第26話 人肌ならず獣肌を先に知った俺はダメなのかもしれない。

 そして、俺たちは静かに眠りについた。

 朝が来る。

 生暖かい感触が俺の体を刺激する。

 なんだ?

 もしかして、この感触寝起きのあれか……?

 寝起きのあれで童貞喪失か?

 そういうものも悪くない?

 いやでもこれは好き同士人がする行為だし……

 俺は、俺の中で自問自答をはじめる。

 天使な俺と悪魔の俺が心のなかで葛藤をはじめる。


「出来るときにやらないといつまでたってもやれないぞ?」


「ダメだぞ?あれは好きなもの同士でやる行為だ。

 やるのなら、惚れさせてからやるんだ!」


 このやりとりの繰り返し……


「……何をしている?」


 黙っていればいいものの俺は、声を出して訪ねてみた。

 でも、目は閉じたままだ。


「ご主人様は、何かしてほしいことありますか?」


「え?」


 これは思わぬ変化球だ。

 ってか、思ってないのは俺だけかもしれないけれど……


「……なんでもしますよ?」


「本当に?」


「あ、でもえっちぃのは胸を揉むことまでです」


「ケチ……」


「それとも無理やりします?」


「無理矢理は主義じゃない」


 結局、天使な俺が勝った。


「……ご主人様のこと好きになれそうです」


「そう?」


「はい。

 私がモンスターではなく人だったら惚れていたかもしれませんよ?」


「それはどうかな……」


 そっか、言われてみればソラはサキュバス。

 人にそっくりだけどモンスター。

 流行りの異種間恋愛なのかもしれないけれど……

 そういうのもありなのかもだと思った。

 俺は、人肌よりも先にモンスター。

 獣肌を知ったんだな……

 もう好きになってくれるのなら誰でもいいや。

 ふと俺は、そんなことを思った。


「サキュバスの体は、ほぼ人間の体と同じです。

 エッチの具合は人以上らしいです。

 だから、頑張ってくださいね」


「え?何を頑張るんだ?」


「えー。

 それを女の子に聞くのですか?」


「はは……」


 俺は小さく笑った。

 すると俺の部屋の扉が開かれる。


「昴……って、お邪魔だったか?」


 バルドさんが、ドアを開き俺たちを見るとすぐに顔を隠した。


「いえ、大丈夫ですよ」


 俺がそう言うと、バルドさんが顔を隠したまま言葉を投げる。


「そうか……

 モンスターをペットにするのなら、モンスター仙人のところに行くといい」


「モンスター仙人?」


「ペットへの絶対服従を誓わせる儀式をするところだ。

 これをするとモンスターは、主の命令に逆らうことができなくなる」


「え……?」


「これをしないといつ裏切られてもおかしくないぞ?」


 バルドさんの声が低くなる。


「大丈夫です。

 俺は、ソラを信じていますから……」


「そうか……?

 絶対服従の魔法はかなり強力だと思うのだが……」


「必要ないですよ。

 昨晩も俺を殺そうと思えばいつでも殺せる状態でしたしね」


「わかった。

 お前が、そういうのなら俺はお前を信じる」


 バルドさんは、そう言うとドアを閉じた。


「いいんですか?」


 ソラが俺の方を見て、首を傾げる。


「なにが?」


「絶対服従の魔法です。

 それを使えば、私の体を自由にすることができますよ?」


「いいよ。

 俺は、そういうの嫌だから……」


「そうですか……」


「うん。

 俺は、ノーといえる関係をソラと築き上げていきたいんだ」


「わかりました」


 ソラは、小さく笑い俺の胸に顔をうずめた。


「どうした?」


「ご主人様は、やっぱり今までのご主人様と違いますね」


「そうなのか?」


「はい」


 ソラの前のご主人様ってどんな人だったんだろう?

 少し気になる。

 けど、今は聞かないほうがいいのかな?

 そんなことを思った。

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