第41話 あいつが事故にあって
修学旅行が終わって4日目。
アイツは私を置いて一人で学校に行ってしまった。
そんなにドラグナーストーリーの新作が楽しみなの?私を忘れるくらいに……?
アイツとは、もう、ずっと幼馴染。
う~んと、お母さんからは2歳の時にアイツが隣に引っ越して来たって言ってたわね。その時から……かな?
あ、でも、幼馴染だからって、カップルだとか早計しないでね? 親友以上恋人未満。
いや、本当にそうであれば願ったり叶ったりなんだけど……。私が片思いしてるだけだから。
アイツ……成上有夢(じょうじょう あゆむ)に。
有夢は大のRPGゲーム好き。長年の付き合いの私を置いてくぐらいに。
だから、私は少なくとも恋愛対象としての興味はないんじゃないかな?
きっと……。
私は置いて行かれた恨みを込めて、スマホの通話アプリにこう送った。
<<ちょっと!なんで私を置いてくのよ!!>>
と。
もし、これに気づかなかったら「なんでもしてもらう権利」でもねだろうかな。
そして……一緒にデートでも……。
あ、ちなみに前に置いてかれて、さらに通話アプリに気づかなかった時はエナジードリンクを買わせた。200円の。
<<あ、ゴメンね。悪かったm(_ _)m>>
あ、すぐに返信してきた。やっぱ200円のエナジードリンクは効いたのかしらね……?
アイツは金欠でもないのに、お金にドケチだから。自分が必要だと思ったこと以外に基本、お金、使わないのよね。
でも私が誕生日の時は学生にはキツイような、かなり高価な物を貰った。アイツのことだし、私にプレゼントのこたで、とやかく言われるのが嫌だったからとかかな?
とりあえず、私はすぐさまこう送り返す。
<<罰として、有夢のお弁当のおかず、一個貰うからねっ!>>
ま、こんなもんでいいかな。アイツ、おかず奪われるのも嫌いだけどね。
……あー、そういえばなんで、いつから有夢のこと、好きになったんだっけ……?
小6のある日、窓ガラスが割れて、降ってきたガラスの破片から、私を庇ってくれた時……からだっけ?
ううん、違う。もっと前だっかなぁ……?
そんなこと考えながら歩いてたら、もうすぐ学校に着くじゃん。
……………アレ?
通学路になんか人だかりができてる?
うー、あそこかいくぐって学校行くの、やだなー。
でも、あそこ通らないと学校いけないしなぁ…。
道路の先から、白くて赤いランプをつけた車が走ってきた。
……救急車? え、人が倒れてるの? 一体何があったんだろう。
ちょっと、人だかりの一人に聞いてみよう。
「あのぉ……ここで一体なにが……?」
話かけたおじさんが答えてくれる。
「ん、あぁ、なんでもね、そこのマンションから花瓶が落ちてきてさ。それが……その……男の子が………ね、多分あそこの高校の生徒さんだと思うんだけど……あ、制服からして君もそう…だね。うん。その男の子が花瓶の下にいてさ。」
「そう…なんですか……」
あれ? あれ、あれ?
なんでだろ……。
何か、何か今まで感じたことのないような嫌な予感がする。胸が締め付けられるような。
そ、そういえば、今日、アイツ、私より早くでてるよね?家を。10分くらい?
は……はは、まさか、まさか有夢に限ってそんなこと………。
それに、アイツ、あのおかずについて返信してきた?
おかず一個取るなんて言ったら、必ず、なにかしら文句言われるのに……?
い……嫌だなぁ……私ったら。こんなこと考えるなんて……。
そう、花瓶があったった男子生徒、それがアイツじゃないって確認すればいいんだわ。
私は人ごみをかき分けて、現場を目にした。
地面に落ちてるのは私が去年の誕生日にあげたストラップがついてるサブバック_______。
そして…………私の大好きな人が、血塗れで倒れている。
有夢だ_______。
あ、今、救急車から人が降りてきて脈はかってる……。
っ……そうよ。花瓶があったからって絶対に死ぬわけじゃ______________
脈ヲ、確認シタ、人ハ、首ヲ、ヨコニ、フッタ。
「あ……ゆ………む………?」
思わず、変な声が出る。でも私はそんなことに気づかない。
周りの人だかりを押しのけ、有夢の元へ。
頭から血が。
とめどなく。
今も流れる。
叫ぶ、私は。
絶望をして。
「あゆ……む……あゆ…む……お願い、ねぇ、返事してよっ! 返事してっっ! お願いだからっ!ねぇっ! ねぇっ! ねぇ……。ねぇ? あゆむ? あゆむ? 起きてあゆむ、あゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむあゆむっ…………………………………………………
_____________________
____________________________
____________________________________
あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"
ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ""ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ""ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ ぁ ぁ ぁ あ………………………………………………………………」
______________
_______
___
あれからどのくらいたっただろうか? 私の大好きだった人が死んで。
今日は久々に学校に行く。毎日毎日、泣いて泣いて泣き明かして。
……ご飯もほとんど喉を通らなくて。
今日とイヤイヤ学校に行く。
私が泣いてると、アイツ、安心できないかもしれないし。
後悔してることは沢山あるの。
あの日、私も10分早く出ればよかった。
もっと優しくすればよかった。
告白、修学旅行中にしとけばよかった。
いや、もっと早くに。
好きだよって、大好きなんだっよって、伝えて……おけば………っ……よかったっ……!!
うん……だめ。もう周りに心配かけられない。悲しいのは私だけじゃないんだ。
おじさんだって、おばさんだって、アイツの弟の叶君だって。
お母さんだって、お父さんだって、妹の、桜だって。
アイツの親友の翔、クラスのみんなだって。
私だけがクヨクヨしてても何にもならない。アイツに顔、あわせらんないや。
でも、でも、最後にこれだけは……。
私は例の通話アプリを開き、アイツにとの個別チャット、おかずの件の下に、こう書き込む。
<<ずっと、ずっと、大好きでした。今までありがとう。大好き。>>
……と。送信ボタンを押す。
もう、送る相手はいないけど。アイツが見てくれる。そんな気がするから。
ただね。これが歩きスマホだったのがいけなかった。
普通だったら間一髪でかわしてたかもしれない。
でも、私はアイツのことと、目の前のスマホで頭がいっぱいで。
……歩道に突っ込む大型トラックに気づかなかったんだ。
キィィィィィィィイイイイッッ!!
ドゴン__________________________
これが、私がこの世界で、一番最後に聞いた音。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます