第1088話 ここはどこ?
「ん……んぁ?」
えっと、俺は確か……そう、二代目アナザレベルらしい日本人になんかよくわかんないことされて、それで……。
ここはあったかいお布団の中じゃない。冷たい冷たい土の上。目を開けてみるとここが森の中であることがわかった。なんだかデジャヴを感じる。
木々は不気味なまでに黒々としていて、空は薄い青紫色。いかにも禍々しい感じに設定しましたっていう感じだ。そして結構肌寒い。一体どこに送られてきたというんだろうか。
……そうだ、美花! 美花が俺が何かされる瞬間にお屋敷から飛び出してきたんだった。どうしよう、心配だ。とりあえずこの変な空間から出なきゃ。
一旦この場所の全体を見渡そうと後ろに下がってみると、かかとが何か柔らかいものにぶつかった。慌てて振り返ってみてみると、それは、美花だった。
なぜかうちの学校の制服を着ており、髪色は黄緑でなく、綺麗な黒。そう、元の美花そのままの姿だ。
「ご、ごめん!」
「……」
蹴ってしまったことを謝ったものの、美花の意識はないみたいで何も反応してくれない。ただ、息はあるのは見てわかる。ふつうに気絶してるだけみたいだ。
よく見たら俺も、『アリム』ではなく『有夢』の姿でいる。ちゃんと制服も着てるしね。もちろん男子用の。
とりあえず美花も一緒にあの変なブラックホールみたいなのに飲み込まれたんだね。安否を確認しなくて良くなったけど、めでたいことじゃない。ひとまず美花を起こそう。
「みか、起きて!」
「ん……ぅ……」
「起きたらキスしてあげるよ」
「うん!」
勢いよく美花が飛び起きたので俺と美花のおでこがぶつかった。痛いけど、跳ね起きられるだけ元気なのはいいことだ。
「おはよ、美花」
「あっ……あゆむぅ!」
美花は涙目になりながら俺に強く抱きついてきた。俺も美花を抱きしめ返す。何分かそのまま抱擁をしたところで俺たちはやっと離れた。さて、真面目に状況確認しなきゃ。
「で、これはどういう自体なんだろう。美花、わかる?」
「あ、えっとね。あのアナザレベルらしき人が有夢を攻撃した時に言ってたんだけど……」
美花の話では、どうやらあの人は絶望させるために俺をここに送り込んだらしい。なるほど、いつもの嫌がらせの最終章ってわけか。一体俺に嫌がらせして何になるっていうんだろうね。……まあ、昔から女の子みたいな俺を誘拐したり脅したりしては喜ぶような変態な大人もたくさんいたし、アナザレベルもそういう趣味なのかもね。
「標的は俺なのになんで美花もいるの?」
「なんかよくわかんないけど、私がここに送られてきたのはあの人にとっても予想外みたいだよ?」
「んー?」
頭の中にたくさんはてなマークを浮かべるしかなくなった、その時、空から一枚の紙切れがヒラリと降ってきた。すごく懐かしい気分になる。とりあえず、俺はそれを拾い上げて読んでみた。
……二代目アナザレベルからの手紙だった。
≪ 突然のことでビックリしたことでしょう。残念ながら貴方は私の期待に添えられず、それどころか脅威となったのでこの方法をとらせていただきました。
……あなたが今、そこにいる世界。あなたを封じ込めるためだけに時間をかけて作った新しい世界です。そうですね、名前は"アナザーアナズム"とでもしておきましょうか。
本当は貴方が私の期待通り動いてくれればこんなことにはならなかったのですがとても残念な気持ちです。ぜひ、アナザーアナズムでの人生に絶望し、精神を崩壊させて頂けると嬉しいです。
ここからはこの世界についての説明です。まず、この世界は貴方以外に人間が居らず、そしてアナズムではSSSランクに該当する魔物しか生息していません。
また、【ステータスを見たい】といつものようにやってみてください。どうでしょうステータスは初期状態になっていますね。SSSランクの魔物だけの世界でそのステータスのまま永遠に過ごすのです。経験値を得る手段はありませんので。
それと、最後に忠告です。
この世界で死んでも魂は死にません。今、貴方がいるその場所に永遠に肉体ごと復活を繰り返します。
死んで蘇っても記憶はそのままです。ですから安心して何度も何度も何度も何度も何度も何度も死んでください。ええ、どうぞ、好きなだけ死んでください。死んで生き返るのですから貴方の何よりも好きなゲームと同じですね?
死んで絶望してください、全てに。この世界から出る方法もありませんので。
幻転地蔵 改め、アナザレベルより。
追伸:貴方達の深い深い愛のおかげで、美花さんまでその世界にやってきてしまいました。お互いに永遠に離れなくなるとかいう指輪で巻き込んだんですよ、有夢君は。
SSSランクしかいないその地獄に自分の愛する人を、巻き込んだんだ! どう、どんな気分だ? お前のせいで美花さんも死ぬんだ。何度も何度も、初期ステータスのままSSSランクの魔物に嬲り殺しにされる! 目の前で! 飛んだ笑い話ですねぇ! 笑えるぜまったくよぉ! 二人共死ぬに死ねないままこの世界から出られず永遠を繰り返すがいい! 私は二人一緒に絶望した姿を見られる時を楽しみにしております。あ、二人とも肉体の年齢などはそのままなので、できるもんならいつも通り致し事を楽しんでいただいても結構ですよ。できるもんならな。 ≫
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