第1107話 魔物のスキル

 飛ばした衛星が何匹かの魔物を捕らえた。でもやっぱり伝説級程度じゃ完全にはSSSランクである全魔物を確認することができないみたいで、いるかいないのか曖昧なものとか、映像ではチラリと写ってるのに情報が送られてこないものとかがいる。

 神具級のアイテムを作れればこんなことにはならないのだろうけれど……どっちみちそこまでできるようになったらこの世界脱出できちゃうと思うよ。とりあえずここから一番近場にいるっぽいクマさんの魔物を倒しに行くことにした。



「私と有夢で二手に分かれなくていいの?」

「もうちょっとステータス付けてからにしようね。二人で行動した方がまだ安全だから」

「たしかにそうね」



 衛星からメッセージで送られてくる位置情報を元に、クマさんの魔物の元にたどり着いた。いや、たどり着いたのはいいんだけど、超巨大な蜂の巣の前に立っている。熊と超巨大な蜂の魔物が蜂蜜を巡った争いをしていたんだ。この蜂の魔物は熊の次に倒そうと思ってたやつだね。



「グオオオオオオ!」

「ブゥゥゥゥゥゥン」

「どうする?」

「とりあえず動けないようにしたら?」

「そだね!」



 不意打ちに近い形で、二匹の魔物を魔法で地面に埋め込み、念術で縛りつけた。首から上だけが顔を出している。二匹とも本来はいかつい見た目をしているはずなのに、急なことに驚いているのかキョトンとしている。

 とりあえずはクマさんの方からスキルを頂戴しようかな。



「それで、どうやってスキルを奪うの? いや、奪うだけなら新作スキルカードでできるのかもだけど、欲しいスキルカードだけ選別するのって?」

「ふふふ、じゃじゃーん! 魔物専用パーティ登録機ぃ~~」

「……?」

「簡単に説明するとね」



 パーティ登録をする機会は他人には見えないようになってるけど、ステータスを読み込む機能が備わっている。今作り出したこの新アイテムはステータスがある存在全てを勝手に人間と仮定し、一人でパーティ登録をこれまた勝手にさせ、さらに本来なら秘匿にされるステータスの情報を俺たちに見れるように改造したもの。伝説級でも頭を捻った応用とクリエイトの自由性を活かせばなんでもできるね。



「なるほどねー。じゃあ早速見てみてよ」

「うん」



 熊の魔物の名前はベアバーサーク。普通のSSSランク。ステータスポイントは攻撃と素早さ、防御、HPの順番で厚く割り振ってるみたい。ステータスポイント自体の合計はレベル255の人間と同じだけど、基礎のステータスが何倍もちがう。亜種ってわけじゃないのに圧倒的に魔物の方が高い。それにしっかりとプラス効果がある印や称号がたっぷり。……通りで同じランクの魔物相手でも人間は頭を使わなきゃ勝てないわけだよ。全体的に劣ってるようにできてたんだね……まあ、地球で考えたら生き物のこんな感じの差なんて普通だけど。

 持っているスキルは、カテゴリ1は基礎のもの(合成しても消えないAランク属性魔法)全てと……Aランク以下たくさん、Sランクのスキル3個、SSランクのスキル1個。カテゴリ2は星2つ以下がたくさん、星3つが7個、星4つが2個、星5つが1個。今まで気にせず倒してきたけど、SSSランクの魔物ってこんなスキル構成してたんだね。わざわざ魔核とか使って合成や進化させてるのかな? それとも体自体の進化でスキルも強くなるのかな? 前者だったらいそいそとスキル合成するいかついクマさんを想像しただけでほっこりするね。でも根拠ないけど後者の気がする。



「めぼしいのあった? 男女変換とか」

「え? 男女変換ほしーの?」

「ううん、そろそろアリムのフニフニ感が懐かしくなってきて……」

「そ、そっか。でもこの魔物にはないみたいだよ、さすがに。めぼしいのは……一応あるね」



 でもいい感じのはそれぞれのカテゴリの最大級のものだけかな。SSランクのスキルは『金剛裂爪』。空間を裂けるほどの爪による攻撃らしい。星五つのスキルは『豊穣神の眠り』。数分でも眠っただけで死にかけの状態からでも復活でき、MPも状態異常も完全回復、そのうえ目が覚めたあと次に眠るまでの間疲労を全く感じなくなり、補助魔法がかかってるの同じくらい身体能力が向上する。身体能力向上に関しては寝た時間が長いほど強力になる。……冬眠ってどこらじゃないね。

 とりあえず前者は合成に、後者はそのまま使えるからもらっておこうかな。特別性のスキルカードをベアバーサークの頭にかざすと、ベアバーサークは嫌そうに身をよじらせた。クマさんの抵抗も虚しく、無事、俺は目当てのものを手に入れる。なんだかもう一方の獲物であるあの蜂の魔物が信じられないといった表情で見てくるよ。ベアバーサークは脳味噌をこねこねして倒した。



「とりあえずどっちも有夢が覚えなよ。ただでさえ意味不明なほど底無しの耐力がさらに強化されるなら儲け物だし」

「わかった。じゃ、次は蜂の方をみようね」



 とても大きな蜂は俺らが顔を向けると、イヤイヤと首を振った。とりあえずステータスをのぞいてみる。この蜂の名前はビー・メリッサ亜種。なんか人みたいな名前だし、亜種だったのか。

 めぼしいスキルがしっかりあった。まずSSランクのスキル『ネクタル』。補助魔法系の魔法で、この魔法をかけられた毒物、あるいは毒を持つ生き物のその毒は一定時間、ステータス・星5スキル以下の毒耐性を無視して即死効果をもつヤバいやつ。アナズムにいた頃の俺でも気を抜いてたら即死させれるってこと。……やっぱりSSSランクは気が抜けないね。

 そして星5スキルが二つ。一つは『女神の勅令』。相手より自分の方が強さ的に格上か、相手自身がこのスキルを持った相手に従う意思があるなら相手にどんな命令も聞かせるというもの。そして血縁者も他者に対して同様の力を持つようにすることができる。人間が覚えてたのなら、光夫さんの『強制契約』の完全ではないけど上位互換に当たると思う。

 そしてもう一つは『究極空間移動』。これが亜種としての力みたい。おそらく本来は早く移動するスキルだったものが亜種に進化することによって限界突破しちゃったみたいな感じだと思う。効果は大雑把にいえば瞬間移動や叶のスパーシオペラティオンと同じ。きたよこれ、超大当たりだね。間違いなくもらっておこうね。

 それぞれを回収しちゃったらビー・メリッサは倒した。たぶんだけど、空間移動あるのにベアバーサークと戦おうとしてたのは巣の持ち運びが間に合いそうになかったからかもね。

 巣の中にはまだ魔物がいるっぽいけど、女王蜂を倒してしまったからか出てこようとしない。レベルのために戦ってもいいけど、繁殖してもらって魔物を増やしてくれた方がいいから生き残らせておこうね。



「よし、こんな感じかな! ネクタルは保留にして、空間移動をもらっていい? 美花には女王の勅令をあげるよ」

「ほほう、私は有夢に好きに命令してもいいのね?」

「まあ美花なら俺、何されてもいいもん」

「でも私、有夢に対してはSなことするよりMでいたいのよね」

「それたまに言うけど、こっちからしたら嘘つけ! だよ」

「嘘じゃないわよー!」



 どっちかといえばいつもガツガツくるのは美花の方だからそんな印象は全くない。そもそもそーゆープレイをするときはかわりばんこして遊ぶからどっちがサドでどっちがマゾとかないし。……たぶん。いや、でもたしかに比較したら俺の方が美花をどうこうすること多かったような? とりあえず美花は女王の勅令をあんまり使う気はなさそうだね。それにしてもSSSランクの魔物からスキルを奪うのは思ってたより有用みたいだね。……さて、次だよ、次!

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