第15話 激怒する

「手を挙げろ。さもなければ命はないと思え」


 ヘルメットをかぶった男が店内に響き渡るような大きな声で叫んだ。声からして男だ。もう片方も似たような体格をしているので男の二人組に違いない。二人とも黒い革ジャンとジーパンの組み合わせというありふれた服装をしている。手にはゴム手袋。そして、おもちゃを持ってこちらを脅していた。


「ふわぁ」


 弱弱しい可愛らしい声と共に、気の弱い母上は気を失った。倒れて床に落ちそうになった母上を隣にいたヒカルが支えてくれた。

 昔から、と言っても生まれてから数年ほどの付き合いだが、母上はハプニングやサプライズに弱い。驚かすと心臓が止まりそうなほど大きな反応をして、時として気絶する。だから、お化け屋敷などには絶対に入らない。

 今回の男たちによるサプライズは母上にとって驚きの許容範囲を大きく超えていたらしく、今はヒカルの胸の中ですやすやと眠っていた。


 おもちゃを持って我々を脅す男がこちらの動きに気づいた。


「失神したのか」男は舌打ちする。「お前たちは両手をあげるのはいい。そこで大人しくしていろ」


 このヘルメット男、意外と優しいのかもしれない。もし無理やり母上を起こそうとしていればこの男を八つ裂きにして灰も残らぬ高温で蒸発させるつもりだったので拍子抜けする。

 

 相手の目的が分からぬ以上、しばらく様子を見ることにする。


「おい、そこの女」

 

 ヘルメット男の片方がおもちゃを喫茶店の給仕の女性に向ける。そして、大きなカバンを投げた。小さな子供が一人くらい余裕で入りそうなそのカバンは給仕の足元へと落ちる。

 はい、と顔を引きつかせながら給仕は悲鳴にも似た声をあげた。あまりに怯えているので突いたらドミノのように倒れそうだ。


「そこの中にレジの金を全部入れろ。それにババア!」


 今度は老夫婦のほうへおもちゃを向ける。脅された老婆は震えあがりながら身をすくめた。


「二階から今ここにあるだけ全部の金を持ってこい。今すぐだ」

「そ、そんな……そんなことをすれば私たちは明日から生きていけません」


「今死ぬのとどっちがいいんだ?」


 早くしろ、とおもちゃを動かし、ヘルメット男はいすに座った。そして、もう一人のヘルメット男に指示を出す。


「お前はこのババアと一緒に二階に上がれ。ババアが警察に通報したりしないか見張るんだ」

「了解っす」


 ヘルメット男に引っ張られるようにして老婆は二階への階段を上る。この喫茶店は老夫婦の自宅も兼ねている。一階は喫茶店で二階は住宅になっているようだ。

 先ほどのやり取りから一階に残った男がリーダー格で、二階に上がったのは腰ぎんちゃくのようだ。

 リーダーはいすに座りながらもたえず、視線を動かし、客や給仕が余計な動きをしていないか見張っている。


 なるほど。この二人組は強盗だ。力で脅してこの喫茶店の売り上げと老夫婦の資産を奪おうとしているようだ。

 となると


「あのおもちゃは何だ?」


 我はヒカルに質問する。と、その前に魔法を発動することは忘れない。

 音遮音ノイズキャンセラー

 見えない魔法の空間がヒカルと我を包み込んだ。これは複数の目がある中で内緒話をする魔法で他の人間には我とヒカルの話声が聞こえないようになっている。読唇術ができるものには無意味だが、パーティなどの最中に重宝された魔法である。

 堂々と声をだす我にヒカルは驚いた顔を見せ、ヘルメット男を見る。男の動きに変化はなく、我々を見張っているだけだ。

 しかし、ヒカルは我の声が男には聞こえていないのは偶然であると思ったらしく、口を開こうとしない。


「あのおもちゃは何だ? と聞いてるんだ。―――答えろ、嶋野ヒカル」


 我に二度も同じことを言わせるとは。

 無駄な時間をとらせる娘だ。我は気が長いので今回は許すが次に同じことをすれば許さないからな。

 我の二度目の発言にヒカルはまた驚き、周囲を見渡し、こちらに顔を近づけた。これ以上、質問に答えなければ我が騒ぐと思ったらしく、観念して耳元でささやいてきた。


「拳銃よ。あれは人を殺す道具なの」


 拳銃。銃か。聞いたことがある。火薬で鉄の塊を発射する道具で戦争に使われるものだ。魔法が使える我には関係ない道具だが、魔力がなくとも誰でも使える道具で聞いたときは面白い、と感心したものだった。

 しかし、魔法より発動が早く、使いようによっては非力な子供でも魔法使いや戦士を殺すことができる。もちろん我が相手であれば銃を持つ相手を無力化するのは簡単だが、それなりの脅威であることは違いない。

 拳銃の実物を見るのは初めてで、あれの引き金を引くだけで人が死ぬとは思えないほど粗末なおもちゃに見えた。


「それにしてもヒカル。其方、なかなか度胸があるな」


 今、我々は銃で脅されている立場である。ヘルメット男に命を掴まれていると言っていい。そんな中、ヒカルは怯えてはいるものの冷静であり、我の質問にもしっかりと答えてくれた。

 この年齢の女性にはなかなかできるものではない。


「……ありがとう」


 年下の我に褒められたヒカルは複雑そうな表情をする。

 

「おい、そこ。何を話している!?」


 ヘルメット男がこちらの動きに気づく。さて、どう言い訳しようか。そう思っているとヒカルが先に口を開いた。

 すぐに魔法を解除して、ヒカルの声が男に届くようにする。


「この子がトイレに行きたいって言うの。行かせてあげては駄目?」

「トイレ?」ヘルメットの奥の眼が我を捉えた。「ガキが。駄目だ。我慢しろ」


 ひとまず誤魔化すことはできた。それにしてもこのヒカルという女。とっさの機転もきく。なかなか見どころのある娘である。

 しばらく身動きもとらず、待っていると二階にいた腰ぎんちゃくが情けない声を出しながら戻ってきた。


「兄貴~」



「どうした?」

「ババアがお金がないって言うんだよ」


「そんなわけないだろ。宝くじに当たったんだ。一億は持ってるって聞いたぞ。殴ってもいいから脅して出させろ!」


 なるほど。

 銀行強盗ならわかるが、こんな小さな店に強盗に押し入るのはおかしいと思った。老夫婦が宝くじに当たった噂を聞きつけ、このような行為に及んだようだ。しかし、それにしては短絡的で計画性がない。この二人組、本当に頭の悪そうだ。


「それよりもババアを一人にするな!」

「お、おうよ」

 

 バタバタと大きな足音をさせながら腰ぎんちゃくが二階に戻っていく。そして、数分もたたないうちにまた泣きそうな声をしながら戻ってきた。

 今度は老婆を引っ張りながら。


「このババア、目を放したすきに警察に通報しやがった。やばいよ、兄貴。警察が来るよ」

「馬鹿野郎! お前が目を放すから!」


 なんという茶番。できの悪いコントかと思うほどだ。

 二人のやり取りを我は冷めた眼で見ていた。


「んなこと言ったって。俺は頑張ったんだよ。兄貴」

「いくら頑張っても結果がでなけりゃ意味がないんだよ! それよりこれからどうするか、だ」


 よほど焦っているのか。二人は大声で叫びあっていて、会話が丸聞こえだ。二人の話が確かなら警察がもうすぐここに来る。そうなればこのつまらない茶番も終了する。

 

「こうなったら、今ある金だけもらって逃げるしかねぇ」

 リーダー格が銃口をこちらに向けた。

「おい、そこの女二人。有り金を全てよこせ」


「……」

「聞こえないのか。早くしろ!」


 リーダー格の焦った声が響く。

 母上は気絶しているので返事はできない。ヒカルもどうすればいいのか、迷っているようだ。ひょっとすると恐怖で声が出ないのかもしれない。

 

「おい! 聞いてんのか!」


 リーダー格は焦っていた。何もかもが計画通りにならなず、上手くいかない。もうすぐ警察がつく。お金は手に入らない。自然と引き金に力がこもる。

 

 パンッ


 と、聞いたことがない音が鳴り、女性の悲鳴が聞こえた。

 

「何やってんだよ。兄貴。撃ったらまずいよ」

「しょうがねぇだろ。もたもたするのが悪いんだ。脅すだけだから銃口は上を向けている」


 声は平静を装っているがリーダー格は明らかに動揺している。銃を持つ手も震えていた。拳銃を撃つのは初めてだったようだ。

 銃弾が当たった喫茶店の天井は目を凝らせば穴が開いているのが見えた。そこからパラパラと細かい砂のようなものが降ってくる。

 男たちはなかなか財布を出そうとしないヒカルたちに苛立ち、銃で脅した。そして、銃を上に向けて撃ったのだ。

 母上には我が魔法を込めたお守りを持たせてあるので銃程度の威力であれば弾き飛ばす障壁が自動で展開されるようになっている。しかし、それでも心配になる。我はすぐに母上の身体を確認する、

 母上の珠のような肌には傷一つついていない。



 だが、しかし、この男の傍若無人な行動を我の怒りに触れた。

 我は母上のほうを見る。

 この男は銃を、人を殺す道具を母上に向けた。

 そして、放ったのだ。

 つまり、母上を殺そうとしたのだ。

 

 

「貴様を許すわけにはいかない」


 自分の中で感情が爆発するのがわかった。

 頭に血が上る。心臓が異様に早く脈打つ。抑えきれそうにない。

 殺し合いにおいて感情に振り回されるのは三流のすることである。それを理解しているが、我は自身の感情を抑えることができなかった。

 一応、この男たちの戦力は把握しており、我に対する攻撃手段はないことは確認している。問題はない。彼らがこの場で百人に分裂しようが殺しきることができるほどの戦力差がある。

 それに何より母上を殺そうとした、という事実が我を動かす。


「―――寝ていろ」


 まずは目撃者の消去。喫茶店内にいる人間はヘルメットの男二人組以外を魔法で眠らせる。意識を失い、人が床に倒れる音が鳴る。

 我のただならぬ雰囲気に気がついたのか、リーダー格が逃げようとする。

 だが、逃がすわけがない。


「動くな」


 命令と同時に無詠唱魔法で男たちの足をひざ元まで凍りつかせる。足を床と縫いつけたので彼らはもう歩くことさえできない。

 

「さて、どうするか。焼死。圧死。壊死。水死。轢死。爆死。溺死。凍死。毒死。窒息死。失血死などあるが希望はあるか?」

「な、なにを言ってるんだ、お前?」


「お前? 立場が分かっていないのようだな」


 と、その前にヘルメットが邪魔だ。我は風魔法でヘルメットを切り落とした。きれいに真っ二つに割れたそれは足元に転がった。

 ヘルメットの中からは恐怖におびえた男の顔があった。

 これが見たかったんだ。


「母上を殺そうとしたんだ。楽に死ねると思うなよ」


 まずは見えないインビジブルハンドでリーダー格の腕を捉える。そして、人体の構造上絶対に曲がれない方向へと折りたたむ。


 ポキッと木の棒を折ったような軽快な音が我の耳にも届く。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ。腕が俺の腕がああああああああああああああ」


 男は店に入ってきた時よりも大きな悲鳴を上げた。


「うるさい。今度は喉を潰すか」


 どうせなら相棒にやらせたほうがいいだろう。そう思い、我は腰ぎんちゃくの腕を動かし、リーダー格の喉を押さえさせた。


「どうして、なんで。腕が勝手に……」


 我に腕を操作された腰ぎんちゃくは泣きながらリーダー格の首を絞めている。なぜなにが、など疑問の声が止まらずあふれ出ている。

 かわいそうなので教えてあげることにする。


「安心しろ。殺させはしない。ちょっとうるさいので喉を潰させるだけだ。なに、簡単に殺しはしない。母上に手を出そうとしたのだから、すぐに死ねると思うなよ」

 

 しかし、腰ぎんちゃくは泣き止みもせず、顔に恐怖を張り付けたままリーダー格の首を絞めている。親切に教えてあげたのだから、ありがとう、の一言くらいほしいものだ。


「嫌だ嫌だやめてくれええええええええ」


 あと少し力を込めさせればリーダー格の喉はつぶれる。しかし、ここで大切なことに気づく。我は急いで腰ぎんちゃくを操る見えない手に停止を命じる。

 喉を潰して喋れなくしてしまえば最後の命乞いや苦しむ声を聞けなくなってしまうではないか。これは問題だ。


 さて、どうしよう。


 二人の拷問の仕方に悩んでいると男たちとの別の声が聞こえた。


「やめなさい!」


 嶋野ヒカルだ。彼女は我と強盗たちとの間に立ち、彼らを庇うように両腕を広げた。


「邪魔だ。退けろ」


 しかし、ヒカルは首を振るだけでそこを動こうとはしない。足はがくがくと震えていて軽く押せば崩れ落ちそうにしているのに、彼女の眼には強い意思があった。この手の人間を知っている。前世で何度か見たことがある。このような眼をした人間はどんなに拷問しようとも傷めつけようとも動かないのだ。


「気絶させる魔法は……ああ。母上のお守りの範囲にいれば効かない、か。すっかり忘れていた」


 母上のお守りの効力は範囲指定されているので、母上の傍にいたヒカルも範囲内んだったらしい。だから、我の魔法は効かなかったというわけだ。

 それにしてもヒカルは我が魔法を発動させる一部始終を見てしまった。殺して口を封じる予定の強盗たちはいいが、ヒカルが起きていたのは計算外だった。

 凡ミスだが、失敗を取り戻せるミスである。しかも、簡単にすぐにできる修正方法がある。


「殺すか……」


 その言葉を聞いた瞬間、ヒカルの眼にも恐怖が宿る。大人しく退いていれば怖い目に合うこともなかったのに。

 ヒカルに恨みはない。ただ運が悪かっただけだ。可哀そうなので痛みを感じぬよう一瞬で殺してやることにする。

 我は腕をヒカルにかざす。


「やめなさい!」


 ヒカルは再びそう言った。それは命乞いではなかった。後ろにいる二人を守るために放った言葉だった。見ず知らずの、しかも自分に害をなそうとした人間を守ろうとするヒカルの行動に少し興味がわく。


「こいつらは母上を殺そうとした。そんな奴らに生きる価値などない。殺すことに何の問題がある?」

「自分のために人を殺したと知れば貴方のお母さんは悲しむわよ」


「母上に知らせなければいい。それくらいの処理は簡単だ」

「人を殺せば犯罪者になるわ。殺人犯として逮捕されるのよ」


「魔問題ない。魔法で殺すのだから、証拠は残らない。それ以前にそこの二人は灰も残らないように処理をする。死体がなければ殺人の立件は無理だろ?」

「私が証言するわ。あなたが人を殺したって」


「六歳の子供が【魔法】で人を殺したと証言するのか?」


 いろいろ調べているうちにこの世界では魔法は架空の物語にしか存在しない、という認識になっている。それが常識となっている。つまり、魔法を使っても人は何かの手品だと思い込む。幽霊の存在も信じていない、この世界で魔法を使って人を殺した、と裁判所で証言してもまともに取り扱ってくれるわけがない。それくらいの調べは済んでいた。


「あなたのお母さんは生きてるわ。傷一つついてない。それでも駄目なの?」

「駄目だ。たとえ母上が無事だとしてもこいつらが母上を傷つけようとした事実は変わらない。こいつらを殺さなければ、我の怒りが収まらないのだ。それとも何か?」


 我が睨みつけるとヒカルはぶるりと震えた。まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。


「お前が彼らの身代わりになるとでもいうのか?」


 ヒカルは後ろの二人を肩越しに見る。男たちは縋るような眼をしてヒカルに助けを求めている。リーダー格のほうは失禁をしていてアンモニア臭がこちらにも漂っていた。その場に座りこまないのは足を氷で固定されているからにすぎない。もし、その拘束が解かれればヒカルを犠牲にしてすぐに逃げ出すだろう。

 二人は老夫婦たちの平穏な日々を壊そうとし、老後の生活の資金を奪おうとした悪党だ。命を懸けて救う価値のないクズである。

 そして、母上を傷つけようとした大罪人である。


「身代わりにはならない」

「それならば―――」


「けど、貴方がこの二人を殺すのは許さない」

「許さない、か。許さなければどうなるんだ? お前に許されなければ我にどんな影響が及ぶ?」


 我の質問にヒカルはしばらく黙る。

 人を殺すのは法で禁じられている、などのつまらない答えしかできないのであればこの女は殺す。そう我は心に決めた。

 ヒカルにとっては運命の分かれ道だ。 

 それを知っているのか、知らないのか。ヒカルはこちらを真っ直ぐ見て、悩む。そして、ゆっくりと絞り出すように答えを出した。


「―――私は貴方を軽蔑するわ」

「……」



「軽蔑するわ」

「いや、聞こえているから二回も言わなくていい」


 軽蔑する。だからなんだ。

 この女に軽蔑されてなんの影響があるのか。

 この状況が分からぬ頭ではないはずだ。それなのに最後に出た言葉が軽蔑する。情に訴えることや命乞いなどの選択肢もあったというのに。

 本当に意味が分からない。

 

「ははああははははあっはははっははっはははっははああ。はぁ~」


 それゆえ、面白い。


「女。お前の名前をもう一度聞いておく。名は何という?」

「嶋野ヒカル。ヒカルはカタカナよ」


 ヒカル、か。

 ヒカルを見ていると前世の頃の友人を思い出す。見た目は全然似ていないのに、なぜだろう。懐かしい気分になった。

 彼女は世界でたった一人の気を許すことができる仲間であり、友であった。我の傍にいつまでもいる、と言っておきながら我を庇い、死んでいった薄情者だ。

 彼女が死んで何十年も経ち、王として過ごしていた内に心を通わすことができた友人がいたことさえ、忘れてしまっていた。

 ヒカルを見ていると彼女の姿が影のように被り、殺そうとする意志を奪うのだ。


「嶋野ヒカル。覚えておこう」

「……それはこの人たちの命を奪ったりしない、という認識でいいの?」


「そうだな。其方の馬鹿な答えに頭に上っていた血がひいた気がする。其方、本当に大学生なのか? ただの馬鹿じゃないのか?」

「うるさいわね。こう見えてセンター試験では全教科八割以上の点数を叩きだしたのよ」


 命を奪われる心配がなくなったので拍子抜けしたのか、ヒカルは腰から崩れ落ちるようにして座り込んだ。今にも泣きだしそうな顔をしている。初めて見た時は気が強そうに見えたのに、今は子供のように表情を崩している。

 こうしてみるとなかなか可愛らしい。


「怖かった」

「そうか。怖かったのに、我に立ち向かったのか。その根性は素晴らしいものだと思うぞ」


「逢坂心太。貴方は何者なの?」

「見て分からぬか? ―――ただの子供だ」


 座り込んだヒカルの頭は我の手が届く高さになった。我は彼女の頭に手をかざして、魔法を発動させた。気絶の魔法。

 今度の魔法は母上の傍にいないので通常通りの効力を見せ、ヒカルは気を失った。


「今は眠れ」


 さて、今日は面白い拾い物をした。

 日本での楽しみが一つ増えた。

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