第1106話 目標と計画
「ふぁああ……あ?」
俺は起きた。そして、この部屋にある太陽からこの世界の大体の時間を割り出してくれる時計をみる。……午後2時半。もうお昼時すら過ぎてオヤツの時間が近くなってるのかぁ。
まあでも、仕方ないね。昨日は久しぶりだったこともあってお互い我慢してたことをめいいっぱいやったからね。その結果、眠れたのがお日様が出てからだったし。安全に色々できるって状況に甘んじてたのもあるね。うーん、たぶん十七時間はハッスルしてたんじゃないかしらん。おかげで身体中が怠い。
とりあえず起き上がって、軽いものを着て美花の様子を見る。さっきまでの俺と同じで泥のように眠ってる。美花は特に、一昨日の人型の魔物にされそうになったことの記憶をかき消そうと頑張ってたし。でもとりあえず起こしちゃおうね。
「美花、起きて」
「……ふぁ……もう朝?」
「おはよ! お昼の2時半だよ」
「お昼の……ああーー」
美花はため息をつきながら体を起こした。そして、眠気から細くなってしまった目で俺のことをジッと見つめると、自分の体をペタペタと触り始める。
「ベトベト……シャワー浴びたい」
「俺も浴びる」
「一緒にいこ……」
というわけでシャワーを浴びて心身ともにスッキリした。頭が冴えたらお腹も減ってくる。ちゃんと身嗜みを整えてから朝ごはん兼、お昼ご飯兼、オヤツに何か食べることにした。
「何食べたい? さくっとクリエイトで出しちゃうよ」
「えっとねー、うちのカフェのパンケーキ! 千年樹サイズで二種のベリーソース、バニラアイス添えで」
「千年樹サイズって俺たち二人でも食べきれないじゃない……」
「でもお腹減ってるんだもん。はらぺこな私たち二人で食べれば完食できそうじゃない?」
「そう? ならいいけど」
というわけで超特大怪物サイズのパンケーキを食べながら俺と美花は今後どうするかの二人会議を始めることにした。
「まずはね、ひとまずの大きな目標を決めたいんだよ」
「目標ねー……最終目標はここから出る! でしょ?」
「そだね。それまでに……」
「目標掲げるなら、私はあのアナザレベルも倒せるくらいここで強くなっちゃえばいいと思うよ。ほら、マスターのスキルを私と有夢で合わせて百個手に入れるとかさ」
「じゃあ目先の目標はマスタースキルを増やす、でいいのかな?」
「うんうん!」
それにしても美花ってばよく食べるな。相当お腹減ってたんだね。しかしマスタースキルを増やすといっても、俺たちはこのステータスにあるだけのスキルしか使えない。百個は流石に冗談で言ったのだろうけど、それでも複数個なんて簡単にできるとは思えないなぁ。この世界にダンジョンが置いてあるかどうかもわからないし……。いや、まてよ。ダンジョンとかが無くても外部からスキルを増やす方法、ないわけじゃないぞ?
「問題はこのステータスをどう増やすかよね? でも多分だけど、宝箱から出てくるようなスキルがないと作れないマスタースキルもあるだろうし……やっぱり難しかったかな」
「あるよ、外からスキルを取り込む方法」
「あるの!?」
「たった今おもいついたんだ、ききたい?」
「ききたい、ききたい! 流石は有夢!」
「えっへん!」
思いついた方法というのは……そう、SSSランクの魔物達からスキルを奪うんだ。もともとアイテムマスターとダークマタークリエイトによってエンチャントカードの原板、スキルカードの原板を作ることがアナズムでできていた。
スキルカードの原板はそれを額にかざした人が任意で、持っているスキルをカードに吸収させ、人にスキルを譲渡することができるというもの。
だからそのスキルカードの原板の任意性を無くし、魔物からスキルを奪えばいいってわけ。しかもSSSランクの魔物はだいたい固有だったり超特殊だったりするスキルを複数持ってることがあるから(カオスブラックドラゴンのような人間だけ弱らせるものやニャルラホテプのような変幻自在に変身できるものなど)、強力なスキルを作るのには困らないでしょう。
そもそも魔物にもスキルやステータスが設定されてるっていうのはローズを人間にしたときに確認済みだしね。これならいける!
「なるほど……それなら確かにやりたい放題できちゃう気がする! でもどうやってその任意性とやらを取り除くの?」
「アイテムマスターなら可能じゃないかな? それにザ・クリエイトはダークマターのほうより自由度が高くなってるみたいだし」
「じゃあいけそうね! さっそく出掛ける? これ食べ終わったら」
「いや、その前に作らなきゃなものがあるよ、これ食べ終わったら」
俺と美花はなんとかパンケーキを食べ終わった。うぷ……お腹いっぱい。甘ったるい。美花は大丈夫そうだけど。あとで胃腸薬飲んだ方がいいかな。それは置いておくとして、とりあえず作るべきものを作る。ひとまずこの二つだ。出来上がったのは二つの球体だよ。
「なにに使うの? 二つとも」
「一つは見覚えあると思う。俺と美花をパーティとして登録してくれるギルドのアイテムだよ」
「ああ、あれかぁ!」
「そしてこれは特別性。俺と美花がどんなに離れていても経験値が共通して入ってくる上に、超過した経験値を好きなだけ溜められるんだ。まあつまり、パーティ組みのアイテムとトズマホの一部機能を複合させたものだね!」
「なるほどなるほど、これでレベル上げが楽になるわね! それでこっちは?」
「こっちは衛星だよ。ほら、アナズムでも魔物や街の様子を見るためにこーゆーのたくさん飛ばしてたでしょ?」
「うんうん! じゃあいままで向こうで使ってたものをこっち用に作り直したって感じ?」
「そんな感じ!」
さて、二つとも運転させてみるかな。
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