第82話 スキンヘッド
「______嬢ちゃん_____おい______」
誰かが私を呼ぶ声がする。
誰だろう。眠らせて欲しいな、このまま。
身体を揺すぶらされている感覚がある。
「おい______嬢ちゃん_____起きろ_____」
わかった、わかったわよ。
起きればいいんでしょ?
起きれば……。
私は重い瞼をこじ開ける。
「うわぁ…よかったぁ…」
「一体、どうなる事かと…」
「おい、嬢ちゃん、わかるか? 意識はあるか?」
そうだ、私、死にかけてたんだった。危ない危ない。
目の前にいるのは…地球にいた時の私と同い年位の、男の子と女の子と………厳つい顔をした、顔に刺青がある、スキンヘッドのおじさん。
完全に危ないタイプのやつ…。
私は悲鳴の一つでもあげたかったが、身体が思うように動かない。それに、どうやら私を助けてくれたみたいだし、悲鳴あげたら失礼だよね。
なんとか首だけ動かせたので、首を縦に振ってみた。頭がズキズキする。我慢しないと吐きそうなくらい吐き気も酷い。
「あからさまに調子悪そうだよな……。なぁ、嬢ちゃん、まさかこの辺りの木の葉っぱとか食ってねぇよな?」
「え? まさか…あれ、毒よ?」
「でも、ここら辺にはそれぐらいしか口に入れれそうな物はないよね。多分、食べちゃったんじゃないかな、荷物も何もないみたいだし」
あの葉っぱ毒だったのね。道理で。
それでも、口に入れれるものはあれぐらいしかないって…最悪の森じゃない。
私は食べたことを伝えるために、再度、首を縦に振った。
「あぁっ! やっぱり食べちゃったのね!」
「ラハンドさん、毒消し薬ある?」
「あるに決まってるじゃねぇか。冒険者は絶対持ってるっての。おら嬢ちゃん、口を開けな」
毒消し…私は言葉に従い、口を開けた。
その口から、歪な形のフラスコに入っている液体を流しこまれる。
少し身体が楽になったよ。少しだけ。
「ありゃ? あんまし聞いてないっぽいぜ?」
「………大量に摂取したのかも。もう1~2本飲ませてみよう」
「そ、そうだね。私は、温かいお湯を用意するね」
私の口に、さらに2本分の解毒薬が流しこまれる。
なんということだろうか。さっきまでの症状、全てが嘘みたいだ。
私は上半身を起こし、御礼を言った。
「………ありがとうございます。おかげで楽になりました」
「そうか、そうか、よかったなぁ…」
「ほっ…」
「はい、温かいスープだよ! これ飲んで一旦落ち着いてね!」
私は女の子からコップを受け取り、スープをすする。美味しい。温かい…。あぁ、涙が出そう。
「ありがとうございます……」
「おい嬢ちゃん、起きてすぐで悪いんだが、色々聞きたいことが有る。いいか?」
「はい」
まぁ、当然か。森の中で人が倒れてるなんて、滅多にない状況だもんね。
冒険者って、言ってたし、なにかの調査とか、お宝ハンティングにこの森に来たのかも。
ラハンドと呼ばれていた、スキンヘッドの、見た目によらず親切なおじさん……いや、まだおじさんって歳でもなさそうな人の、質問に答えることにした。
「まず……嬢ちゃん、名前は?」
「私は……ミカっていいます」
「そうか、歳は?」
「12歳です」
「親はどうしたんだ?」
この手の質問には、記憶をなくしたみたいに答えるしかないよね。
まさか、地球からだなんて言えないし。
「…………わかりません」
「じゃあ、どっから来た?」
「…………わかりません」
「ここがどこかわかるか?」
「…………わかりません」
「……そうか、覚えてることはどこまでだ?」
とりあえず、この世界に来てからあったこと話せばいいかな?
「……突然、森の中に居て…魔物から逃げて…気分悪くなって…倒れて…」
「で、俺らと出会った…と」
「はい」
「そうか………」
ここで少し黙ってから、すこし聞き辛いことを聞くような顔になった。
「嬢ちゃん……本当は……失礼かもしれねぇが、今は致し方ねぇ、ステータス……レベルを教えてくれ」
「失礼……ですか?」
「ん…あぁ、そのことも忘れてるのか? こりゃ大変だなぁ…冒険者とか、スキルとかはわかるか?」
「スキルはわかりますが、冒険者はわかんないです」
「こりゃ、ステータスで確認できるものしかわからないってみていいな。で、レベルは?」
「1です…」
そう言うと、彼ら3人は驚愕の顔で固まっていた。そして、可愛いらしい女の子がこう言う。
「ねぇ? ミカちゃん。ここがどんなところかわかる?」
「いえ…」
「ここはね? DランクからAランクの魔物までウヨウヨいる森なんだよ? レベル1なんかで入ったら、まず………」
そういって、言葉を止めた。次は若干童顔の、可愛い顔の男の子が話す。
「本当に、よくここまで生き延びたね」
「はい、必死に魔物から逃げましたから」
そこまで言ったあと、私のお腹がなってしまった……。うぅ、恥ずかしいょ…。
ラハンドとかいうスキンヘッドがこう言った。
「…はっはっはっはっはっ…!! いやいや、嬢ちゃんアレだもんな、葉っぱしか今まで食べて無いんだもんな、そりゃぁ腹も減るってもんだよナァァァァっ! おい、マーゴ、昼飯だ、昼飯を作ってくれ! 食料、この娘の分もあるか?」
「うん! あるよ! 多めに持ってきたからね」
「じゃあ、頼んだゼェェっ!」
「うん!
ご飯ご馳走になることになっちゃった。ありがたいよ。
それまで、男二人が冒険者とか魔物とかの説明をしてくれるみたい。
お言葉に甘えよう。
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