第57話 到着まで

 おはよう。

 俺はパープルさんから、みんなより1時間早く起きて、リビングや台所の掃除などをして欲しいと頼まれている。

 だから、朝の6時に起きたのだが、6時5分、掃除が終わってしまった。

 

 朝食の準備も、俺の速度で考えるならば10分もいらない。あと40分近くも暇だ。

 今、操縦している御者さんと、お話することも考えたが、邪魔するのは悪い。


 40分、暇だし。もっと丁寧に掃除してみるか。掃除用具から作製して。悪く無いかも。


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 暫くして、パープルさんが起きてきた。

 おはよう、の挨拶の次に、彼が発した言葉は



「ん~、なんでこんなに綺麗なんだ…」



であった。

 張り切りすぎちゃった。他にすることがないってのは時に、ものすごい結果を生み出すんだね。


 そんなことはさておき、ガバイナさんや御者さん達もリビングに揃った。

 今日の朝食はパン、スープ、茹で卵と、少量のサラダ。

 パンはバターの塗り方ひとつから、焼き方までこだわり、スープも、出汁などでかなり凝っている。茹で卵は半熟、サラダのドレッシングも自慢できる仕上がりだ。


 彼らはペロンと朝食を平らげ、口々に俺の料理の腕(と容姿も)賞賛してくれた。スープも沢山おかわりしてくれたし、作った甲斐があというもの。

 馬車が綺麗になっていることにも驚いていた。



 暫くは暇だ。なにかすることは無いだろうか。

俺はギルドで毎日のようにもらっていた、お菓子を食べながら考える。このマシュマロみたいなの美味しい。

 

 控えの御者さん達に暇かどうか聞いてみたところ、彼らもやはり、暇らしいので、一緒に遊ぶことにした。ジェンガで。


 やはり、この世界にはジェンガが無いらしく、どう遊ぶのか聞かれたので、『板を抜いて積み上げていくゲームで、倒したら負け』と答えた。

 この説明で理解したらしい。俺ら四人はこれを楽しんだ。

 途中でグレープさんも混ざったのは、意外だったけど。

 しかも、是非、商品化しないかとか、グレープさんに聞かれた。

 俺は金のことについてはしっかりしているのだと、自負している。

 作り方や遊び方、片付け方を全て説明するから、そのかわり売り上げの数%よこせ、と言っておいた。

 軽く了承してくれた。売れると判断したのだろう。見た目にそぐわず、ちゃっかりしてるとは言われたけどね。

 ん? もしかして割と大きな商談が決まったのか、これ?


 ともかく、お昼時になるまで、実に5時間近くも五人でジェンガで遊んでいた。


 昼食に作ったのはサンドイッチ。なお、この世界にサンドイッチは無いのだそうだ。

 片手で食べれて、美味しい、この料理にもグレープさんは目を着けた。


 サンドイッチに関しても、商談が持ちかけられたのだ。料理だし、これに関しては、売り上げの%でお金をもらうことは難しい。

 だから、今後、商品を買う際に5%引きにして貰えないか頼んだ。そこそこ渋い顔をしていたが、了承してくれた。

 俺も商人っぽくなったもんだ。


 

 昼食を食べ終わったあと、グレープさんに、港町へ行く理由を聞いてみた。


 どうやら、伝説といわれる巨大魚が釣れたらしく、それの買取と、普通に商売しに行く、この2つが目的らしい。


 わざわざ、遠くから買いに行くほどの魚にのだろう。その巨大魚、珍しいがあまり、一般には公開しておらず、俺にもガバイナさんにも見せられないのだそうだ。残念。


 午後、グレープさんと詳しい商談をした。

 割とサクサクと進み、さほど時間はかからなかったが。

 

 お夕飯はスペアリブ。勿論ウサギ。

 みんな美味しい、美味しい、といって喜んで食べてくれた。ウサギだとは、ばれなかった。


 夕飯を食べてた後は、身体をマジックアイテムで綺麗にして、到着を待つ。



 暫くして、港町パルキーニに到着。

 俺らは宿へと移動し、そこで眠りについた。

 宿だから、ガバイナさんとは、部屋は別々である。

 あと、おかしなお願いごともされた。御者さん全員はまだしも、グレープさん、ガバイナさんまでもが、パルキーニ滞在中も、ご飯を作って欲しいのだという。

 そのくらいだったら別にいい。俺は了承した。

御者さんの一人は泣いて喜んでた、なぜ泣いた。

 まぁ、お陰で皆んなより早く起きなければいけなくなったけどね。


 今は深夜1時。明日起きるのは朝の6時半。

早く寝なければ。

 おやすみなさい。



 

 

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