第97話 同居-2
まず、俺は王都中央にある、A~SSSランクの冒険者が集まるギルドに入った。
中はかなり豪華。高級ホテルのようだ。
俺は数人にお菓子をもらい、十数人と手を握り、数十人に声をかけられた。
そうこうして、やっと受付の元にたどり着く。受付は、エルフ……おぉ! エルフだ。
エルフの女の人だった。とても美人だ。
「あの、依頼を受けたので、その討伐部位を提出しに来ました」
「はい、アリム・ナリウェイさんですね。今、受けているクエストは…マンティコラ退治ですね。では討伐部位を提出してください」
俺はマンティコラの討伐部位の目玉を提出した。
「はい、たしかにマンティコラの討伐部位ですね。確認しました。それでは報酬をお受け取りください」
俺は報酬を受け取った。かなりの額だ。
「また、お越しくださいね」
俺はまた、数人の冒険者にもみくちゃに、されつつも外に出た。
次にメディアル商人組会本部に来た。
大量になにか買い込む時は、ここに限る。
門を顔パスで通り、中に入る。
「んー、あ、アリムちゃん、いらっしゃい。なにか欲しいものがあるのかな?」
今日はグレープさんが居た。布等を沢山買い込みたいことを告げる。
「んー、主にお洋服をつくるんだね?」
「はい! そうです!」
「もしかして、その服もアリムちゃんが作ったのかな?」
「はい!」
「そうだよねー、ここら辺の服屋じゃ、そんな出来の服はできないものね。じゃ、なにが欲しいのかな?」
俺はミカが好きな色や素材、肌触りの布を頼んだ。
「んー、わかった。全部在庫はあるから、とってくるね」
相変わらず品揃えがいいな。
しばらくしてグレープさんが戻ってきた。
「んー、はい、この中に全部入ってるからね」
「ありがとうございます」
「ところで、あの娯楽玩具達の件なんだけどね?」
ん? なにかあったのだろうか?
「いま、瓦版の一ページで宣伝してるんだけどね、予約がすごくてすごくて…生産が間に合うかどうかもわからないんだよー」
そうなのか。瓦版を最近読んでないからわからなかった。
「そうなんですか!」
「ん! 儲けさせてもらったよー! ありがとねー!」
「こちらこそ、いつもありがとうございます!」
俺は店を出て、ミカの元に戻った。
部屋に戻ると、ミカは[トズマホ]を慣れた手つきで操作していた。
「あ、アリム! おかえりなさい」
「あぁ、ただいま。どう? それ」
「これ、私にも同じもの作れる?」
「うん、作れるよ。数時間かかるけどいい?」
「うん大丈夫! お願いっ!」
こうして俺はマジックルームにこもってミカに必要な物を作った。
マジックバックとかもね。[トズマホ]の情報のおかげで[無限]のマジックバックが自作できるようになったし。
服もすぐできるんだけどね。[トズマホ]がいかんせん…ね。
ともかく、夕飯を食べる前には完成した。
「ふぃ~…ミカー、ボク、疲れたよぉー!」
「お疲れ様! ねぇ、アリム。ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」
「じゃあ、ミカにしようかな」
「…………バカァ」
ふう、このやりとりだけで疲れがふっとぶね。
まぁ、言うほど疲れてないんだけどね。
「ねぇ、アリム、ご飯…先食べよっか」
「そうだね、じゃ、食堂に行こうか」
「……ねぇ、その……アリムほど上手くいかないかもしんないけどさ……私…作ろうかな?」
「え? まじで!」
「うんっ」
「じゃあウルトさんにはメッセージで連絡しておくとして……ミカさん、お願いいたします」
「ふふふ、有夢に料理作るのって、何日ぶりかしら? 2ヶ月ぶりくらい?」
そう言って彼女は台所に立った。
数十分後、出てきたのはお好み焼き。
「うーん、この世界の材料だと、このくらいしか思い浮かばなかったよ…」
「うふふ、美味しそう!」
「そ、そうかな? 食べてみて?」
「うん。いただきます!」
俺はミカのお好み焼きを一口食べる。あぁ、なんて懐かしい、愛のこもった味なんだろう。
涙が出ちゃいそう。
「え! ちょっと、なんでアリム涙目なの? 熱かった?」
「ううん、いや、懐かしいなぁって。まさか、死んでからもまたミカの手料理が食べられるとは思わなかったから」
「そうなの。おいしい?」
「うん、とっても」
「えへへへへ、そっかぁ、良かった」
俺らはすぐに食べ終わり、後片付けをする。
そしてお風呂に入るとのだが…。
「ねぇ、ボクも女の子だし、お風呂も広いから、一緒に入ってみない?」
「エッチ」
「じゃあ、一人で入ってくるね」
「バカ、断ってないじゃない」
「え、一緒に入る?」
「せっかくだし、そうしようかな。ただ、絶対に途中で有夢に戻らないこと、わかった?」
「うん、わかった」
こうして、俺らは一緒にお風呂に入った。女の子同士として。
完全に身も心も俺が女になっていることに、ミカは改めて、ひどく驚いていた。
お風呂から上がり、俺が作ったミカ用の下着と寝間着を用意する。
「ねぇ、アリム。これ、有夢の状態で作ってないよね?」
「まっさかー」
「本当?」
「うん」
「そう、大丈夫なのね」
そんなこと、思いつきもしなかった。そうか、今度からそうすればいいのか……いや、やめとこう。ミカに嫌われちゃう。
お風呂からあがった後は、俺が作ったものを全部見せ、使い方を説明した。
「アリム~~っ! ありがとうっ!」
「ううん、すべてはミカ様のためですから」
「ハイハイ。それにしても、もしかして今後プレゼント無しとかじゃないよね? そ、それは嫌よ? 誕生日くらい祝ってね?」
「何言ってるのさ、プレゼント無しとか、そんなつもりないよ」
「えへへへへ、そう?」
そう、クマの人形を抱きしめながらミカは言う。
もう寝る時間だ。
俺のベッドの隣にミカのベッドを置き、ミカはクマちゃんを抱きしめたまま眠った。
俺も寝よう。
今日はしあわせだった。
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