Scene.03 チートは最強ではないという現実の虚しさ

第14話 私と仕事どっちが大事なのとかいう女はシャーマンでした

 ――数日後。ギルド・パンドラコミュニティ内公園。


 俺は今、猛烈に失望している。

 チート級の力を持ち。

 異世界から来て異性にモテモテになりやがてはハーレムを作ると誓ったのに……

 現実にモテているのは、子供にだ……


「すばるー」


 しかも、呼び捨て……

 子供たちは、嬉しそうに俺の周りにまとわりつく。


「すーばーるー」


 そう言って子供に混じって俺の背中に飛びついてくる女がいた。

 ってか、誰だ?

 歳は俺とあんまり変わらなさそうなんだが……


「誰?」


「えー。優心だよー。

 知らないとは言わせないぞっと」


「知らない……」


 ごめん、本当に知らない。


「えー。

 私も知らないのに昴も私の事を知らないんだったらお友達になれないよー?」


「えっと、お互い初対面だよね?」


「うん、そうだよー」


「じゃ、知らなくても当然だ」


「そうだねー」


 なんなんだ?このやる気のない返事は……

 もしかして、この子。

 俺に一目惚れか?

 俺の異世界から来た未知なる能力に惹かれたとか?

 よく見ると可愛いぞ?

 小柄で明るいし…‥

 そして、さっき背中に乗られた時胸の柔らかい感触が……

 胸もそこそこある感じ……

 女の子の胸なんて触ったことないからわからないが、結構大きそうだったぞ。

 そして、何より声が可愛い。


「なになになにー?」


 女の子は、楽しそうな顔で俺の顔を覗き込む。

 なんだ?これ……この世界では顔を覗き込むのが流行っているのか?

 滅茶可愛いんだけど……


「なんでもないよ。

 よかったら君の名前を教えてくれないか?」


 俺は、かっこ良く訪ねてみた。


「優心だよー

 橘 優心(たちばな やこ)。

 私は、占い師だよー

 と言ってもほとんどカウンセラーの仕事に近いけど……」


「そ、そうなんだ?」


「うん。

 兵長に貴方のメンタルヘルスを頼まれているのー」


「メンタルヘルス?」


「そう、心のケアかな。

 異世界から来て不思議な力を得るはずだったけどその能力がショボかったのでへこんでいるだろうから、相談にのろうかと思ってねー」


「そうなんだ?」


「うん。

 だから、これからどっか遊びに行こうよー」


「えっと俺は、仕事をしているから……」


「えー。

 私と仕事どっちが大事なのー?」


 あ、このセリフ知ってる。

 ドラマとかでよく言われているセリフだ……

 実際に言われるのは、はじめてだ……

 なんか、面倒くさいけど嬉しいな。


「それは、もちろん――」


「あー。

 仕事サボって優心ちゃんを口説いてる人がいる」


 万桜さんが、そう言って俺と優心さんの会話に割って入ってくる。


「あ、別に口説いている訳じゃ……」


「あー!昴の顔真っ赤だー」


 子供たちが、そう言って笑う。

 なんか、いいな。

 こういうのもいいな。

 なんか楽しい。

 これってもしかして万桜さんも優心さんも俺のハーレムに入るフラグなのかな?

 そう思うとワクワクしてきた。

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