第39話 宴
村の中央かまのどかなはずただった村ではなく、完全にお祭りモード。
沢山の料理と村の人々の活気で村が満ち溢れている。
「あぁっ!英雄様たちだぁ~~!」
その子供の声を合図に、村からは
「英雄様っ~!」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「いんやー、すごいべ」
「きゃー!アリムちゃん可愛い!」
様々な歓声が聞こえてきた。
「皆の衆! しずかにするのじゃ!」
そんなジーゼフさんの一声でその歓声はおさまった。
おさまったのを確認すると、ジーゼフさんは話し始める。
「ルイン殿、オルゴ殿、リロ殿、ミュリ殿……そしてアリムちゃん。この村を、命懸けで救ってくださり、本当にありがとうございましたっ!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
村人全員からの……感謝。
ルインさんはにっこり笑い、オルゴさんは照れくさそうにし、リロさん、ミュリさんは微笑んでいる。助けた甲斐があるってものなのだろう。
「ふむ……こういうのも、また良いものですな」
「うっはwwwテラ賑やかwww」
と、商人さんと御者さんは言う。
そして、ガーベラさんが一声をあげる。
「さぁ、皆で宴を楽しみましょう!」
それを合図に宴がはじまる。みーんな、飲めや歌えの大騒ぎ。
酒を飲み、料理を食べ、踊りを踊り歌を歌う。
途中、商人さんによる、灰騎犬解体ショーや御者さんによる1発芸もあった。
俺のところには村の子供たちが集まる。
「明日っ……行っちゃうんでしょ?」
「その髪飾りつけたアリムちゃんかわいー!」
「また、いつでも村にこいよな!」
「竹とんぼ、ありがとー!」
と口々に言ってくる。俺は天使の微笑みで、
「またねっ、皆っ!」
といってみる。
あれ、男子、みんなホッペ赤いぞ? どうしたんだ、男子そろって風邪か?
そんな子供達はよそに、俺はふと、ジーゼフさんの方を見ると、なにやら商人さんと話し込み、オロオロしていた。どうしたんだろうか。
「あ……アリムちゃんかね。実はな、いま商人さんと金銭的な話をしていてな。まぁ、いつもどうりの村の取引の方はなんら問題ないんじゃが、宴用の肉が足りなくてのぅ……。買いたいんじゃが、いま、在庫がないと……」
しょーがねーなー。
俺の秘蔵の、小ドラゴンの肉、もといチャイルドラゴンの肉を分けてやるか。
そのことを話すと、
「え?手持ちにアリムちゃんは肉があると……?いいのかのぅ……悪いのぅ」
と村長は申し訳なさそうに言った。
俺はポーチから8~10匹分のチャイルドラゴンの肉を取り出す。
それに反応したのが商人さん。
「チャイルドラゴンの肉っ!? なんであんなに。あれだけで50000ベルだ!」
とか言ってたけど気にしない。ついでに真・料理を持っている俺が調理してやるよ。
この肉を全て使って「ローストドラゴン」をつくる。さぁ、みんなの感想は?
「プリティーなおにゃの子の手料理wwwテラ嬉しすwww…………いや、いくらなんでも美味すぎだろ、ワロエナイ」
「これは……!? お肉の焼き加減とソースの旨味がなんたらかんたら……」
「うめぇ、うめぇよこれ……なんだよ……」
「王様にお仕えする料理長の料理と同じ味がするっ!……グレートポーションといい、あのマジックバックといい、あの娘は本当に何者……?」「アリムちゃん………君は……一体?」
ルインさん、商人さんが俺のこと怪しがっている。さっきまでふざけてた、御者さんまで、なんか言ってる。
うーん、また調子のっちゃったかな?
まぁ、明日にはここには居ないし、いいよね?別にさ。
しばらく、こうして楽しんでるとガーベラさんに呼ばれた。倉庫らしき小屋の前に。
「料理、この世のものとは思えないほど美味しかったわ。アリムちゃん、貴女、本当に何者なのかしらね」
「わかん…ないです」
「いいえ、貴女はアリムよ。アリムちゃん。アリムちゃんはアリムちゃんなの。……って、そんな話しをしに呼んだんじゃなくてね?薬草よ、薬草。そのバック、無限に入るんだったら、村の薬草は全部持って行って構わないわ」
「……! え、全部…ですか?村の分は?」
そんなに渡しちゃって、大丈夫なのだろうか?
「大丈夫、グレートポーションを普通の水3滴ぐらい垂らすだけで、それはポーションになるの。
つまり、貴女がくれたグレートポーションでここにある薬草よりもポーションを作ることができるのよ?だから、きにしないで?」
「はい……わかりました。頂きます」
ポーチで小屋の中の全ての薬草を一瞬で吸い込んだ。
「ありがとうございますっ!」
「さぁ、宴に戻りましょうか」
「はい」
ガーベラさんが倉庫から出ようとする。
俺はこの瞬間にSの全てを集約させて、2本のグレートポーションをガーベラさんにわからない一瞬のあいだに倉庫に置いた。
『つかってください』と書き置きを残して。
……この日、真夜中まで宴は続いた。
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