第2話
事務所
そういや、名前聞いてなかったね。
彩香です、、
オレ、サトシよろしく!
代々木駅から徒歩2、3分の事務所。エレベーターで3階に上がる。
着くと、サトシは年配の男と何やら話し、消えていた。
事務所は予想外に綺麗で、女性の事務スタッフも3名ほどいた。あと8名は少し強面の男もいたが、皆イケメンだった。
私はオフィス隣の面接室と呼ばれる所に通された。イメージだと、いきなり裸にでもされるんじゃないかと内心ビクついていた。
エムプロモーション社長の山岸です。よろしくお願いします。
とにこやかに笑うのが先ほどの年配の男性だった。
業界ではエムプロと言われているらしい。
面接室に入るまで見ていたのに気づいていたのか、
ここ、色々、写真集あるでしょ。今有名な浅川ミキもこの事務所なんだよ。
君は何が希望?
社長の話によると、ここはAV以外にも、ちょっとしたグラビアアイドルやエキストラなどの子も在籍していて、AVでは日本で一二を争う芸能事務所だとか。
あ、AVって言われて来たの。興味ある?
NGなものある?スカトロとかSMとかアナルとか。
いわゆるAV業界で3大と言われているもの。
性の知識に自信があったものの、高校出たての女の子にはかなりヘビーな内容だった。これらはすかさず、NGを出した。
芸名何にする?
偽名は昔から使っていたものがあるが、ふと、最近大学で仲良くなった友達の名前がよぎった。
アユミでお願いします。
これから何年もこの偽名をAV以外にも使うことになるとは思いもよらなかった。
これらの事務的な内容で終わり、すぐに2階に下がった。二階では女性のメイクさんが待ち構えていた。そう、さっそく宣材写真を撮るのだ。
会話上手なメイクさんで、私の緊張をほどき、楽しくメイクしてもらった。
ここにチーク入れるとより可愛く見えるよ。
本当にやさしかった。今思うと、私の就職活動のきっかけでもあったのかもしれない。
さっそく撮影が始まった。
初めてのレフト板、撮影機材に心躍った。しかも無料だ。金銭的に恵まれていなかったわたしにとってはタダほど嬉しいことはなかった。
数日後、マネージャーの1人の高橋さんからメールが来た。
あゆみさん、4月25日「キープ」でお願いします。
キープとは確定ではないが、1日空けとけという意味。さらに普通の仕事と異なり、定時などなく、テッペンつまり24時終わりは当たり前の世界でもあり、バラシで撮影自体がなくなることもある。
業界人ぽいメールをもらい、いくらかテンションが上がっていた。
今回は「決定」となり、簡単なエキストラということもあり、宣材写真だけで、面接などはなかった。エムプロではマネージャー数人が数百人の女優を掛け持ちしていた。今回のマネージャー高橋は当日まで内容さえ、時間はもちろん詳細は教えてくれなかった。
そう、何も知らされていなかった。
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