第45話 昇段試験

「あ、そうだ、俺はここのギルドの受付のアギトってんだ。よろしくな。新冒険者のアリムちゃん」

「よろしくお願いします!」



 無事に冒険者登録できたが、Xランクってのがなぁ…。腑に落ちない。



「あ、そうだ。ランクアップ試験は今からでもうけれるぜ?たまに子供扱いして欲しくないからって、登録してすぐにランクアップ試験に挑む奴もいるんだ。どうする?アリムちゃん。やってみるか?ふふふふふ」

「あ……はい、やってみます!」

「うん、いい心がけだ。ふふふふふふふ。あ、ちなみに一回受けたら次の週までうけられねぇぜ」



 ふふふふって、笑ってるってことは結構、意地悪な試験なのかな?悪戯でも仕掛けてるような笑みを浮かべやがって。



「じゃ、移動するぜ。試験の場所になっ」



 俺はアギトさんについていく。


 地下室のような場所に降りると、そこには体育館のようなものが広がっていた。



「よーっし!試験だぁっ!試験内容はこの砂時計が落ちるまでに俺に触れることっ!ちなみに言っとくが、俺も、元冒険者だぜ?手加減はしてやるし攻撃もしねぇけどさ」



 あぁ、意地悪そうな笑み浮かべてたのはそのせいか。確かに子供じゃ無理だわな。本当に戦闘経験のない子供だったらな。



「準備はいいか? アリムちゃん。じゃあ、ヨーイ、スタートだ」



 そう言いながら砂時計をひっくり返す、アギトさん。

 俺は数メートル離れていたアギトさんの手を一瞬の内に掴んだ。



「なぁっ……!?」

(え、見えなかった?)

「合格……ですよね?」

「……………」



 アギトさんはしばらく無言だ。相当驚いてる見たい。



「あの? アギトさん?」

「……あ?……あ、あぁ!勿論合格だ!すまん。少し驚いていた。これでアリムちゃんは晴れてFランクだ!おめでとう!」

「ありがとうございます!」

「じゃ、上に戻るか」



 俺らは上の受付に戻ってきた。



「ほらよ、ギルドカード。Fランク仕様にしといたぜ」



 ギルドカードが改めて渡される。

 Fランク仕様だという。カードに彫ってある英文字がFとなっていた。


 ちなみにギルドカードにはランク、名前、歳、登録日数、受けたクエストの数(後者3つは任意で見えなくすることが可能)が書き込んである。

 どうせだ、初仕事を受けたい。



「本当に、初日で適性年齢以下がFランクなんて、初めてだ。凄いんだぜ?」

「えへへ……そうですか?」

「あぁ、そうだとも」

「じゃあ、早速仕事を受けてみてもいいですか?」

「おっ、いいぜ! 今受けられる仕事はFランク魔物の素材採取か薬草採取ぐらいだが?」

「薬草採取してみます!」

「よし、じゃあ薬草採取な。薬草はどんなのかわかるか?」

「はい!」

「おぉ、こころ強いな。薬草は1束15ベルで引き取る。この依頼をこなしたことにするには12束あつめりゃいい。じゃ、気をつけてな」

「いってきます!」

「いってらっしゃい!」

(かわいいなー。)



 ギルドを出るとき、さっきのおじさんに呼び止められた。



「おぉ! お嬢さん! 冒険者登録したのか~~っ! どれ~~ギルドカードみせーてーみー?」

「はい.どうぞ!」

「ふむふむなになに……え………。」


 どうしたんだろうか?



「あの?」

「…………っ!」

「ギルドカードぉ……あのぉ……」

「あ、ワリィワリィ。ほらよ。これから頑張れよ!」

「はいっ!」

(ここでとびっきりスマイル)

「おお……。」



 何だったんだ?それに、おおってなんだよ。

ま、いいか。もう仕事いかなきゃ。俺はギルドを後にした。









_________________________________


「おい?ガルガロ?どうかした?あの可愛い娘のギルドカードみて固まってたろ?」

「なぁ、ジエーム、聞いてくれよぉ~……。」

「どうした?」

「あの、あの天使のように可愛い娘、 ア、アリムちゃんていうらしいんだけどよーーー。」

「天使のように可愛いい?まぁ、オーバーな表現でもないか。へぇ、いい名前じゃねぇか。その、アリムちゃんがどうした?」

「と、とにかくだ。あの娘12歳で今日、初めて冒険者登録したんだ。」

「ふぅ~~ん。じゃXランクか?でもそれがなにか驚くことあるんだ?」

「それが、Xランクじゃなくて……Fランクだったんだよ………」

「は? お前酔ってんのか?」

「んなわけねーよ! すっかり酔いが覚めちまった!!!」

「………いきなり、あの試験クリアしたってか?んなもん不可能だろ…………え、本当に本当なのか?」

「だから、そう言ってるだろっ!!!」



 俺らの声が聞こえていたのか周りの人も驚いてる。女性冒険者の一人が言い出す。



「ちょっと!ガルガロ!それ本当かい?」

「あ? だからそう言ってるだろ!」


 別の奴らも喋り出す。


「可愛くて強い……?そんなのがあっていいのか?」

「んー?いいんじゃなぇか?才能あんだろ?」



 いろんな奴らがアリムちゃんについて喋り出す。




「可愛い!強い!俺はあの娘を応援するぜ!」

「そうだな!飽きそうにないな!」

「俺も応援しようかな~。」

「あたいも応援するかな!これからに期待しよう!」

「アリムちゃんかぁ…。」




 すっかり酒場はアリムちゃんの話題でいっぱいである。









 こうしてアリムはファンを増やしていくのであった。

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