五章 再開
第93話 え?
少女は気になるが、俺はとりあえず、ラハンドさんとガバイナさんに、無事かどうか聞いた。
「大丈夫でした? お薬効きましたか?」
「あぁ、バッチリ効いたぜ! ありがとよ」
「ふふ、いいですよ。どういたしまして」
「アリムよ、すまないな。何か御礼はしなくていいのか?」
「いいんですよ、別にね」
だって、払えるわけないじゃないの。あれ、一本120万ベルだよ?
ラハンドさんと話しているところに、青髪の少年少女が二人近づいてきて、挨拶をされる。
少女の方が、俺に礼を言った。
「あの…アリム…さん」
「敬語じゃなくていいですよー」
「じ、じゃあアリムちゃん! ラハンドさんを助けてくれてありがとう!」
「ふふふーん! いいってことですよ!」
「それで…あの…その…」
妙にヨソヨソしいこの感じ。これは大体、俺のファンの皆さんが、俺を目の前にした時に取る行動だ。最近、わかってきたんだよね。
「ほっぺた…触ってみてもいい?」
「うん、いいですよ。ラハンドさんか聞いてます! マーゴさんですよね?」
「うん! そうだよ! よろしくね、アリムちゃん!」
と、マーゴさんは俺のほっぺを摩りながら言った。
「で、お兄さんはゴッグさんですよね?」
「うん、そうだよ。君に会えて光栄です」
ちょっとしゃべり方がキザだな、この人。
顔は確かにいいほうかもしれないけどさ。
それと、今にも泣きそうなそっちの女の子がきになるんですけども。
「あの、ラハンドさん。あの娘は?」
「あぁ、その娘はな、ヘラの森で救出したんだ。アリム、お前と同い年なんだぜ? ………どうやら、記憶がないらしくてな」
そうなんだ。まぁ、俺は記憶がちゃんとあるんだけどね。
可哀想に。俺とほぼ同じ状況か。この世界、こんなことが良くあるのかな?
それはヤバイな。
「君、よろしくね?」
「あ………う…………あ………よ……ろよろ…しく」
なんかキョドッてない? それに今にも泣きそうなんだけど? 俺がなんかしたかな。
ラハンドさんが、この娘がすぐにでも泣きそうなのを見て、慌てて会話に入ってくる。
「お、お、なんで泣きそうなんだ? 落ち着けよ。な? それと…だ。アリム、忙しいんじゃなかったのか?」
「ええまぁ、忙しかったんですがすぐに終わらせましたので」
「へぇ、早いな。あの時も一瞬でサンダーバード倒したしな」
「うぇ……うぐっ……ヒック……」
「おい、おい、なんで泣いてるんだよ。どこか痛いのか?」
ラハンドさんの言う通りだから、この娘はなんで泣いてるの?
ガバイナさんは何か知っているような顔振だけど…。
そう思った矢先、彼女からか細く、俺に声をかけてきた。
「ね……ぇ……お願い……ちょっとついてきて……人の……いないところで……お話したいの……ね?」
「え……あ、ううん? いいけど? ちょっと、この娘と二人で話してきますね、皆さん」
「あ、おう、おうよ。ミカ、お前今日どうしたんだ?」
え? ミカ………?
この娘、ミカっていうのか………いや、そんなまさか。
俺たちは、宿内の、あまり人が居ないところにやって来た。
俺は駆け巡る考えを必死に抑え、この少女に聞く。
「ねぇ…ミカちゃん? どうしたの?」
そして、彼女は下を向いてた顔をあげる。
顔は涙が滝のように流れていた。
そして、こう言った。
「ねぇ……アリム………貴女、貴方、アユム……あゆむなんだよね?」
俺はこの瞬間のことを絶対に忘れない。
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