第七章 超人覚醒



   1



「貴様ら、俺にこんなことしてただですむと思うなよ。俺は八頭蛇神会の若頭、蓮見だ。拷問ごときでぺらぺら歌うと思ったら大間違いだ」

 蓮見が精いっぱい虚勢を張っている。

 ここは毛たちの地下アジト。たいしたところじゃないが、出入り口はカモフラージュされ、警察がくる心配もない。とうぜん窓もなく、むき出しのコンクリートの壁と天井、そんな中で蓮見は素っ裸に剥かれた状態で万歳し、その両手をロープで縛られ、天井のフックからつり下げられている。まるで精肉場の豚肉だ。

 鍛えぬかれたその肉体には鞭によるみみず腫れがいくつもついていた。もちろんつけたのは毛だ。まだなにひとつ質問していないが、とりあえず痛めつけておいた。こっちがどれだけ残虐でおまけに本気なのかを見せつけておく必要がある。そもそも極道のくせにみょうにかっこつけたこの男が、毛の神経を逆立て、必要以上に冷酷にさせる。

「そんな無様な姿になっても、かっこつけたがるんだな、あんた? ひょっとしてナルシストか?」

「黙れ! くそ、くそ。下ろしやがれ」

 蓮見は近づいた毛に向けて必死に蹴りを飛ばそうとする。しかしその脚が上がることはなかった。なぜならその両足首には鉛のかせがはめられている。最初のうちこそ、それでも蹴りを繰り出せたが、疲れきった今、もはやその力はない。

「どうした? 俺を蹴りたいんだろ? こうやって」

 毛は蓮見の足首を掴むと、引っ張り上げた。その足首を自分の首筋に持ってくる。

 回し蹴りが首に決まったかのようなポーズ。毛はそのまま親指をアキレス腱に突きたてる

「ぎゃああああ」

 蓮見の悲鳴が響く。とはいっても、アキレス腱を切断したわけじゃない。ただ、痛めつけただけだ。

「おい、毛、遊ぶな。さっさと吐かせろ」

 横にいるスンがいった。

 このプロレスラーのような体格の男は、黄の右腕といわれるやり手で八極拳の達人だ。もっとも素手の真剣勝負で優劣を決めるのは好きらしいが、拷問には興味がない。やつにとっては任務は遊びではなく、楽しむものでもないらしい。暴力も、任務に有効かどうか、あるいは自分が強いかどうかが重要なのであって、動けないやつに対する一方的な肉体の破壊など意味がないと思っているようだ。

 毛はちがう。素手の真剣勝負もじつはかなり好きなのだが、それは自分が強いことを証明したいわけではない。殺し合いの緊張感こそを愛しているのだ。つまり、殺るか殺られるか。だから、相手が強いほうが燃える。しかしその反面、悪いことに毛は抵抗できないやつを一方的にいたぶるのも嫌いじゃない。むしろ大好きだ。

「ふん、つまらないな、孫は。もっと楽しめばいいだろう? なあ、毛」

 もうひとりのリュウは一見女のように美しい顔をしているが、毛以上に残虐で拷問好きだ。蓮見はなんだかんだいって色男だし、脂肪分が少なく筋肉が浮き出ているような肉体をしている。そういうのをめちゃめちゃにするのが劉の好みだ。べつにゲイではないはずだが、女より男、それも美形の男の拷問が好きらしい変わったやつだ。おそらく強度のナルシストで、自分よりもかっこをつけたような男はめちゃめちゃにしてやりたいという欲求にかられるのだろう。

「ふふふ。君も毛よりも僕に拷問されたいだろ?」

 そういって劉は唇を舐めると、氷のような流し目で蓮見を見る。

「なにが……なにが目的なんだよぉ。八頭蛇神会を潰したいのか、おまえら?」

 劉には危険なものを感じたらしい。虚勢を張っていた蓮見の顔色が変わる。毛は白状するチャンスを与えた。

「ふん。おまえらやくざなどに興味があるものか。俺たちが知りたいのはあの小娘のことだ」

「小娘?」

「しらばっくれるな。おまえが部下の雨園に命じて誘拐させた女子高生だ」

「いったいなんのことだ?」

「なかなか役者だね、この男。ほんとうに知らないって顔してるよ」

 劉が感心した顔でいう。

 すかさず劉は蓮見の脇腹に拳をぶち込んだ。

 蓮見は苦悶の表情でうめく。肋骨が数本折れたはずだ。

「殴ろうがなにしようが、知らねえもんは知らねえ」

 蓮見が叫ぶ。

「おい、しゃべるなら今のうちだぞ。この劉は俺とちがって限度を知らない」

「だが、知らないものは……」

「まだしらばっくれるのか? いいか、あのゴッサムという店が、おまえの組の息のかかったところだってのはわかってる。それは認めるな?」

「……認める」

「おまえの部下の雨園が事実上のオーナーだな?」

「そうだ。だが雨園は……べつに俺の部下ってわけじゃない。目に掛けてるだけだ」

「ふん、まあいい。そんなことはどうでもいい。おまえはゴッサムの連中を使って、綺羅きららを誘拐したな。なぜだ?」

「知らねえ。あいつらが勝手にやったことだ。たぶん、あの店で働かせる気だっただけだろう? ぎゃああああ」

 劉が毛にかわって蓮見を鞭打った。短い乗馬用の鞭が二回、三回と蓮見の背中に打ち下ろされる。ぶら下げられた傷だらけの肉体がそのたびに揺れた。悲痛な叫び声とともに。

 少し間をおいてから毛はふたたび質問をする。

「じゃあ、なぜCIAが助けに来る?」

「……CIA?」

「リンダ・スタンスフィールドと黒猫端午だよ。リンダがCIAなのはわかっている。端午については調査中だが、仲間なのはまちがいない。そいつらがなぜただの女子高生を守ってる?」

「俺が知るわけないだろう」

 いいおわるや否や、ふたたび叫び声に変わった。もちろん劉が鞭打ったせいだ。

「おまえが知らないわけはない。じゃあ、聞くが、俺がきららの家を張っていたとき、なぜ朴がやってきた?」

「朴?」

「ゴッサムのバーテンだよ」

「知らねえ。ほんとに知らねえ。ゴッサムはべつに俺が仕切ってるわけじゃねえんだ。バーテンのことなんて知らねえよ」

 また蓮見の声は叫び声に変わる。

 劉が狂ったように鞭を振るった。

「鞭はあきたよ。こいつ案外打たれて喜んでるんじゃない?」

 劉が詰まらなそうにいう。

「こういうかっこつけ男は、痛みに耐える自分がかっこいいと自己陶酔してんだよね。やるならもっと屈辱的なことをしないと」

「な、なにを……」

 蓮見の目が脅えた。

 乗馬鞭のかわりに劉の手に握られたものは、短めの角材だった。といっても十センチ角の建設現場で使うようなものではなく、一辺の長さが二センチほどの細いものだ。

「決まってるだろ? これをあんたのケツの穴の中にぶち込むのさ。丸くないからぐりぐりやれば血だらけになるよ」

「じょ、冗談じゃねえ。やめろ」

「だったら毛の質問にちゃんと答えなよ。答えないなら、これであんたのアナルを犯して、ついでに写真撮って、日本中の極道事務所にメールしてやるよ」

 蓮見は蒼白になった。そんなことをされれば、もう二度とでかい面をして街を歩くこともできない。

「ほ、ほんとうになにも知らねえんだ。嘘じゃねえ。嘘じゃねえって」

 蓮見は涙目になった。劉はそれを見て、大喜びだ。

「質問の答えがちがうな。そんなにやられたいんだ。案外期待してんじゃないの?」

「やめろ。頼む。やめてくれ」

「ひゃはははははは」

 劉が棒きれを手に、楽しそうに踊りはじめた。

 毛は内心呆れつつも、蓮見をにらむ。

「おい、最後のチャンスをやる。正直に知ってることをぜんぶ話せ」

「だからっ、……きららとかいう女のことなんてなにひとつ知らねえ。そんな名前きょうはじめて聞いた。端午とかいうガキも同じだ。ましてやCIAの女なんて知るわけもねえ。嘘じゃねえ。頼む、信じてくれ」

「けけけけ」

 劉がじつに楽しそうに棒きれを持ったまま蓮見の後ろに回る。毛はそれを手で制した。

「じゃあ、質問を変えよう。おまえらなんで北朝鮮の工作員とつるんでる?」

「き、北朝鮮だ?」

 蓮見はこれ以上ないくらい素っ頓狂な声を上げる。これが演技ならたいしたものだ。

「さっきいったバーテンの朴。こいつが北の工作員だってことはお見通しだ」

「なにい?」

「おいおい、それまでしらばっくれる気かよ? まさか知らねえで使ってたとかいうなよな」

「知らねえ。ほんとだ。なんで俺たちがそんなヤバいやつを使って、好きこのんでCIAに目をつけられなきゃならねえんだ? その朴とかいうやつに聞け。CIAが動いたのもきっとそいつのせいだ」

「いいかげんにしろ! 吐け。日本、アメリカ、北朝鮮がらみでなにかとんでもねえことが起きてるはずなんだ。俺たちだけがそれを知らねえわけにはいかねえんだよ」

 毛は怒りにまかせて蓮見の胸に掌打をたたき込んだ。

 浸透した衝撃波のため、蓮見ははげしく咳き込みながら血を吐く。

「てめえが吐くべきなのは血じゃねえ。真実だ」

「毛、甘いよ。もうやっちゃおうぜ。写真に撮って脅したほうが効果的だよ」

「よし、やれ、劉」

「や……やめ……ろ」

「いやだね~っ」

 劉は後ろから蓮見の片脚を持ち上げた。

「ぎゃあああああああああ!」

 室内に響き渡る蓮見の絶叫。その肛門からは角材のしっぽが生えている。その先端は劉に握られ、ぐりぐりとまわしたり、前後にピストン運動をしたりしていた。

 そのとき蓮見のなにがむくむくと隆起した。

「ぎゃはははは。こいつ女たらしのナルシストかと思ってたら、ホモじゃねえか。それともマゾか?」

 劉はそれを見て涙を流しながら喜んだ。もっともサディスティックな血がさわいだのは毛も同じだ。

 毛はスマホを取りだし、カメラを呼び出す。こいつは足のつかないプリペイドだが、デジカメの機能はかなり上等らしく、画質モードを上げればかなり鮮明な絵になる。

 蓮見の無様な姿を何枚も写し取った。

「さて、ケツに棒を突っ込まれ、おったててる無様な姿を、全国の極道のみなさんに送られたくないだろ?」

「し……知らねえ。ほんと……なにも知らねえんだ」

 蓮見は自我が崩壊したような顔をしていた。かっこつけの色男には、指を詰めるよりはるかに効いたらしい。

 しかしそれでも否定する。

 劉は棒きれから手を離すと、毛のそばまでやってきた。

「毛、どう思う。こいつひょっとしてほんとうになにも知らないんじゃないの?」

「そんな馬鹿な」

 そうはいったが、半信半疑だ。

「ふん。茶番だったな、毛。なんて黄隊長に説明するんだ?」

 拷問には加わらなかった孫が嫌味をいう。

 どういうことだ?

 たしかに、蓮見がここまでされてなにもいわないのは、ほんとうになにも知らないか、あるいはどんな犠牲を払ってでも守らなければならない重大な秘密かということだ。

 正直、蓮見にそこまでの根性があるとは思えない。

 さらう相手を間違えたのか?

 毛は自分のうかつさを呪った。

 つまり、八頭蛇神会はなにも知らないのか?

 少女をさらったのは、雨園の勝手な行動? ならば雨園をこそさらうべきだった。

 もっとも雨園もいっしょにさらうにしても、刀を持っているときは意外に手強く、さすがの毛にして素手では簡単に捕獲できなかった。警察に踏み込まれても面倒だから、あの場合はああするしかなかった。

 いや、待て。

 毛はさらに考える。

 それも変だ。ただのチンピラ高校生が俺たちすら知らない国家の重要気密を知っているはずもない。

 ならば、雨園はたんに欲望のためにあの女をさらった?

 なぜ北の工作員と、CIAがそこに絡む?

 あの小娘にいったいどんな価値が?

 ドアが開き、黄が中に入ってきた。

「どうだ、毛。吐いたか?」

「いえ、まだです」

 毛は直立不動になる。孫と劉はとばっちりを食ってたまるかと、やや離れたところで同じように直立不動になった。

「その男はなにも知らないようです。毛の勇み足です」

 孫が勝手なことをいう。

「おまえの探っている真実とやらは、ほんとうに価値のある情報なのか?」

 長身の黄が毛を見下ろしながらいう。その鷲のような大きくするどい目が、かすかに怒りの光が宿っているような気がした。

「間違いありません。アメリカも北朝鮮も必死なのですから」

 黄がいらだっている。毛にだまされ、くだらないことにつき合わされたと勘ぐりはじめたらしい。毛としてはそんなことで信用を失いたくない。この男は一見任務に忠実な機械のようでいて、部下を非常に大切にするため、上からも下からも信頼は厚い。しかし、その一方で怒らせると心底恐ろしいのだ。

 まあ、いい。こうなったら、あの小娘に直接聞けばいいさ。

 それは北やCIA、ついでに日本の警察を相手にすることになるかもしれないが、仕方がない。

 そのとき、黄のスマホが鳴った。仲間の情報屋かららしい。やりとりをする黄の顔がくもる。

「ほんとうにただごとじゃないようだな。北が少女の乗っている警察の車を襲った。しかも軍隊を使って」

「なんですって?」

 毛は驚きながらも狂喜した。やはり自分の考えはまちがってなかった。あの小娘はとんでもない秘密を握っている。

 奪い合いだ。そして殺し合いだ。これから起こることを考えると、得体の知れない快感が体からわき起こってくるのだった。

 殺し合いこそ、毛の生き甲斐なのだ。

「行くぞ」

 黄がひと言命令する。

「こいつは?」

 孫が蓮見を指した。

「殺せ」

 そのひと言で孫は電光石火の動きで蓮見のそばまで移動し、肘打ちを顔面にぶち込んだ。

 蓮見の頭蓋骨が陥没し、噴水のように血が飛び散った。

 それを背に、三人は黄のあとに続く。



   2



「きゃああああ」

 きららは口から悲鳴が迸るのを止めることができなかった。

 フロントガラスには雨だれのように細かいひびがいくつも走る。

「心配するな。防弾ガラスだ」

 隣で伊藤が叫ぶ。たしかに弾はガラスを貫通してこない。そういう仕様の車? つまり、これは予期されていたってことなのか?

「それにしてもアサルトライフルだと? 軍隊かよ」

「まずいっす。ライフル弾連射されちゃ、ガラス持ちません」

 若宮はそう叫び、ギアをバックに入れると、アクセルを踏んだ。

 真後ろから衝撃を感じる。後ろの車のバンパーにぶつかったのだ。

 前のトラックの幌の中からは、ボンネットに乗ってるふたりと同じような恰好をした兵士が数人飛び出してくる。もちろん、全員、そのアサルトライフルとかいう両手でかかえる長い銃を持っていた。

「若宮、なんとかしろ」

「任せてください」

 若宮は車を急発進させながら、ハンドルを右に切る。

 車の左角が前のトラックにぶち当たった。さらにとなりの車線のセダンを横から押しのけるような恰好になる。

「ごめんなさ~い」

 きららは思わずあまやった。しかし、ぶつけられたセダンの助手席の窓が開くと、中にいた男は、至近距離から拳銃を運転席の窓に乱射する。

 となりの車も敵の仲間だったらしい。

 もっともその弾丸は防弾ガラスを貫くことはなかった。

「パワーはこっちが上なんだよね」

 若宮は一度バックすると強引につっこみ、敵のセダンをはね飛ばした。そのまま反対車線に回り込む。

 運転席前のフロントガラスは穴こそ開いていないが、ひびのために視界がほとんどない。若宮は助手席のほうから前を盗み見るようにしながら、運転した。

 真後ろから銃声。それも連発で。

「だいじょうぶだ。完全防弾。タイヤだってパンクしねえ」

 たしかに、後ろのガラスも円状のひび割れはつけども、弾は入ってこない。

「でも、こっちからも攻撃できないんじゃ?」

 きららがそういった瞬間、外にいた兵士のひとりが、銃声とともにくずれおちた。

「後ろに護衛がいる」

 知らなかったのは、きららだけで、武装した警察の車が後をつけていたらしい。

 だが撃たれた兵士はすぐに立ち上がった。防弾ベストをつけているのだろう。

 兵士たちは走って追ってくる。彼らを乗せていたトラックもUターンしてこっちの車線に回り込んできた。

「若宮さん、もっとスピード上げてよ」

 そういって、前を見ると、両車線とも車がつまっている。とまるしかない。

「護衛部隊、なんとかしろ」

 伊藤が後ろから運転席の無線をつかみ、叫んでいる。

 あたりから無数の叫び声が上がっている。見ると、歩行者はみな逃げまどい。前につかえた車からは、止めたまま人が飛び出すと、そのまま歩道にかけ込んでいって。

「そんなことされたら、信号変わっても動かなくなるじゃない」

 無人の車はただの障害物。それも両側の車線に、ご丁寧にきれいに隣り合わせにならんでいる。それも一台や二台じゃないようだ。追いぬくすき間などありはしない。

 敵のトラックはこっちの車をサンドイッチにせんとばかりに猛スピードで迫ってきた。

 若宮は一瞬バックしたかと思うと、ギアを入れ替えハンドルを右に切る。そのまま反対車線に飛びこんだ。

「ひゃああああああ!」

 反対車線だから当然車は前から来る。若宮は車内にあったパトランプを点灯させ、華麗なハンドルさばきで、対向車のすき間を縫って突き進んだ。

 ほとんどハリウッド映画のカーチェイス状態。

 きららはとても前を見ていられなかった。もっとも後ろの光景も、けっして心臓にいいとはいえない。

 追っ手のトラックは、よけそこねた対向車を粉砕しながら、猛スピードで追撃してくる。

 見かけはただのトラックでも、中身はほとんど装甲車らしい。

「なんなの、なんなの、あいつら? なんでこんなことするの?」

「俺が知りてえ!」

「つかまっててくださいよ」

 前から若宮の声。

 ふと前を見てみると、一台の車が止まっていた。逃げもせず、追い越し車線に。

 ただしサンルーフからは助手席の男が顔を出し、しかもこっちにライフルを向けていた。

「うひゃああああ!」

「心配すんな! ありゃ、味方だ」

 伊藤の叫び声に、目をこらして見てみると、たしかにその車はパトランプを点灯させていた。つまり、ねらいは後ろのトラック?

 だけど、これじゃ、ぶつかるぅ。

 そう思ったとき、若宮はハンドルを切ると、もともといた車線に戻った。

 ただの障害物と化していた一連の無人の車を追いこし、目の前に空間が広がっている。

 その瞬間、待ち伏せしていた警察の狙撃手はライフルを撃った。もちろん、追っ手のトラックに向かって。

 いきなり爆発が起こる。それも、たったいま、サンルーフからライフル狙撃をおこなっていた警察の車だ。

 火柱が高々と上がり、爆風でこっちの車体が横にぶれる。

「やりやがったな、あのクソ野郎ども!」

 伊藤がどなりながら、ふり返る。

「な、なんなのよぉ!」

 きららもつられて後ろを見た。

 追っ手のトラックの運転席のあたりで、フロントガラスにひびが。しかし運転手が生きているところを見ると、こっち同様、防弾ガラスを使っているらしい。

 しかも、荷台の幌から兵士が上半身を出していた。肩になにやら大砲のようなものを担いで。

「ロケットランチャーだと? 本物の軍隊かよ? 俺たちと戦争する気か?」

 伊藤がすっとんきょうな声を上げる。

「うわっ」

 今度は若宮の叫び声。

 思わず前を見ると、こっちの車線に対向車が数台躍り出てきた。

「な、なに。敵?」

「いや、今の爆発で後続車が反射的にハンドルを切ったんだ」

 若宮はそういいながら、ハンドルを右に左に切り、コントロールを失った対向車をかわす。

 目の前を暴走車が横断し、歩道ごしにビルの一階にあるショウウインドウに突っこんだ。べつの車はごろごろと横転して通りすぎていく。若宮はそれすらも切り抜けた。

 もうこっちに飛び出してくる車がなくなったとき、対向車線は二車線とも玉突き事故で大渋滞になっていた。

 もう目の前に迫った交差点の信号は赤。半端じゃない量の車がもうスピードで前を横断している。

 後ろを見ると、とうぜんトラックが迫ってくる。もちろん、ロケットランチャーとやらを担いだ兵士付き。

「ど、どうすんのよ!」

「つっこむしかないでしょう」

 若宮はじっさい赤信号でとまらなかった。ほとんどブレーキもかけずに横断する車の流れの中に強引に突っこむと、ハンドルを左に切った。タイヤを派手に鳴らし、わずかに外にふくらみつつも左折に成功。そのまま前に進む。

 ドーンと真後ろで大きな音がした。

 見ると、トラックもしっかりついてきてる。今の音は強引に他の車にぶち当て、はね飛ばしながら左折したせいらしい。ふっとんだ車が他の車にぶつかってひっくり返っているのがわかった。

「応援頼む。やつら戦争屋だ。半端じゃない武器……、いや、持ってるのは兵器だ。アサルトライフルにロケットランチャーで完全武装してる。SATがいるぞ。いっそ自衛隊でも呼んでくれ!」

 伊藤が無線にどなりつけている。

「ねえ、この車って特別頑丈なんだよね? ね、そうだっていってよ!」

「ああ、対狙撃者用の特別仕様車だ。ライフル弾だって通さねえ。だが、ロケット弾の直撃はどうかな?」

「どうなの?」

「さあってな。なにせロケット弾ってのは、ようは小型ミサイルのことだ」

 それを聞いてきららは絶望的な気分になった。

 伊藤の目もそんなことになったら終わりだといっている。

 前のほうがつまってくる。また信号につかまったのか?

 若宮はハンドルを左に切る。一方通行の狭い路地に入りこんだ。さいわい、前に車はいない。

「よし、いいぞ。このまま逃げ切れ」

 伊藤がそういった数秒後、前方十数メートル先にばらばらと人が現れた。さっき、トラックから降りたライフルを持った兵士たち。三人はいる。

 全員、銃をこっちに向けた。

「かまうことはねえ。はね飛ばせ」

 伊藤がどなる。

 若宮はとうぜんとばかりにアクセルを踏んだ。

 ここぞとばかりに飛んでくる弾丸の雨。しかし防弾製のフロントガラスはなんとかそれの侵入を拒んだ。

 敵のひとりがなにやら金具のついた鉄製のボールみたいなものを手にする。

「まずい。手榴弾です」

 若宮が叫ぶ。

「なに? とまるな。ぶち当てろ!」

 だが、敵兵はぼうっと突っ立てるわけもなく、建物と建物のすき間に身を隠す。

 それを通りすぎて一瞬間をおいたあと、爆発音とともに車体の後ろが浮き上がった。

 な、なに?

 なにが起こったのか、よくわからなかった。ただ、車が飛んでいる。なのに前に見えているのは地面だ。

 手榴弾の爆発で車がふっとんで、前方に回転しているらしい。その直後、ものすごい音とともに、屋根がすこしへこんだ。

 天地が裏返っている。

 きららは車が裏返ったことにようやく気づいた。

「だ、だいじょうぶか?」

 となりで伊藤が叫ぶ。

 とりあえず怪我はないようだ。どこにも痛みは感じない。

「なんとか……」

 そういったとき、フロントガラスの前に、ひとりの兵士が身をかがめてロケットランチャーを向けていた。それを担いで歩いてきたらしい。その男の他にも銃を構えた男が数名。まさに絶体絶命だ。

「降りろ。その少女を渡すなら、殺しはしない」

 ロケットランチャーを構えた兵士がいった。



   3



 端午はリンダとともに、エレベーターで地下に向かう。

「きららの居場所は正確にわかるのか? 電波を追うにしても、あいつのスマホは雨園にうばわれて、今ないはずだぞ」

「だいじょうぶ。発信器つけてるから」

「え、いつのまに? っていうか、そういうのはかえって敵に電波を拾われて危ないって……」

「もう、他の国のスパイ連中に目をつけられてるんだから同じことよ」

 まあ、たしかにそうだ。すでにきららはなぜか、北朝鮮と中国のスパイのターゲットになっている。

 リンダはいつの間に、きららにそれをつけたのか、うだうだと説明したりはしなかった。

 エレベーターを下り、地下駐車場に出るドアの前でリンダは無線に向かってつぶやいた。

「ハック。敵の位置は?」

『リンダたちが乗ってきた車の陰に隠れてる。あと分散してそころ中に』

 ハックの声は端午にもイヤホンを通じて聞こえた。

「行くよ。準備はいい?」

 端午は学ランの両ポケットに入れておいたグロックを握る。ハタから見ればポケットに手をつっこんだ高校生にしか見えないはずだ。

「準備は態勢だけじゃだめ。重要なのは心の準備。これからはじまるのは殺し合い。オッケー?」

「わかった」

 今度こそ、ほんとうに人を殺す。じゃないと殺される。

 リンダは抜いていない。いつでも抜けるのだろうが、相手に拳銃を持っているところを見られたくないのだろう。そのまま駐車場に出ると、先頭に立って車に向かった。

『あいつらのねらいはたぶん蓮見を取りもどすこと。だったら、いきなりは撃ってこないはず。最初は油断させて全員いぶり出す』

 リンダのつぶやきがイヤホンを通じて聞こえた。たしかにいきなり撃ち合いを始めれば、残りの連中が車の影に隠れ、面倒だ。

 つかつかと無防備に進んだリンダは、車の鍵をさし込み、ドアを開けようとする。

 車の陰からいきなりひとりの男が飛び出した。そいつは後ろからリンダの左腕をねじ上げ、そのままボンネットに顔を押しつけると、右手でナイフをリンダの首筋に当てる。

「おうっと、そこまでだ」

 そいつはスキンヘッドのごつい男で、服装もスーツをやくざ風に着崩し、いかにも喧嘩慣れしていそうだった。

「なんだおまえら?」

 わかっていたが、端午は叫んだ。油断を誘うためだ。

 そんなことも知らず、そこら中からわらわらと似たようなファッションの男たち十数名がゴキブリのごとく湧き出てくる。

 その中のひとりに雨園がいた。日本刀を持ったまま、つかつかとこっちに歩いてきた。

「よう、端午。それに謎の外人姉ちゃん。おまえらのおかげで俺は日の当たる場所に出られなくなった。その落とし前をつけたいところだが、その前に返してもらおうか」

「返す? なにを?」

「うちの若頭の蓮見さんだよ」

「蓮見?」

 なんで俺たちが?

 一瞬、疑問に思ったが、謎が解けた。ようするにこいつらは端午たちが蓮見をさらった張本人だと誤解しているのだ。おそらくリンダの正体も知らずに。

「とぼけんじゃねえぞ、おらぁ」

 そばにいたパンチパーマがドスを片手にすごむ。

「俺たちは関係ない。急いでんだ」

「関係ない? 事務所を襲ったのは顔をかくした四人組だったが、どいつここいつも不思議な技を使った。空手というより中国拳法だったぜ。おまえ、ゴッサムで空手や合気道にまざって、中国拳法使ってたよな?」

 そういえば、きららの護衛を頼まれた私立探偵も中国拳法の技で殺されていたはず。やはりやつらは北朝鮮じゃなくて中国のスパイか?

「まあいい。こいつらを乗せろ。話は組で聞く」

 オールバックのひとりだけ高級そうなスーツを着た中年男が、すこし離れたところでたばこを吹かしながらいう。こいつがリーダー格らしい。

 ワゴン車が近づいてきた。リンダの車の前に止めると、スライドドアが開く。そのままリンダを連れこむ気らしい。

「乗れ」

 スキンヘッドがリンダの体を起こした瞬間だった。拳銃の炸裂音に引き続き、空薬莢がコンクリートの床に跳ねる音。そして男の絶叫がひびいた。

 リンダの右手にはグロック。

 スキンヘッドが視線をワゴン車に移した隙をねらって、スカートの下に隠し持った銃を抜いたらしい。

 スキンヘッドはわめきちらしながら、片脚で跳びはねる。上げたほうの足から血が噴き出していた。

 両手の自由になったリンダは迷わず、そいつの額を撃ち抜いた。

「あんたらみたいな馬鹿にかまってるひまはないの」

 そういうと、唖然と見守っていた連中に向けて引き金を引く。

 小気味よい乾いた音がみっつ鳴りひびくと、前のほうにいた男たちがばたばたとその場に倒れ、動かなくなる。

「この女を撃ち殺せ!」

 オールバックのリーダー格が叫んだ。

 すこし距離を置いて端午たちを囲んでいた連中がふところから拳銃を抜く。

 リンダはまず、リーダーを撃ち殺した。

 そのまま走る。囲まれている以上、どこにも身を隠せない。

 端午は反射的に銃を抜くと、反対方向に向かって走った。

 ねらいを分散させるため。走るのは、射撃訓練をさほど受けていない連中は動く的に、まず当てることができないからだ。

『リンダ、表に待機してた連中が応援に回った』

 ハックの声が響く。さらに右だ、左だと敵の位置を的確に指示してくる。どこに隠れていようがまるわかりだ。

 そこら中から銃声が鳴る。やくざどもの怒りと恐怖の入り交じった叫び声がひびく。

 なぜか怖くなかった。そのかわり、いらついた。

 くそ、くそ、くそ。

 こんなやつらにかまっている時間は一秒だってない。一刻も早く、きららの元に行かなくては。

 飛んできた弾丸が端午の足もとのコンクリートを砕く。

 こっちに銃口を向けているやつがひとり。そいつがさらに引き金を引こうとしている。

「邪魔をするな!」

 この瞬間、端午の頭は空っぽになる。

 端午はそいつの顔面に弾丸をぶち込んだ。

 そいつはがくんと膝からくずれながら、のけぞる。血を噴き出しながら。

 真後ろから殺気。

 とっさに横に跳ぶと、そのままくるりとターン。引き金をしぼる。

 ひとりふっとんだ。

 野獣のスイッチが入った。人間の感情を捨て、小脳に刻まれた体の記憶と、本能にゆだねる。

 あっちからも、こっちからも、殺気が目に見えるように伝わってくる。

 端午はそれに反射的に反応した。もう、自分の意思とは無関係に、体が勝手に動く。

 腕を体の前で交差させた。そのまま同時に左右の引き金を引く。

 炸裂音とともに、左右の殺気がひとつずつ消えた。

 そのまま走る。ジグザグに跳びながら。

 やつらの弾など微塵も当たる気がしない。

 今の端午にはハックの指示はもういらない。むしろ邪魔だった。

 相手がどこにいようと、その姿が見えるように感じられたし、弾があらかじめどこを飛ぶかまでわかりきっていた。すくなくともそんな気がした。

 車の陰に隠れようと、ガラス越しに貫く。

 それが無理ならば、車の燃料タンクをぶち抜いてあぶり出す。

 悲鳴と爆煙。炎を包まれながら逃げまどう標的。

 あたり一面に充満するガソリンの芳香。それに硝煙の匂いがミックスされる。

 いきそうだ。

 端午は踊る。うす暗い駐車場というステージを。

 ステップをふみ、ターンし、ジャンプし、ときには空中でコマのようにスピンしながら。

 そして、引き金を、引く。引く。引く。

 そのたびに、断末魔の咆哮が聞こえる。

 キンキンカンカンと、リズミカルになる空薬莢とコンクリートのシンフォニー。

 それはまるでロックだ。

 自分の動きが音を奏でる。破裂音。金属音。爆発音。そして叫び声。

 生まれてはじめて、銃が楽器であることに気づいた。

 きっと俺と、俺の中にいるあいつが共鳴したんだ。

 端午は本能的に自分に起こっていることを理解した。

 今まで、端午の頭の中では、ふたつの脳が協力し合ってはいたが、それだけだった。それが今完全にひとつになり、べつのものに変化しつつあるのだ。

 それはほとんどエクスタシーに近かった。

 脳を快感で焼きつくしながら、端午は弾をばらまく。駆けめぐり、飛び回りながら。

 軽快なジャンプから地に降り立ったとき、もはやまわりから殺気は感じられなくなっていた。

 そのとき、ようやく端午の思考は、通常の黒猫端午のものに戻る。

 あたりを見まわすと、死体の群れが血だまりの中、転がっていた。さらに数台の車が黒い煙を吐きながら、まだかすかに燃えている。

 一瞬、目眩がした。くらくらと視界がまわり、頭の奥がじーんと痺れる感じ。

 よくわからないが、きっと副作用だ。端午とトムの脳が情報を共有し、混じり合い、高性能化したのを「覚醒」とするなら、その状態からふたたびもどったさいの「副作用」。まさに劇薬並みってことだ。

 倒れそうになるのを必死で堪える。

 立っているのは、端午と、リンダ、そして雨園だった。

 雨園は銃を持っていない。かわりに日本刀を振り上げてはいたが、その刃は小刻みにふるえていた。

「お、おまえらは、……化け物か?」

 その顔には、なぜ俺はこんなやつらに関わってしまったんだといわんばかりの後悔の念しかうかんではいない。

 もはや殺意も感じられない。端午は撃つのをためらった。

 しかし、銃声とともに、雨園はふっとぶ。

 そのまま倒れると、頭のあたりから床に血の水たまりが広がっていく。

 振り向くと、リンダの銃口から煙が上がっていた。

「ハック。敵は全滅?」

『駐車場の出口に一台。黒のベンツ。出口にねらいを定めてるはず』

「オッケー。急ぐわよ。きららには一応頼りになるのをひとりつけてるけど、そう長くは持たないかも」

 リンダはそういって車に乗るとエンジンをかける。

 端午は無言で助手席に乗った。

 リンダはカーナビを点灯させると、きららの位置を確認した。リンダは車を急発進させる。

「拳銃の予備マガジンはそこに入ってる。準備しておきなさい」

 走らせながら、座席の前にある物入れを指さす。見ると数種類のマガジンが無防備に放りこまれてあった。

 目眩が収まらない。それどころか手がびりびりと痺れだした。

 なんとか、グロック用のものを探し出し、交換しようとするが、ままならない。

 リンダはアクセルを踏むと、出口に向かった。

「おい、敵がいるって……」

「これ、防弾仕様だから安心しなさい」

 リンダの運転する車は、出口の上り坂を猛スピードで突っ走る。

 ハックの情報どおり、敵はそこで待ちかまえ、拳銃を乱射してきた。

 防弾ガラスだとは聞いていたが、そもそも敵の弾はフロントガラスに当たりすらしなかった。動揺しているらしい。

 リンダはそのままスピードを殺さず、敵の車にぶちかました。

 場所が空く。今度は急ハンドルで方向を転換。敵のベンツはなんとか持ち直して追ってくる。

 リンダはサイドウインドウを下ろすと、その瞬間、アクセルターンで百八十度まわった。

 正面にベンツの真横。リンダは左手でハンドルを操りつつ、右手で銃を掴んだ。運転手でも射手でもなく、ガソリンタンクをねらい、引き金を引く。

 通り抜けざまベンツは大炎上した。

 轟音とともに高々と天まで届きそうな火柱。

 車体は一瞬はね上がったあと、とろとろと惰性で走っていく。生きたまま焼かれる悪党どもの怨嗟の声を巻き散らせながら。

 車が遠ざかっていくおかげで、その有様を長々と眺めなかったのが不幸中のさいわいと呼べるほどだ。

 目眩がひどくなる。同時に頭の奥が、じんじんと痛んだ。手は露骨に震え、ぴくりとも動かなくなった。リンダはそれを見て、誤解したらしい。

「人を殺したことを後悔してるの?」

 正直にいうと、なにをいまさら? って感じだった。あの工事現場の訓練では、ペイント弾と知らせずに撃ち合いさせたくせに。

 もう、そういうことは感覚が麻痺していた。朴を撃ったときだって、完全に殺したつもりだったし、じつは朴が生きていたときも、ほっとしたより、ヤバいという気持ちのほうがはるかに強かった。

 きっと内心、人殺しの責任を、トムの小脳になすりつけてるところがあるんだろう。あるいはそんな手術をしたCIAに。

 おまけに正当防衛で、日本を爆発から救うという大義名分まである。

 だからもうそんなことで後悔なんかしない。

 いや、それどころか……、自分は殺しを楽しんでいなかったか?

 もともと自分の中に眠っていた獣が、トムの小脳と相まって、超人的な力を呼び起こしたんじゃ?

 だがそれは口にしなかった。かわりに報告をした。

「いや……、そうじゃない。目眩が……、ついでに手が痺れる。手術の副作用かもしれない」

「なんですって? だいじょうぶなの?」

「た、たぶん」

 数秒後、目眩と痺れは収まった。指も動く。

「とりあえず、だいじょうぶだ。収まった」

「なら、いいけど」

 リンダが心配そうにいう。

 たぶん、一時的なものだろう。手が痺れてから一分程度で収まった。

 だが、これが「覚醒」にともなう「副作用」だとしたら、さっきのように自分の脳とトムの脳がミックスアップしたあと、また似たような症状が出ないとも限らない。

 だが、泣き言をいってる場合じゃない。今は一刻も早く、きららの元にたどり着くことだ。

「気をしっかりしなさい。まだ何人か殺さないといけないかもしれないから」

 リンダはそういって、アクセルを踏むと外の道路に飛び出した。

 そうだ、終わっちゃいない。殺し合いはこれからだ。

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