第84話 拳

 トレントは近づいてくるラハンドさんに向かって蔓での攻撃をし続けている。

 しかし、ラハンドさんには当たっていないみたい。


 彼は自分の間合いに入ってのだろうか。腕を上げファイティングポーズをとる。


 そしてその腕から放たれる二発の突き、それを受けトレントは動かなくなった。



「………すごいっ」



 私は思わずそうつぶやいてしまう。

 成る程、格が違うよ。


 冒険者って、皆んなあんなに強いのかな?

 私の驚いている様子を見て、マーゴちゃんはこう言った。



「ふふふん! ラハンドさんはすごいでしょっ!あれがAランカーの実力だよっ! ちなみに、私はトレントに苦戦するぐらい、まだ弱いんだ……」



 やっぱり、ランクが高い人があんなに強いんだね。


 ラハンドさんが私達の所に戻ってきた。



「どうだぁっ? ミカ、これが冒険者の戦闘っつーもんよぉぉっ!」

「す、すごいです!」

「はっはー! そうだろぅ?」


 

 すごいと言われたのがそんなに嬉しかったのかな?


 私達はトレントを回収し、調査を続けた。



 調査中、Cランクのカマキリみたいな魔物にも遭遇した。ラハンドさんは身体に炎をまとって、6回ぐらいその魔物を殴ったり蹴ったりしただけで倒してしまった。


 そんな調子で森の中を進んでいって、この日は夜になった。



「はーい! おまちどぉさまぁっ!」



 夕ご飯はパンと肉と野菜の蒸し焼きをご馳走してもらった。

 おいしいなぁ…私も、あしたからお料理手伝おうかな?


 ご飯を食べ終わって、次にすることはお風呂。でもお風呂はこの簡易仮宅についてないらしく、そのかわり身体を清める機能がある、アイテムがついてるんだって。


 私はそれをマーゴちゃんと使ってみた。服を着たままでもいいらしい。

 ほんの数秒、魔法陣の上に突っ立ってるだけで、お風呂に入ったあとみたいにさっぱりしたよ。



 私の寝る場所はマーゴちゃんと一緒のお部屋。予備の寝床を用意してもらった。

 マーゴちゃんと少しお話をする。



「あの、マーゴさん、部屋…場所とっちゃって、ごめんなさい」

「ううん、気にすることないよー。なんなら、私はこの部屋からでて、ラハンドさんの所に忍びこむからいいよー」



 驚くべきことを言った…。年頃の女の子が、男の部屋に忍びこむだって?

 ……私も一回だけ有夢にやったことあるから強くは言えない…。



「へ、ラハンドさんの所に……ですか?」

「そう! 私の夢はラハンドさんのお嫁さんになることなの!」



 そういえば結婚して! とか言ってたよね。

どうしてそんなにラハンドさんが好きなんだろう? 知り合ったきっかけとか教えてもらえるとわかるかな?



「へ、へぇ……そういえば、ラハンドさんとマーゴさん達ってどう知り合ったんですか?」

「……3年前ね、私達はラハンドさんに助けてもらったの、その時からずっと一緒だよ!」



 少し辛そうな顔をしている。何かその3年前にあったんだと思う。

 気になるけど深く追わない方がいいよね。

 話題を変えよう。



「ところで、マーゴさんは、ラハンドさんのどんなところが好きなんですか?」

「うーん、全部…とは言いにくいかな。顔は怖いもんね。でもね、ラハンドさんはすっごく優しくて…。この私の弓もね? 誕生日に買ってくれたの、高い弓だったんだけど、そのお金をわざわざ冒険者間の武闘大会で優勝してきて、そのお金で買ってくれたんだよ! 私達のために、参加してくれたの!」



 すごい、あんな厳つい顔なのに中々かっこいいことするんだね。

 マーゴちゃんは夢中になったように話し続ける。



「それでね、その日嬉しすぎてね、お風呂上がりに、真っ裸のままラハンドさんの部屋に突入しちゃったの! 服着るの忘れただけなんだけどね」

「えっ……真っ裸で…ですか?」



 服着るの忘れたとか、絵に描いたようなドジっ娘なんだね。

 私は絶対そんな真似できないかな…。

 いや、有夢にはしても良かったかも…なんて、私は何を考えてるの!


 マーゴちゃんの話しは続く。



「そう、真っ裸でだよ! もうその時、『お嫁にいけない!』って思ったね。うん。顔からファイヤーボールがでるかと思った……そのあとすごく叱られちゃったし……。ふふっ、でもね、一つ収穫はあったかなっ」

「収穫……ですか?」

「そう。その時ラハンドさん、慌ててそっぽ向いてたの。でも耳は真っ赤でね、すごく動揺してたんだよ…? ふふふ、これは私を女として見てるってとらえてもいいよね? ね?」



 たしかに、マーゴさんは顔もスタイルもいい。憎たらしいほどに。

 でも、男の人の前に真っ裸ででてきたら、大体の人はそういう反応するんじゃやいかな?

 うーん。



「そう…ですね。多分。でもラハンドさん、そういうの疎そうですよ?」

「だから、事あるごとに『結婚して』って言ってるんだよ! そうでもしないとあの鈍感、気づいてくれないんだもん! 私は本気なのに……」



 そうだったんだね。あれは精一杯の愛情表現だったの。今日だけで6回は言ってたもんね。



「ねぇ、ミカちゃん! 私はどうすればいいと思う? ねぇ、ねぇ?」

「そ……そうですね……でもあんまり『結婚して』って言っても言葉が軽くなっちゃうと思いますよ?」

「言葉が軽く……ね、どうしたらいいかな?」

「ここは、ワザとツーンとしてみるとか?」

「成る程…ワザとつーんね、明日やってみるよ!」



 その言葉を最後に、もう夜も遅いから私達は寝た。




 ただね、この部屋の隣、ラハンドさんとゴッグ君が寝てる部屋なんだよね。

 さっきの会話、まる聞こえだったりするんだよ。ふふっ

 

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