第1089話 ステータス

「……俺が、美花を巻き込んだ……?」



 どうしよう、良かれと思ってした愛の印がこんなことになってしまうなんて。お互いに永遠に離れられなくなるアイテムなんて作らなきゃ美花を巻き込むには至らなかったんだろう。

 いや、そもそもあのアイテムはこういう自体に陥った時、陥った側が無事な側の側に復活できるよう作ったものなんだ。まさか真逆に働いてしまうとは……。



「美花、ごめん、ごめんなさい……」

「謝らなくていいよ! 有夢が悪いことなんて一つもないでしょ?」

「で、でも……」

「それに有夢がいる世界こそが私にとっての万全の世界だから。もし離れ離れになったら私、またおかしくなっちゃうところだった」

「あ、ああ、アレね」

「そういうわけだから、二人で頑張ってこ? この世界じゃ離れ離れで死んでもまた二人でここに戻ってくるらしいもんね。むしろ好都合だよ」

「それならいいんだけど……」



 確かに美花にとってはこんな世界に来てしまうより、俺と離れた方が地獄なのかもしれない。今までずっとそう言ってくれてたし。そういうことなら心を入れ替えていこう、

 しかしまあ、SSSランクしかいない世界かぁ。よくこんなの作ったよね。それでステータスは初期状態に戻ってる、と。

 いや、ステータスだけじゃなくて見た目も元どおりなんだけどね。もしかしたらだけど、『有夢』と『アリム』の肉体って本来別物で、このステータスは『アリム』でなく『有夢』のものなのかも……なんてそんなことどうでもいいか。今考えるべきことじゃない。



「はぁ、それにしても制服は着ててよかった。裸だったら大変だったもの」

「そうだね、ここだいぶ肌寒いもんね」

「それだけじゃなくて、私も有夢も我慢できなくなるでしょ? 色々と」

「美花は変わらないねー」

「有夢だってこんな状況なのにもう冷静に分析始めてるくせに」

「まあね。とりあえずステータスみてみよっか」

「そうね」



 俺と美花はこの世界でのステータスを開いた。

 


--------------------------------------------


-ステータス-


name:成上 有夢


EXP:0


HP :10/10 MP :10/10


A:5

C:5

D:5

W:5

S:5


STP:10


-スキル-


SK1)


[E(X):火術]Lv - [E(X):水術]Lv -

[E(X):風術]Lv - [E(X):土術]Lv -

[E(X):念術]Lv - [E(X):癒術]Lv -

[E(X):強化術]Lv - [E(X):弱化術]Lv -


SK2)


[剣技★]Lv - [体技★]Lv -

[槍技★]Lv - [弓技★]Lv -


SKP:10


称号: -

印: -

--------------------------------------------



 うっわぁ、なんだかすっごく懐かしく感じる。本当に初期ステータスに戻ってるや。……ゲームを一周クリアし終わって、もう一周するときのあの感覚に似てるなぁ。ワクワクしてき……ちゃダメなんだ。SSSランクしかいないってことは無理ゲーってことだからね。

 美花も全く同じ感じだったようだ。違いは名前の欄が『曲木 美花』になっていただけ。



「どうするの? SSSランクしかいないんでしょ?」

「それどころか人も俺たち以外居ないみたいだし、延々とサバイバル生活続けなきゃならないよ」

「有夢と二人でサバイバルかぁ」

「この環境も久しぶりだよ」



 アナズムに来て最初の頃はかなりの長期間サバイバルしたなぁ。俺の手先が器用で本当に良かったって痛感したよ。一度超えたことだ、サバイバル自体はまた乗り越えられるはず。

 ていうか、よく考えたらまず、あんな森のど真ん中に俺を送ること自体おかしいよね。アナザレベルって。その頃から疑うべきだったのかも。



「そっか、有夢、アナズムに来て最初はずっと森の中で一人で過ごしてたんだもんね。頼りにしてる!」

「うん、頼りにしてね!」

「えへへー、普通なら不安になるところだけど有夢と一緒ならなんでもやれる気がする!」



 とは言ったものの、食料はまず手に入らないとみて間違いない。少なくともタンパク質は取れなさそうかな。虫くらいしか。水と火は魔法でどうとでもなるとして。

 


「……そうだ有夢、まず目標を決めて少しずつこなしていかない?」

「いいね、じゃあまず最終目標は……」

「この世界から出られないなら、せめて永遠に暮らしたくなるくらい生活を豊かにしよ」

「そうだね。それなら目先の目標は?」

「拠点となる場所を探す?」

「復活地点ここだって言ってたよね。ここが拠点でいいんじゃないかな?」

「それもそうね」



 ここで生き返る以上、むしろここから出る必要もない。生活を豊かにするのはここを中心にするのがいいだろうね。

 とは言ったものの、ここにはない素材を探しに行ったりしなきゃいけないこともでるでしょう。それこそ死地に飛び込まなきゃいけないんだ。そのための準備から始めるのがいいだろう。



「とりあえずステータスの管理をしちゃおうよ。この割り振りで今後が決まるって言っても過言じゃないから、ゆっくり考えよう」

「わかった。じゃあ私、火術と水術にとりあえず割り振っちゃうね。有夢は何があるかわかんないし、今の所温存してて。スキルの扱い、私より有夢の方が上手だからね」

「そっか、ならそうしよう!」



 こうやって二人で協力して少しずつやっていくんだ。……二代目アナザレベルは俺に絶望してほしいみたいだけど。なんだかそうなる気が全くしないんだ。むしろ……。

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