第1086話 二代目の経緯
【本性出したな】
さっきまで敬語だったのに、急に子供みたいに喚き始めた。確かにそうこれはスルトルの言った通りだ。こんなやつに何百年も世界を管理させてたのか? アナズムって不安定だったんだな。
【そもそも、世界の管理自体はそんなに労力がかからない。前任が全て整えていたからな】
【つまりオレ様達からしてみりゃ、二代目アナザレベルってのは名ばかりの迷惑やろってことサ!】
【わ、わふ……そうだったんだ】
【アナズムの神を信仰していた者からしたらショックかも知れんが、これが真実だ】
リルは驚いた顔をしている。めっちゃくちゃショックを受けているっていうわけではなさそうだが、一応信仰心はあったからな。地球に来ても改宗しなかったし。
【うるさいって言ってるだろ!】
【……知らんな、自業自得だ。初代レベルメーカーにして初代勇者よ】
【あ、あの、半分置いてけぼりなんだけど、魔神と今のアナザレベルの間になにがあったの……?】
【サクラちゃん、単純な話だ。我々三柱が元々アナザレベルだったんだよ】
「なっ……!」
有夢に惚れたシヴァはともかく、残り二柱は人を殺しまくっている。そんな奴らが一つになったのが元のアナザレベルだったっていうのか。めちゃくちゃだな。
【……そうだな、もうまどろっこしいことはいいだろう。この世界の成り立ちから二代目がどのようにして神になったかまで、全部話してやる】
【話さないでよぅ! やめて!】
【その口調が許される男はあゆちゃんだけだぞ、二代目】
【アリム殿が男……でござるか……?】
【ややこしくなるから幻転丸は黙っていてくれ。では、話そう】
なんか知らんが、スルトルとサマイエイルが二代目アナザレベルによる発言を未知の方法で防ぎつつ、シヴァが俺たちに二代目アナザレベルがどうやって神になったかの経緯を話してくれた。
まず、初代アナザレベル、つまりシヴァ達はさっき言っていた通り元々一人の神だった。アナズムを作ったのもそいつだ。
最初、アナズムの人間はレベル上げのために魔物を不必要に狩りまくって生態系を崩し、滅びかけたという。そこで魔物と人間の生態バランスをとるには人間から『レベル上げ』という知識と欲求をごっそり奪うことで丁度良くなることに気がついた。
丁度良い状態でアナズムを再スタートしたところで、魔物に無残に殺される人間も増えた。アナザレベルは自然の摂理だと考えていたらしいのだが、その状況のせいでアナザレベルに不信感を抱く人間が現れ、神として信頼が得られなくなった。そこでダンジョンというシステムを作り、帳尻を合わせた。……リルの親父さんのような、何十回もの転生まで至ってしまうレベル上げの方法に気がついた人間は間引くようにして。
それでアナズムは一時期安定していたようだ。ここまでがアナズムの成り立ちらしい。アナザレベル自体どっから湧いてきたのだとか、どうしてアナズムを作ろうと思ったのかは教えてくれなかった。……作ってみたかった、としか。
そうこうして何千年とアナズムを運営していたある日のこと。突然、アナズムに地球から一人の人間がやってきたのだという。それこそが今の二代目アナザレベルだ。
二代目アナザレベルは元々地球で普通に学生をしていたが、交通事故に巻き込まれて亡くなってしまった。そしてその交通事故が起きた現場が……幻転地蔵の置いてある場所だった。
あの場所はどうやら、有夢が地蔵型ワープアイテムを生み出すまでアナズムと地球を唯一繋げている場所だったらしい。
あんな場所で人が死んだらこっちに来るということを知らなかったアナザレベルだが、当初はかわいそうに思い、二代目が俺たちにやったのと同様にステータスなどの仕組みを教えたり強いスキルを最初から与え、この世界でも十分生きられるようにしてやったのだという。
強い力を手に入れたその学生は、この世界でなんども転生、スキル合成を繰り返し、功績を挙げ、『真の勇者』と呼ばれるまでに至った。
その頃には主に三人の女性をはべらせており、まさにハーレム。ああ、俺が冗談で呼ばれるものとは比較にならないくらいしっかりとハーレムしていたようだ。しかもメフィラド王国、エグドラシル神樹国、ブフーラ王国の姫と結婚していた。
そして調子づいた学生は、自分が神になろうとついにアナザレベルに戦いを挑む。アナザレベルは悪魔を召喚したり、自分に有利となる空間を生み出したり、時間操作をしたりして応戦。学生はステータスマスター、レベルマスター、スキルマスター、ウェポンマスター、スペースマスターと、マスタースキルの五つのマスタースキルを活用していた。
この世界における『レベル』『スキル』『ステータス』は神にも通用する。なぜなら、これ自体が神の力の一部だから。
学生はスキルマスターの効果によって様々なスキルを生み出しながらアナザレベルと戦っていくうちに、一つのスキルと称号を作り出した。それが『レベルメーカー』だった。
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