第58話 海での戯れ


 おはよう。

 ここは潮風香る町、パルキーニ。なかなかいい場所だと思う。

 この世界に来て初めて海を見た。

 本当は、今、若干寝不足気味なんだが、眠気覚まし用のアイテムを作って使い、眠気をさます。


 さて、朝ご飯作らなきゃ。

 集合場所は馬車の中。今朝の朝食は目玉焼きに焼いた薄肉、そしてジャムを塗ったトースト。

 アイテムマスターよろしく、腕によりをかけてつくるのさ。


 皆さん、集合時間より少し早く揃った。

この朝食を美味しそうに食べてくれる。自分の料理を喜んで食べてくれるのは、本当に嬉しい。


 昼食はそれぞれ別でやりたいことがあるため、全員ではとれない。だから、グレープさんに、"包んだ物の時間を止める布"を俺を抜いた人数分借りて、サンドイッチをもたせた。


 御者さんの一人が、『女の子からのお弁当だぁ…』とか言いながら、泣いて喜んでる。なぜ泣く。

 俺はマジックバックに放り込んでおいた。



 さてと、今日は何しようか。この町を回るのもいいけど、せっかく海に来たんだ。

 魚を狩りたい。釣るんじゃなくて、狩るんだ。あと、塩も欲しい。


 俺は早速、塩を海に置いておけば自動で作ってくれる機械を作製する。

 魚狩りも、海の中で行う予定なんだけど、防水は靴のエンチャント、[守護]が、薄いバリアをはればいい。

 呼吸は、空気を発生させるエンチャントをした布を、口に巻けばいい。

 

 問題はこの地域で自由に魚をとっていいかどうかなのだが、トズマホで調べた結果、D~B、時にはAランクの海の魔物がわんさかと出現し、とてもではないが、漁業が行えない、魔の海峡があるのだとか。


 魔物が出ることは俺にとって、全く問題にならない。

 ここで海の魔物もろとも、魚を狩ろうと思う。


 この海峡、船で8日はかかるらしい。

 俺にとっては、走って45分だ。



 魔の海峡に到着した。

 塩製造機と海に浮く床を、透明のエンチャントをかけて敷く。

 他者から見たら、透明ではあるが、持ち主には見えるようになっている。

 さらに、靴に[自由遊泳]という、海の中を自由に動けるようになるエンチャントをかける。

 今回使う、玉鋼の気痛の魔剣にも防水のエンチャントをした。

 また、いくら無限収納だとしても、海水をポーチに入れるのは嫌だったので、自分の吸い込みたい物だけ吸い込むように、ポーチに追加のエンチャントをかける。

 さらに魔物が寄ってくるように、[Eランクの笛]のみならず、D~Aも全て作る。

 

 これで準備は万端だ。

 さて、狩るとしよう。



 俺は水中で剣を構えつつ、手始めに[Cランクの笛]を吹く。

 恐らく、Cランクであろう魔物が10匹程集まってきた。

 今回は剣の気絶の効果は使わない。相手は人間じゃないし。

 それと、剣極奥義の技の1つを試してみたいと思う。



 「剣極奥義・二の舞」



 この剣技は、目で視認できる範囲の物をどんなに離れていても、斬ることができる技。ちゃんと自分の剣の効果も反映される。

 つまり、その場で回転斬りをすれば、自分中心に目で見える360°の範囲の物を斬ることができるわけ。

 故に、俺が目で見える範囲にいる魔物や、魚は全て剣の効果で無傷で死んでいる。

 

 それらをポーチに全て収納する。中々の収穫だ。今日は一日中これを繰り返していればいいんだ。


 次に[Bランクの笛]を使う。今度は魚のような魔物だけじゃなく、イカやタコもいる。全部で6匹といったところかな。

 この程度なら、[二の舞]二回で葬れる。


 改めて思うけど、やはりアイテムマスターはチートに近い。この剣も、魔物をおびき寄せるのも全てこのスキルのお陰。


 さらに[Aランクの笛]も使ってみた。ジンベイザメのような魔物1匹、蟹のような魔物が1匹出てきた。

 本当に、この海峡は恐ろしいね。Aランクなんて普通、そうそう遭遇するもんじゃないらしいんだけど。

 Aランクになると、今の俺でも若干手にあまる。[二の舞]を3~5回はしなきゃいけないからだ。二の舞一回でMPを90消費することを考えると…………さほど問題はなかったね。


 こんな感じで魔物を狩って1日を過ごした。大体13時間近くは戦ってたんじゃないだろうか?

  何回か魔物がいなくなっちゃって、他の場所に移動したりもしたけどね。


 結果はDランクの魔物41匹、Cランクの魔物29匹、Bランクの魔物15匹、Aランクの魔物7匹。それと、普通の魚大漁。


 これだけあれば暫く魚にゃ困らない。

 それと塩製造機なんだけど、塩が数tできていた。トズマホの自動計算昨日で計算した結果、人2人の一生分の塩はあるそうな。

 さすが俺が作った機械だ。もう、お塩で困らない。

 

 

 

 馬車に戻ってきた。

 途中、御者さんの一人に会い、何をしていたのか聞かれたから『釣りです』と答えておいた。

 若い女の子が好んでするもんじゃないと、笑われてしまったぞ。


 午後6時頃、グレープさん、ガバイナさん、御者さん方が全員が馬車に戻ってきた。

 グレープさんは無事に取引ができ、商売もうまくいったそうだ。

 ガバイナさんは今日1日、この町の店を、見て回っていたのだとか。大した収穫はなかったみたい。


 今日の夕飯は俺が狩った魚の、塩焼き、ブイヨンのスープ、海藻のサラダだ。


 そこそこの高級魚を出してしまい、こんなのを釣りあげたのか、と皆に驚かれてしまった。


 

 料理を食べ終わり各自、自分の宿の部屋に戻る。

 俺は風呂に入った後、すぐに眠りについた。


 明日も朝4時出発なのだ。


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