第13話 涙の数だけでは強くはなれない
「泣いてもいい?」
俺は、万桜さんに訪ねてみた。
「泣けば?」
万桜さんの反応は意外と冷たかった。
「しくしく……」
胸を貸してと言おうかと思ったけれどとても言える雰囲気じゃないね。
なので取り敢えず、口に出して泣いてみた。
「大丈夫です!
涙の数だけ強くなれますよ!」
亜金君がそう言ってくれる。
なんか、そんな歌あったな……
だけど、知ってる?亜金君。
「涙の数だけでは、強くなれないよ」
「え?」
亜金君が目を丸くして驚く。
「ただ泣くだけでは強くはなれないのだよ。
悔しいとか見返してやるとかの思いがなければ強くなれないのだよ……」
「じゃ、昴君の今の涙は何?」
万桜さんが、痛いところをついてくる。
「悲し涙かな……」
もちろん意味はない。
適当に答えた。
「そう、じゃ強くならないとね。
この世界では、力こそ正義だから」
このセリフもどこかで聞いたことあるぞ。
なんだったかな。
「愛とか勇気とか、そんなんが正義じゃないの?」
とりあえず無難な質問をしてみた。
「愛と勇気だけでは、お腹は膨れないわ」
その通りだ。
これは、どこの世界も同じなのかな?
「そうだね」
本当に悲しくなった。
【力こそ正義】俺は、この言葉は好きになれない。
だって、そこに正義があっても愛は、欲しいものさ……
誰かが言った。
『力なき正義は無力だけど、愛なき正義はただの暴力』
俺は、この言葉を聞いた時、激しく同意した。
これだけは、どの世界でも共通でいて欲しかった。
「あえて言うわ、力こそ正義よ。
力がなければ死んじゃうの」
「そこまで言う?」
俺は万桜さんに尋ねた。
「お腹が空いたとするね」
すると万桜さんが丁寧に説明してくれる。
「うん」
「財力がなければご飯は買えないのはわかる?」
「うん」
「もし、目の前にモンスターが現れたとするね」
「うん」
「魔力や体力がなければ、モンスターのご飯になる」
「そうだね」
「ね?力が必要でしょ?」
「そうだけど……
なんか切ない」
そう、切ない。
力こそ正義だなんて認めたくない。
でも、それが現実なんだ。
切ないけれど、認めなくちゃ。
さっき自分でも言ったじゃないか。
涙の数だけでは強くなれないと……
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