第33話 俺の隠された特技

 俺たちは、いつものように眠りに落ちた。

 そして、目覚めた時。

 俺のベッドの隣にソラは、いなかった。


「ソラ?」


 俺はテーブルの上に置かれたメモを見つけた。

 もしかして、さよならフラグってヤツなのか?

 俺は、頭の中が真っ白になった。

 そして、ゆっくりと手紙を読む。

 メモにはこう書かれていた。


『ご主人様へ……

 バルド先に子供たちに会いに行ってきます。

 ご主人様は、朝ご飯をちゃんと食べてきてくださいね。』


 なんだ……

 子守の仕事を受けに行ったのか……

 はぁ、さよならフラグかと思って少し泣きそうになったぞ。

 朝ご飯か……

 久しぶりに料理でも作るか。

 俺は、そう思って冷蔵庫を開けた。

 なんか、普通に冷蔵庫を開けたけどこの世界には俺の知っている電化製品も多数ある。

 冷蔵庫以外にもLEDライトもあるし、携帯電話に近いものもある。

 色んな意味で俺の知っている世界の電化製品より技術は優れている。

 ちなみに、ソラはスマホを持っている。

 素晴らしいことだよ。

 俺は、冷蔵庫にあった卵とパン、ハムを使いサンドイッチを作った。

 だけど、悲しきかな……

 俺には、料理の才能がない。

 とってもとってもとっても俺の料理はまずい。

 食材に愛情は注いではいるつもりなのだが……

 美味しくはならないんだな……

 すると部屋の中にソラが、入ってきた。


「あ、ご主人様。

 起きられましたか……」


「あれ?子守に行ったんじゃないの?」


「えっと、ご主人様。

 色々ありまして私、喫茶店で働くことになりました」


「え?子守に行ったんだよね?」


 俺は、おなじ質問をしてしまった。


「えっと話せば長くなりますが、子守に行こうと子供たちに会いに行ったらバルドさんと出会いまして、そこで喫茶店に誘われましてするとその喫茶店が人手不足だというのでちょっと料理を手伝ったんですよ。

 そしたら、喫茶店のお客さんたちが私の料理を褒めてくれたのです。

 そしたら、喫茶店のオーナーが『ぜひ、ウチで働いてくれ』と言ってくれましたので、バルドさんと相談の結果、喫茶店で働くことになったのです」


「そっか……」


 バルド兵長と相談かぁー


「ごめんなさい……」


「え?なにが?」


「ひとりで勝手に喫茶店で働くことにしてしまって」


「気にしなくていいぞ?」


「え?怒らないんですか?」


「というか、ソラがこのギルドで受入てもらえるってことだろ?


 それは、それで俺は嬉しいぞ」

 そうは言ったもののちょっと寂しいのも事実だった。


「ご主人様、なんか拗ねてます?」


「拗ねてないぞ?」


「あ、あと……

 その黒いものはいったい?」


「これは、サンドイッチだぞ」


「サンドイッチですか……」


「ああ」


「私が、作りますからご主人様はそこで待っていてください」


 ソラが、手際よくサンドイッチを作ってくれた。

 俺は、手を合わせたあとそのサンドイッチを口に運んだ。


「あ、美味しい。

 卵に砂糖を入れた?

 ベーコンに塩かけた?

 パンに塗ったマーガリンにからしを入れてる?」


「わかるんですか?」


 ソラが、驚いた表情で俺を見る。


「うん。

 俺は、絶対味覚持っているからな」


「え?でも、それだと料理は得意なんじゃ……?

 味見とか得意なんじゃ……?」


「味見はしない」


「どうしてですか?」


「俺の料理はまずいからだ」


 それを聞いたソラは、苦笑いを浮かべた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る