第54話 ゴミは燃やせばよく燃える

 小石が、落ちた場所の空気が圧縮されてく。

 オークたちがゆっくりと吸い込まれていく。

 数十、数百のオークたちが、その場所に吸い込まれ命を落としていく。


「おいおい。

 マジかよ、昴……」


 バルドさんが呟く。


「これが、異世界の人の力なの?」


 万桜さんも驚いていたそうだ。

 そして、俺はヴィンの方を睨んだ。


「そこまです」


 そう言って一人の少女が現れる。

 赤い目に赤い髪の少女だったらしい。


「赤い目のモルテ……だと?」


 バルドさんが、拳を構えた。

 赤い目のモルテ……

 ソラ曰く、死神の王の娘。

 魔族界火の海地獄の隊長。

 光狩(ひかり) いずみ。

 いずみは、俺たちに向けて言った。


「今は、貴方たちと争う気はありません」


「これだけ暴れておいてそれか?」


 バルドさんが、いずみを睨む。


「それとも戦いますか?

 私を含め、テオスの幹部3人と副幹部1人。

 あとお望みなら、ドラゴンを1000匹ほど連れてきましょうか?

 今、消耗しあうのはお互いに得策ではないかと思うのですが……」


 いずみが、そう言うとバルドは首を横に降った。


「はいはい。

 何処にでも行きやがれ……」


 バルドが、そう言うとクレイジーとヴィンたちは、ため息を付きながら後退し姿を消した。

 ジルが、「覚えていろよ」と言い残し姿を消した。

 そして、俺はその場に倒れそのまま病院へと運ばれたらしい。

 もちろんジルのセリフなんて覚えてない。



「そんなことがあったのか……」


 俺が、そう言うとソラは苦笑いを浮かべた。


「覚えてないみたいですね……

 ご主人様は、凄く強かったですよ」


「そっか……」


 全く覚えてないので嬉しくはない。


「リクは、どうなったの?」


「ジルに連れられていきました」


「そっか」


「ご主人様は、何者なんですか?

 前世の記憶があるんですか?」


「うん。

 ちょっとね」


「ご主人様は、前世はどんな人だったですか?」


「ただのろくでなしだよ」


「知りたいです」


「俺は、ただのゴミだよ。

 それもよく燃えるね」


 そう俺は前世でもゴミ。

 燃やせばすぐに燃えるゴミだったんだ。

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