとかみさまがうなずく。


 「ああ。わかった」


 かみさまは、静かにそう言うと俺を地面に降ろしてくれた。

 

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