第12話 12 右手に石を左手に藁を持ってもスーパーヒーローにはなれない

「とりあえず試してみないことには、わかんないわよね。

 私も貴方も……」


 万桜さんが、そう言って俺に石を持たせる。


「え?」


 どこから石を?そして試すって?


「確率で言うと100回投げればいいんじゃないかな?」


 亜金君が、そう言うと軍鶏爺が目を丸くさせる。


「おいおい、やるのなら外でやってくれ……

 家の中でやられたら家が壊れてしまう」


 石ころひとつで家が壊れるってありえないよね……

 でも、もしかしたら俺の中に何かが眠っていてハーレムフラグのひとつに繋がるのかも知れない。

 そう思うとついつい顔がニヤけてしまう。


「あ、何かスケベなこと考えてる?」


 万桜さんが、そう言って笑う。

 考えているような考えていないような。


「そんなことないよ。

 とりあえず、外にでるね……」


 俺は、そう言って外に出た。


「じゃ、石をいっぱい召喚するね」

 万桜さんが、そう言うと空から石が沢山降ってきた。


「万桜さんって召喚士なの?」


 俺がそう言うと万桜さんは、こう答えた。


「魔王だよ」


「へ?」


 たぶん、聞き間違いだね。


「万桜は魔王なの……

 いうこと聞かない子は食べちゃうぞー

 がぉー」


 万桜さんが、そう言ってライオンのポーズをした。

 ライオンのポーズっていまいちわかんないけど。

 がおーって顔だ。

 うん、そんなの。

 ちょっと可愛い。


「そうなんだ?」


 俺は、思わず笑ってしまった。


「あー。信じてないでしょー?

 私は、こう見えて魔王の娘なのよ?


 赤い目の魔王って言えばそこそこ名の知れた魔王なのよ。

 私は、そこの娘よ。

 上には、7人の姉と兄がいるのよ」


「赤い目の魔王……

 ルビーアイ?」


 なんかそんな名前の魔王なら聞いたことあるぞ……

 こっちの世界のアニメの魔王だけど……


「ルビーアイなんてかっこいい名前じゃないわ……

 赤い目の魔王。

 目が赤くてとっても強いの」


「そっか」


 確かにあのアニメでもルビーアイは強かった。


「そんなのいいから早く石を投げてよ」


 万桜さんが、急かすのでとりあえず適当に石を投げてみた。

 万桜さんの目を見ながら……

 こんなので家とか壊れたら笑いものだね。

 そう思っていた。

 だけど、現実は違った。

 たったひとつの石で地面に大きな穴が開いた。


「流石、運が10000じゃな」


 軍鶏爺が遠い目で言う。


「確か、クリティカル率が高いんだったよね……」


 亜金君が、少し引いている。


「流石、異世界から来た人は違うわね……

 石ころがコメット並みの威力とは……」


 万桜さんの目がキラキラしてる。


「もしかして、俺って凄い?」


 俺は、もう一回石を投げてみた。

 しかし、木に当たったけどなにも変わらない。


「先ほど言ったじゃろう?

 お主はゴミが得意武器じゃと……

 石ころもゴミじゃ。

 じゃが、武器や凶器じゃと思った石はタダの石じゃ」

 軍鶏爺が、そういった時。

 万桜さんが肩をどっと落とした。


「だよねー。

 世の中そうは上手くいかないわよね」


 まぁ、そうだよね……

 なんか、俺まで泣きたくなってきた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る