第83話 フィストアイアン
私は二人から色んなことを教えてもらった。冒険者のことや魔物のこと、王都のこと、その他様々な基本知識を教えて貰った。
どうやら、この世界で暮らしていくには冒険者になるのが一番。そう、私は判断した。
「ありがとうございます、えーっと…」
「あぁっ!? 名乗るのがまだだったかぁっ! オレは ラハンド っつー者ダゼェっ! オレら冒険者パーティ、[フィストアイアン]のリーダー兼こいつらの親代わりだっ! よろしくなっ」
「俺はゴッグ。今料理してるのが、双子の妹のマーゴさ、よろしくね。ミカちゃん」
「よろしくお願いします。ラハンドさん、ゴッグさん」
「おうヨォォっ!」
本当にいい人達と出会えた。ここ3日間で一番運がいい。
この世界で生きていける確率がぐーーんと上がったよ。
ところで、この人達は何しにこの森にいるのだろう? 聞いてみた。
「あぁ、それはな、調査だよ、調査。この森に、国が道を通す予定なんだが…ほら、魔物がわんさか居るだろう? 1週間でどのくらいの魔物と遭遇するかの調査さぁ」
調査か。国からの仕事だよね。大変そう。それほど、この人達は実力があるんだろうけどね。
さっきの話では…Aランクだったっけ。
そうだ、私はどうしたらいいんだろう?
このままついていっていいのかな?
「そうなんですか。あの……私はどうしたら…」
「ミカはよぉぅ、とりあえずはオレらと一緒に居ろよぉっ! 一人でいたら死んじまう。あと4日間、この調査につきあってくれよな。王都に着いてから、これからのことを考えようぜ」
「はい、 ありがとうございます」
王都にも連れてってくれるらしい。本当に助かる。感謝してもしきれないよ。
「ご飯ができたよっ」
お昼ご飯ができたみたい。この世界に来てから初めてのまともな食事。美味しいといいなぁ。
マーゴさんは、お皿にシチューのような物をよそって私に手渡してくれた。
「召し上がれ、ミカちゃん」
「頂きます、マーゴさん」
そのシチューのような物を一口すする。
美味しい。本当に美味しい。
まともに食事ができるのが、こんなに幸せだなんて思ってもみなかった。
「美味しいです! とっても」
「そう? エヘヘヘヘ、もっと褒めて褒めて? ラハンドさんはどう?」
「あぁ、うまいぜ。相変わらずな」
「そう! じゃあ私と結婚s…」
「いや、だからしねぇっての」
「ふぇぇぇぇん……」
なるほど、マーゴちゃんはラハンドさんに恋してるのね。
まぁ、ラハンドさん、自分が親代わりだとか言ってたし、そのつもりはないんじゃないのかな。
私はすぐに、ごちそうされたシチューとパンを食べ終わってしまった。
「おいしかったです! ごちそうさまでした。マーゴさん」
「うんうん、おいしいって一言が一番だよぉ~、お兄ちゃんはどう?」
「うまいよ、いつもどうり」
「そう、よかったっ」
全員食べ終わった後、調査をラハンドさん達は再開した。
私は一緒についていく。
歩きながらマーゴちゃんは、私に弓の扱いを教えてくれた。
この世界の弓は普通に矢で打つこともできるらしいんだけど、MPを矢の代わりにして放つこともできるんだって! エンチャント…とか言ってたっけ?
マーゴちゃんは私に、一個弓をくれた。
誕生日に新しい弓をラハンドさんに買ってもらったから、前に使ってたのをくれたんだ。
……しばらく、MPを切らさないように気をつけながら練習してたら、頭の中に突然メッセージが送られてきた。
【SK1 「弓技★」の段階が一段階すすみました】
おおっ! やったぁー!
私はそのことをマーゴちゃんに伝える。
「えっ! 上がったのやったね!」
「はい!」
「でも、そろそろMPが危ないでしょ? MP切れると力抜けちゃうから気をつけてね?」
「はい、程々にしておきます」
次に道中、ゴッグ君から魔法について教わった。この世界の魔法は、属性+技の名前 が魔法の中心らしい。例えば、私がいまできるのはウォーターボールと、ファイヤーボール。そしてその次の段階がエミッション、キャノン、そして最後にマーチレスなんだって。
あとは回復魔法や補助魔法だったり、スキル固有の魔法だったりするんのだとか。
あと、魔法使いは普通、杖が主な持ち物らしいんだけど、ゴッグさんは横笛。
これで魔法の威力を高めてるんだって。
しばらくまた、森の中を歩いて行くと、あの
顔がある木の魔物と遭遇。
私はあの木に叩かれて痛い思いをしている。
だから、とっさに構えちゃう。
そのようすをみて、マーゴちゃんは微笑みながらこう言った。
「あははは、そんなに構える必要ないよ? ミカちゃん。 あの魔物はトレント。ランクDの魔物だよっ、ラハンドさんだと、あの程度の魔物は瞬殺なんだから、見てて見てて!」
そう言われたので私はラハンドさんを見る。
少しあのトレントはトラウマになりつつあるんだけど……Dランク、下から3番目のランク。
私、こんなのに怯えてて、やっていけるかな?
ラハンドさんはトレントに近づいていく。
でもあの人、剣も弓も、杖もない。
メリケンサックみたいなのしてるから、多分、拳で戦うのかな?
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