第38話 いじられアリムの取引
俺は何故か今、ミュリさんの膝に座らされて、
「可愛い! あ、これも可愛い!」
リロさんにそう言われ、まるで着せ替え人形のように、髪飾りを着脱されている。
「ミュリさん、ボク、重くないですか?」
「むしろ、軽いくらいですよ~」
と、ミュリさんに聞いてみたが、俺の前で組んでいる手を解く様子はない。
リロさんはリロさんで相変わらず俺の頭をこのねくりまわしている。
「あ、これもいい! こっちもいいなぁ……」
ところで、男性二人はまるで微笑ましい光景でも見てるような顔してるんだよね。助けて欲しいな?
「うん! やっぱりこれが一番いいよ~っ!」
リロさんの中で何かが決定したみたい。
「ミュリ! 見てみて!」
「どれどれ……わぁっ!」
「「可愛い~~!!」」
一枚の手鏡を見せられた。そこには金色の髪飾りをつけられた、絶世の美少女(俺)が居た。
「アリムちゃん、それ、あげるぅっ!」
「え? いいんですか? ありがとうございますっ!」
なんか髪飾り貰った。たまにはこういうのもいいかも。
「ミュリ、次、私がアリムちゃんお膝に乗せるっ。かわって!」
「わかりました! リロ、今度は私がこの天使のようなお顔を、まじまじと見つめる番ですねっ!」
俺はミュリさんからリロさんへと移された。こういうのいいかもとか考えない方が良かったかな?
「きゃ~~!アリムちゃん!可愛い!ギュ~~っ!」
あの、抱きつくのやめてもらえますか? 2つほど大きい物が当たってるんですよ。いやマジで。
本当に俺、今、男じゃなくて良かったわ~。このスキルの本来の異性は同性になる効果すごいわ~。
「あ!リロ、ずるいっ!いいんですもんね~~!私はアリムちゃんのほっぺプニプニしますもんねぇ~~っ!」
(プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニ)
あ~~ほっぺがプニプニされてるぅ~~。
大体、プニプニされ始めて1分くらい経った頃だろうか?ガーベラさんが医務小屋に戻ってきて、
「アリムちゃん、馬車と商人さんが来ましたよ!」
と報告してくれた。
おい、ガーベラさん。……俺は聞き逃さなかったぞ。
今一瞬、二人に向かって「羨ましい」って言っただろ。
「アリムちゃん、行きましょう。」
あ~。やっと解放される。
「むぅ~!行っちゃうのぉ~!?」
「しょうがないですよ、リロ。ううっ…」
あからさまに悲しそうな顔しないでくれよ。
しょうがねぇなー。
「リロさん、ミュリさん、一緒に来ます?」
「「うんっ!!」」
「アリムちゃん、僕達もいいかな?」
「確かに、その小物入れ気になるからな。」
あ、二人もきたいの。いいよ。俺は了承した。
__________________
___________
_____
「ほう、何を鑑定して欲しいのですかな?」
口ひげのポッチャリ体型に高そうな服に商品を扱うためなのか、白い手袋をしてる。完全に商人の見た目だ。
あー、鑑定スキル絶対持ってるよなー。みせたくないなー。
「これなんです、マジックバック、物が沢山入るんです……。その、物がどのくらい入るのか見て欲しいんです。」
そう言いつつポーチを見せる。
「少し手にとって見てみてもよろしいかな? お嬢さん?」
「どうぞ」
「ふむふむ、ほうほう、………これはっ!」
「どうだったんですか?」
「まず…だ、素材は金王犬という、ランクAの魔物の皮だ。そして糸には、銀臣犬というランクBの魔物の毛製の糸が使われておる。なめしの技術と裁縫技術もそこらへんの職人じゃ、相手にならないほどの代物だ。まずは、この小物入れの価値だけで大金貨9~10枚はするだろうな。」
ふふん。その職人は目の前にいますよ? 目の前に。
ま、そんなこと口が滑っても言わないけど。
「そして、この小物入れのなまえ、『金王犬の革のマジックポーチ』というらしいが、これに込められているエンチャントが凄い!『無限収納』だ。収納の最上位。無限に入る。さらに価値は国宝!これには大金貨100枚だしても200枚だしても足りん……!!」
「……それ程の価値のものを何故、アリムちゃんが?」
「うむ、私も知りたい。お嬢さん、それをどこで?」
ヤバイ、そんな価値があるものなのか。
よし、記憶がないことにしよう。いつものことさ。
そんなこと考えてると、ルインさんがかわりに話してくれる。
「この娘、その……。記憶を失くしてまして… …。森の中で倒れているのを僕達が救出したのですが、その時からすでにこのマジックバックをもってました。」
「それは……それは……また何という。………そうだ、お嬢さん、これをあげよう。所有者の認めた者か、高い鑑定スキルを所持している者しかこのバックの真実の姿が見えなくなる、マジックカード、「偽化」。そのバックを狙う悪い奴がいるかもしれんからな。あ、勿論、「偽化」は何度でも着消ができるからな。」
え? そんなもんくれんの? やっぱり金持ちは凄いね。ありがたい。
「え? いいんですか?」
「あぁ、いいよ。まぁ、私達の商会を贔屓にして欲しいぐらいかな。」
あ、そうだ。せっかくだし、なんか売ってみるか。ポーションとか、ポーションとか。
「じ、じゃあ、1つ、売りたい物が……」
「ほう?、何かね?」
ルインさんが悟ったような顔してる。そのまさかだよ。
俺はポーチからグレートポーションを取り出す。
「これなんですが……」
「グッ!グレートポーションだとっ!ほ、本当に売ってくれるのか?」
「はい、えと……いくらになりますか?」
「いまはな、グレートポーションの価格が高騰していてな。一本大金貨4枚だ」
「じゃ、大金貨3枚で売ります」
「え? なぜだい?」
「マジックカードの御礼ですっ!」
「おぅぅ……私は別にいいんだが……。どうしてもというのなら……その値段で取引しなくも……ないが?」
「ええ、どうしてもっ!」
「あ、ああ、わかったよ。買い取ろう。それにしても………このポーチといい、グレートポーションといい、この娘は一体なんなのか……」
俺は大金貨3枚を受け取り、ポーチに貼り付けた。ふへへ、いきなり300万円ゲットだぜ。
100万値引きしたのは、今後の取引をしやすくするため。
別にタダであげてもいいんだけどね。
「ふむ、いい取引をした。それにしても、村が騒がしいですな。前に来た時はもっと静かだったような?」
「ええ、商人さんここにいる5人が偶然村にやってきた灰騎犬を、倒してくださいまして……その御礼という意味と、明日、王都に買える4人と記憶を探しに行くこの娘への送迎の宴です」
「ん、5人。お嬢さんと……おぉ、冒険者パーティ、セインフォースの皆さんでしたか。なるほど、灰騎犬を倒したと、ほうほうほう。それは中々」
「よければ商人と御者さんもどうですか? ご一緒に」
「よろしいのですかな? 村長夫人?」
「ええ」
「ではお言葉に甘えましょう」
「うっはwwwあざますwww」
「あ、それとセインフォースの皆さん、灰騎犬の買取は後で私が行いましょう」
「あ、お願いします」
「おーーーい!宴の準備ができましたのじゃ~~~!」
ガーベラさんが、商人さん、御者さんを宴に誘っている途中、ジーゼフさんの呼ぶ声が聞こえる。
俺ら8人はその声が聞こえる方へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます