第9話す
研修
店内は真っ暗だった。そしてユーロビートやトランスが大音量でかかり人の声が聞こえにくい。
そこかしこにブラックライトが点灯し、入ってすぐに大きな水槽があり、色とりどりの熱帯魚が怪しげに泳いでいた。
ふと右を見ると女の子が10人ほど座っていた。
店員らしき人がやってきて、芸名を何にするか聞いてきた。
またか、と思いながらも偽名を考えるのに慣れた彩香なレイナと答えた。
1番恥の席に座った。隣で女の子2人が仲良さそうに話している。
お二人は長いんですかぁ?
相変わらず何も考えずに質問をする。
そのうちの1人が軽く笑い、
マッサカ〜!私達も最近入ったんだよ!
今日からだよね、よろしく!
この人たちもティッシュに騙されたんだ!
やっと気付き、蔑んで見ていた女の子達を観察してみた。
1人の女の子が店員に
このグッピー元気ないよ。大丈夫かな?
そう言いながら、本当に心配そうに水槽の前に立っていた。色白の可愛い子だった。
その時、
ライムさん5番お願いします。
店内中にその放送が流れ、あの水槽の前の女の子が暗闇に消えていった。
それからほどなく、店長に呼ばれ「研修」を受けた。普通のアルバイトの研修とは違い、10分程度だった。
暗闇を、歩いていく。
よく見ると縦10数列、横4列のボックス席があり、一つ一つのボックスに男女がいるのが見えた。皆キスだのフェラチオなど激しく絡んでいた。大音量のトランスがかかっていたので、既に40人ほどのプレイが行われていることに気付かなかった。
20メートルほど進み、カーテンを開けると、給湯室のような狭いバックルームがあった。そこで、適当な制服を選び、来た。コスプレをするのはほぼ初めてだったが、高校を卒業してから1年しか経っていなかったので、そこまでは抵抗がなかった。ただ、ものすごくミニスカートだった。
その後、おしぼり4本を持ち、空いているボックスに店長と座る。
店長が立ち上がりベルトを外し、ズボンを脱ぎ、立派な竿がそそり立つ。そしてまた座る。
おしぼりを何本でもいいから使って吹いて、あとは音楽に合わせてフェラチオするだけでいいからさ。
あまりに唐突で、しかも衛生的に心配な説明を受けて狼狽した。
おしぼりで拭くだけなんて、、ムリ、、
しかもフェラも当時は抵抗があり、経験が少なかった。
恐る恐る、おしぼり3本を使い竿を吹いた。
あとは、がむしゃらに頬張った。
しかも時間内にイカせないといけない、、
手コキも交えてなんとかイカすことができた。
幸い、バックルームに戻るとイソジンがあり、口を濯ぐことができた。
それから潔癖症になりピンサロを止めてから何年もイソジンが欠かせなくなった。。
初めての客は裾の広がったズボンを、履いた土方だった。1本3000円だから仕事着で気楽に来れる。脱ぐと、ブラックライトでチンカスが光り、明るいところで見るとどれだけ汚いか想像しただけで吐き気がした。おしぼりを多めに持って来ていたので4本使った。臭いわ変な味がするわ最悪な客で、終わったら、すぐにバックルームに駆け込んだ。
バックルームに、入ると女の子5人と従業員がいた。そこにいたメンバーはこういったら、なんだが、みんなキレイ系の女子大生っぽい子が多かった。この子たちも私と同じ境遇の人だと思うと哀れに思えた。
その中に従業員いわくナンバー1の子がいた。
その子は稼いだお金を趣味のスキューバダイビングや海外旅行に使っているらしい。風俗で働く子を卑下していた私にとっては目から鱗の事実だった。
そして、どんな世界でも頑張っている人は輝いて見えた。
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