第24話 でも、やっぱり童貞のままです

 そして、夜が来た。

 俺がベッドの中に入るとソラも一緒に入る。

 そうこれが、脱童貞の瞬間だ!

 俺は、ゆっくりとソラの顔に手を当てた。

 するとソラの顔が、ビクリと震える。


「怖い?」


 俺は、出来るだけ優しく尋ねた。


「うん。

 でも、大丈夫」


 もしかして、処女かな?


「こういうことははじめて?」


 ソラは小さく首を横にふる。


「ご主人様は?」


「え?」


「経験は豊富ですか?」


 俺は小さく首を横に振った。

 豊富どころかいちどもない。

 でも、こういうところで嘘は言わない方がいい。


「いちどもない」


 俺は小声で言った。


「そうですか。

 まだ若いですもんね」


 ソラの顔が、少し微笑む。


「そ、そうだね。

 16歳で童貞とか普通だよね」


 前世では、26歳だけど……

 26歳で童貞とか普通にいるよね。

 俺の目に涙が浮かぶ。


「大丈夫ですよ。

 ご主人様」


「え?」


「大丈夫です」


 ソラがそう言って僕の体を抱きしめる。

 何が大丈夫なんだろう。

 俺には、わからない。


「大丈夫ってなにが?」


「ご主人様は、ずっと私のご主人様でいてくれますか?」


「え?」


「エッチしなくてもご主人様でいてくれますか?」


「ええ!」


 俺は思わず声を上げる。


「やっぱ、ダメですよね」


 ソラが、涙目になる。


 昴。

 焦っちゃいけない。

 こういうのは無理やりやっても童貞喪失にカウントされないんだ。

 愛し合ってこそだ、愛し合ってこその童貞喪失なんだ。

 無理やりしたらそれはレイプと同じこと!

 そして、買うのも童貞卒業にならない。

 俺は、いろんなことを頭に浮かべて自分の中で言葉を探した。


「ダメじゃない」


「本当ですか?」


「うん。

 無理矢理は、俺の主義じゃない」


「そうですか……

 ありがとうございます。

 その時が来たら、お願いします」


「うん。

 でも……」


「はい」


「一緒に寝るのは大丈夫?」


「いいのですか?」


「うん、ぬくもりと言うものを知ってみたいんだ」


「じゃ、胸を触るまではいつでも大丈夫です」


 胸を触るまでって、どこまで?

 そう思ったけれど取り敢えず、胸を揉んでみた。

 胸はやっぱり柔らかかった。

 ソラが静かに笑う。

 俺は静かに胸を揉む。

 頑張れば、童貞を卒業出来ると思ったけれど……

 俺はやっぱり童貞でした。

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