お城 (サナダ)
「ほ、ほんとにここに入るの?」
「うん」
アナズムに来て、十日目。
ローズちゃんやマーゴちゃんとは一旦別れ、女子会の続きをまた別の場所ですることになった。
どうやらこの女子会であゆちゃんの次に主軸となる人物がそこにいるらしい。普段はその子もあゆちゃんの屋敷に尋ねるそうだが、忙しくて来れず、今回はこういう形式を取ることになったそうな。
そういうわけで私たちは屋敷から移動していた。私にとってはアナズムに来てからはじめての外出。
街の様子はまるで中世ヨーロッパ。あからさまなファンタジーの世界。これはあの神様の趣味なのだろう。
街を行く人々は様々。リルちゃんやローズちゃんのような獣が混じった人間もいれば、耳が長いエルフ、髭の生えたドワーフといった多種多様な種族が行き交っている。あと地毛の色が奇抜。赤とか青とか緑とか。改めて完全に別世界なんだなと実感させられた。
あと、あゆちゃんとミカちゃんは今変装をしている。二人はどうにもこの世界ではトップアイドルみたいなものらしいので、ほんの数秒の外出でもこうらしい。まあ、それは仕方ない。あれだけ地球じゃ芸能関係に着くの嫌がってたのにとは思うけど。
……とにかく、ここまではいい。リルちゃんに耳が4つあったり、ドラゴンの女の子がいたり、魔法やスキルがあったりする時点で腹は括っていた。
問題は、今、私たちが立っている場所。
それは神様を除いてこの国の一番偉い方がすむところの前。そう、お城。でっかいお城の前。本物のお城。
あゆちゃんとミカちゃん、そしてリルちゃんと桜ちゃんがまるでこの場にいることが当たり前のようにふるまっている。
というか、そもそも、あゆちゃんの屋敷がこのお城の実質お隣さん。……改めてこの子がこの世界でとんでもないことを色々してきたというのが事実だと、身に染みる。
「いつもお疲れ様です。カルアちゃん達と遊びに来ました!」
「はっ! ようこそおいでくださいました! ぜひお通りください!」
あゆちゃんが変装をとき、『アリム』ちゃんの姿を表すと、門番の人が顔パスで通してくれた。初対面のはずの私もいるのに、それすらも不問で。どれだけ信頼されているのだろう、あゆちゃん達は。
「いやー、お城に来るのも暫くぶりだね」
「私たちにとってはね。春休みずっと来なかったから」
お庭も立派。王族の方はこういうところで超高級な紅茶を飲んでオホホホだなんて言って談笑したりするのだろうか。漫画みたいに。うーむ、気になる……。
広い庭を通って、ついに城の玄関まで辿り着いた。こちらが何もしなくても大きな扉が開く。そこからいかにもな使用人、あるいは執事であろう人が現れた。
「こんにちは!」
「ようこそおいでくださいました。姫様方がお待ちです。さ、中へどうぞ」
「お邪魔します!」
慣れたように皆んなは城の中へ入っていく。もちろん私もそのあとに続いた。目の前に広がるシャンデリアや豪華絢爛な装飾品、まるで絵に描いたようなお城の内部。本当にドレスコートじゃなくてよかったのだろうかと、今更になって不安な気持ちになる。
あゆちゃん達が見ている目線の先に誰かいた。三人の女の子だ。たぶん、この子達が今回の目当てなんだろう。
「カルアちゃん、来たよーー!」
「アリムちゃん、ミカちゃん、リルちゃん、サクラちゃん、いらっしゃい!」
真ん中に立っていた、金色でふんわりとした髪型をした女の子があゆちゃんとみかちゃんに向かって駆け、抱きついてきた。文字にするとダイナミックなようだが、これらをあくまでお淑やかにこなされている。
この子が、先ほど門番さん達に告げていたカルアちゃん……か。なんだかものすごく高貴な雰囲気。この子が、このお城のお姫様なのだろうか。
「今日はもう一人連れてきたんだよ、地球から」
「まあ、アリムちゃんがチキューから誰かを連れてくるなんて珍しいですね」
カルアさんと私の目が合う。こうしてみると、あゆちゃん達と一緒に居るのが相応しい物凄く美人な子だ。そして可愛らしくていい匂いがする。
「初めまして。私、カルア・メフィラドと申します」
「あ、お初にお目にかかります。私はフミ・サナダと言います。よろしくお願いします」
「ふふふ、ゆっくりしていって下さいね」
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」
カルアさんとのお話が終わったところで、ミカちゃんが私にメッセージを送ってきた。
【さなちゃん、わかってると思うけどこの子は……】
【やっぱりお姫様なの?】
【そうそう。でもあんまり過度にかしこまらないようにね。この子、そういうの嫌いだから……】
【分かった、善処する。それで、あの二人は……】
【自己紹介しあったあとに教えたげる】
すごい、本物の本当のお姫様と喋っちゃった。たとえ異世界とはいえ、このひとときは一生モンだわ……! くれぐれも不敬のないようにしないと。あ、いや、そういう畏まるのがダメなんだっけ? なかなか塩梅が難しい……。
続けて、私達と同い年か少し上なくらいに見える後の二人も私達に近づいてきた。その二人はまず、私の前に立つ。
「それでは私達も名乗りましょうか」
「だね! 私はリロ、こっちはミュリ! よろしくね!」
「は、はい! フミです、よろしくお願いします」
リロさんとミュリさん……当然のように美少女だ。この世界はもはや美男美女しか居ないのではないだろうか。
まあ、それはともかくこの二人、体型が対照的だ。
まずリロさん。すごい。バインバインだ、なんだこれは。おそらく大きめのIカップだろう。リルちゃんがたしかGかHだったからそれより大きい。とても生活し辛そうだ。
頭文字が「り」で二文字の名前のアナズム出身の女の子はみんなこうなるのだろうか。
そしてミュリさん。その……あんまり失礼にならないように言えばリロさんの真反対。ヘタをすれば、女の子版のあゆちゃんと同等くらいか。流石に男版に近いということはないだろうけれど。
「フミちゃんかー! フミちゃんも可愛いねぇ!」
「あ、ありがとうございます」
「これでこの女子会も総勢10名ですか。やれることがまた増えますね!」
ミカちゃんが再びメッセージを送ってきた。
【じゃあ、紹介すると。ミュリさんがこの国の大司教の娘さんで、リロさんが大臣の娘さんなの。この国じゃ大司教と大臣あと騎士団長の地位の強さはほとんど一緒ね】
【なるほど……早い話が貴族のお嬢様ってことか】
【そうそう、そしてカルアちゃんの姉代わり。二人とも十八歳で、実際の私たちより一つ上なんだよ】
【ふむふむ】
【ちなみにリロさんの彼氏はこの国の第二王子なのよね。私と有夢くらいの間柄なの】
【なんと……!】
そんな話をされたら……されたら……わ、私の取材欲が! 知識欲が! 気になる。この三人のことが。
「あ、あの……フミちゃんさん? 目が血走ってますが、体調がよろしくないのですか?」
「あーあー! あの、この子はねカルアちゃん、その、たまにこうなるんだよ、うん。その、仲良くなりたい人が前にいるとね」
「まぁ……!」
超ナイスフォロー、あゆちゃん。
たしか今日はお泊まり会だったはず。こってりねっとりと……あ、でも失礼なないように、取材を……! 取材を……!
#####
一ヶ月ぶりです。
何かこのあとがきに残そうと思っていたのですが、何を書こうとしていたか忘れました。
(・ω・`)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます