第27話 復讐は他人に任せてはいけない

 チートって、最強だと思っていたけれど……

 最強じゃないんだな。

 俺は、そう思い空を見上げる。


「すばるー」


 女の子が、俺の背中に飛び乗る。

 女の子と言っても子供だ。

 嬉しくともなんともない。


「歩ちゃん!

 昴先生のことはちゃんと昴先生と呼びなさい!」


 万桜さんが、歩ちゃんにため息混じりに注意する。


「万桜先生が、魔王になったー」


 歩ちゃんは、嬉しそうに笑って俺の背中から離れた。


「私は、元から魔王です!」


 万桜さんは、胸を張ってそう言うが誰も聞いてはいなかった。


「お兄さん、サキュバスを飼っているって本当?」


 隼人君が、そう言って俺の方を見る。

 ちなみにこの隼人君は歩ちゃんと同じ6歳。

 だけど、少し影のある子だ。

 左目に眼帯をしている。

 確か事故で見えなくなったって聞いたけど……

 もしかして、モンスターに襲われたとか?


「ああ、一緒に暮らしているよ」


「モンスター仙人に絶対服従の魔法もかけてもらっていないんだよね?」


 隼人君の言葉が、胸に刺さる。


「うん」


「お兄さんの職業ってもしかして、魔物使い?」


「違うよ。

 無職だよ」


「そうなんだ……」


「うん」


「寝首をかかれないようにね」


「ソラは、そんなことをする子じゃないぞ?」


「それは、会ったことがないからわかんない」


「まぁ、そりゃそうだな」


「うん」


 この話の流れ……会わせろとでもいうのか?


「会いたいのか?」


「興味ある」


「会ってどうする?」


 俺の問に隼人君の目が虚ろになる。


「復讐する」


「なんのだ?」


「父さんと母さんと妹を殺した復讐」


「ソラが殺したのか?」


「僕の家族を殺したのは盗賊だよ」


「じゃ、ソラは関係なくないか?」


「復讐してもらうんだ。

 殺してもらうんだ。

 ベルゼブブを……」


「ベルゼブブ?」


 俺は、首を傾げた。

 すると万桜さんが、そっと教えてくれた。


「この世界の三大組織のひとつよ。

 盗賊ギルドよ…‥

 村を襲っては人を殺して楽しんでいるの」


「なんかいろんな組織があるんだね」


「うん」


 万桜さんがうなずく。


「サキュバスって強いんでしょ?

 一個小隊を魔法で一瞬で壊滅させれるくらいに……」


「え?」


 俺は耳を疑った。


「違うの?」


 さて、困ったな。

 サキュバスってそんなに強かったのか?


「んー。

 そういうのは他人に任せるな」


「え?」


 隼人君と万桜さんが驚いた顔を見せる。


「自分の力でどうにかするんだな。

 他人にそれを果たしてもらってお前は満足か?」


「それは……」


 隼人君が言葉に困る。


「ちょっと!昴君!貴方!何を言って……」


 万桜さんが大きな声を出し俺の方を睨む。


「他人任せじゃダメなんだ……

 自分でやらないと……」


 この言葉は、隼人君だけにじゃない昔と今の自分にも言い聞かせたのだ。

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