第81話 四苦八苦

 「痛ぁっ……」



 私は起きた。今、私は飛ばされた先の茂みの中にいる。 

 あれ、木……よね? 木が攻撃してきたんだけど…。

 顔がついてたし、あれが魔物なのよね。


 既に日が暮れている。私、気絶してたの?

 つまり…いきなり死にかけたってこと?


 どうしよ……下手に動けないじゃないっ! 


 絶望しているところに、さらに追い討ちの音がなる。そう、お腹の音。

 そうだ……食べ物……食べ物はないの?

 

 だか、辺りには木しかなく、木の実のようなものも見当たらない。


 最悪だ、最悪の場所に今、私は居る。


 食べるものがない。どうしよう。

 私は一か八か、水が飲めないか、[水術]の魔法で水を出してみる。


 良かった。飲めるみたい。


 水分確保はこれでどうにかなったんだけど…今は水で無理矢理お腹を膨らませるしかないよね?


 獣が居ても困る。だから、私は木に登ってその日はやり過ごすことにした。

 すごくひもじい。これからどうすればいいのだろう。



__________

________

_____




 あまり目覚めは良くない。なんでかって?

 だって今、あの木が近くで彷徨ってるんだもん。

 私は起きてすぐから、ずっと息を潜めている。

 もうやだ、なんでこんなことになったの?

 いつまで怯えていればいいの?


 お腹も鳴ろうとしている。でも、いま音が出たら私は死ぬしかなくなってしまう。

 必死でお腹と口を抑えてやり過ごす。



 どうやら、木は通り過ぎたみたい。


 それにしてもお腹が空きすぎてヤバい。でも、食べられそうなのは………木の葉っぱくらい………。

 でも、このまま何も食べないでいたら、近いうちに動けなくなる。

 そうしたら、そのまま餓死するか魔物の餌食になるだけ。そんなの絶対イヤっ!


 私は今登っている木の葉っぱを千切っては食べる。

 美味しいはずがない。不味い苦い。それでも食べないと…。

 私は泣きながらひたすらその、黒緑色の葉っぱを口に放り込んで食べる。うぇぇぇっ………。


 

 私は木から降り、息を潜めて、ゆっくりゆっくりと歩を進めることにした。

 本当に、唯一の救いは水が飲めること。これがなかったら、私は……。


 歩いてるうちに、何か物音が聞こえてきた。もしかしたら、人かもしれない。


 私はその音がする方向に私は行ってみた。


 人がいた? とんでもない。

 あの木の魔物と、一匹の蟻のような魔物が争っていたところだった。


 みたところ、蟻の捕食ね。そんなこと考えてると、蟻が木の鞭を受けつつも、勝ったようだを

 ………あの木より蟻の方が強い……か。気をつけないと。

 

 私は音を立てないように、ゆっくりとその場から離れた。


 私は歩を進める。歩き続ける。どのくらい歩いただろう。

 実は途中から、だんだんと、私は頭痛、腹痛、吐き気がでてきていたの。


 気持ち悪いよぅ……お腹いたいよぅ……うぅっ……。


 でも、でも、こんなところで倒れてなんていられない。

 この世界にいるかもしれないの。私の、私の好きな人がっ…。


 有夢に会うまで、私は絶対に死なない!


 

 歩く。ひたすら歩く。歩くうちに夜になった。

 私はあちこちが痛い身体に鞭をうち、木に登って眠った。

 


_________

_______

____



 寝たのに…頭痛と腹痛がおさまらない。

 きもちわるい。死にそう。


 あぁ…風邪になった時、アイツが必死こいて私を看病してくれたのを思い出す……。


 普段、お金にケチなアイツが、『薬買ってくるか? スポーツドリンク飲めよ』なーんて、風邪に良さそうな色んなもの自腹で買ってくるんだもん。

 あの時はすごく嬉しかったなぁ……。


 そのあと、アイツ自信が風邪ひいたのは、ご愛嬌ってとこかな。

 

 ……。いま、そんな看病してくれる人なんて居ない。


 食べる物はとりあえず葉っぱしかない。

 不味いし、苦いし、私自身吐き気も酷いし、正直食べたくないんだけど、仕方ないよね。


 はぁ…散々だよ、私の転生人生。


 今日もまた歩こう。

 気分が悪すぎて、少ししか進めないかもしれないけれどね。



 私はこの森を出るべく、ひたすら道を進んだ。ノロノロと。


 途中、魔物に会ったりしたけれど、茂みに隠れたりして、なんとかやり過ごす。


 お腹の調子と頭痛、吐き気は昨日より増して酷い。

 もう最悪。




 私はそんな風に、歩いてる最中だ。

 ヤツを見つけた。


 

 ヤツ……人の顔、ライオンの身体、蠍の尻尾……。ゲームで見たことある、あれはマンティコラ……。


 そして、その目の前にあるのは大木。

 マンティコラはその大木を、一瞬で引裂いた。



 まずい。

 あの化け物に見つかったら本当に死んじゃう!


 私は逃げた。息を潜めて、地べたを這いずって、腹痛と頭痛と吐き気と戦いながら。


 この痛み、死ぬことの恐怖に比べたらなんてことはないよ。


 どれくらい逃げたかわからない。

 でも、きっと、これだけ離れたら遭遇しないはず……。そう、安心した瞬間、全身が脱力。


 ただあるのは、意識と、腹痛と頭痛と吐き気のみ。

 

 動けない…。

 ここで動けないってことは、私は死ぬってこと?

 やだよ、いやだよ。私、まだ死にたくないよぉ……。


 助けて…痛いの…苦しいの……有夢……あゆむ……アユム………




______________________________________

______________________________

_______________________

________________

_________

___

_

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る